2014 Fiscal Year Research-status Report
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24530626
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
栗岡 幹英 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (20145155)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 医療事故 / 新聞記事 / 医療過誤 / 医療ミス / 医療安全 |
Outline of Annual Research Achievements |
国立国会図書館、同関西館所蔵の新聞記事データベースを用い、「医療事故」「医療ミス」「医療過誤」「医療訴訟」および「医療安全」の各用語とそれらの組み合わせによって記事を検索し、エクセルを用いてデータベースを作成した。当初、朝日・毎日・讀賣新聞3紙を検索し、傾向がほぼ同じことを確認した上で、朝日新聞の記事検索のみを用いることとした。作成した朝日新聞医療記事データベースに基づいて各用語の出現頻度を経時的にグラフ化した。その結果、「医療事故」「医療ミス」の2語は2000年に、医療過誤は2001年に最も多く出現し、最多の数字はそれぞれ303件、280件、191件であった。また、後2者はこの最多値以降急速に減少したが、医療事故については、2009年まで増減があり、それ以降に同様に急速に減少していた。 記事が増え始める1991年から1999年まで、1994年を例外として、医療過誤記事が最も多く登場するが、2009年に同じく例外的に医療ミス記事が医療過誤記事を上回ったことを除けば、2000年以降は医療事故、医療ミス、医療過誤の順番に記事件数が多くなっている。これに比べ、医療安全の語は、1991年に例外的に1件記録されているが、その次の出現は1998年であり、1999年にはまた0件となったが、2000年から増減を繰り返しつつ2008年まで漸増している。その後も多少の増減はあるものの、コンスタントに記事が書かれている。以上の結果から見て、医療者側の過失を疑う「ミス」「過誤」はもちろん、中立的な「事故」記事も2010年以降は少なくなっている。ただし、2013年から4年にかけては若干増えているようにみえるが、おそらく誤差の範囲であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学外の大学間共同事業の責任者となり、1週間程度の遠隔地への出張が毎月1度の頻度であったほか、2泊3日程度の業務も数回あり、予定していたほどこの研究課題に時間を割くことができなかった。そのことは、とりわけ記事の内容分析にあまり手が付かず、また新聞記事以外の社会状況把握の手段を開発できなかったという影響をもたらした。このため、当初の計画よりも成果発表が遅れている。今年度はほぼ記事データベースの作成で終わり、踏み込んだ分析と成果発表は次年度に持ち越すことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
記事件数のみならず、記事内容について踏み込んで分析し、とりわけ医療事故(ミス・過誤)の報道が激増した2000年と出産事故(ミス・過誤)が問題となった2006-8年の医療の状況を別の情報源と重ねて見ることで、日本社会の医療問題に関する姿勢の変化を考察できるものと考える。 作成した記事データベースに基づき、個別記事の内容分析に取り組むほか、とくにインターネット上の議論を再現するための方法の開発に取組み、当初の研究目的を達成したい。
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Causes of Carryover |
前述したように研究計画に遅れが生じたため、分析の一部とそれに基づく成果発表が年度内にできなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度中に論文を2本および報告書を1冊作成する。残額は主としてこの報告書の刊行に用いる。
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