2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24530626
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
栗岡 幹英 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (20145155)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 医療事故 / 新聞記事 / 記事データベース / 医療ミス / 医療過誤 / 統制側の逸脱 / カテゴリー執行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は延長期間であり、データの補充収集を行って、論文を2本執筆した。いずれも、新聞記事データベースで「医療事故」「医療ミス」「医療過誤」の出現頻度を検索し、記事内容の分析を加味しつつ、新聞が示す医療事故への関心の変遷を明らかにすることをめざした。次の2本である。 医療事故に関する新聞記事データベースの分析 『奈良女子大学文学部研究教育年報』Vol.23 2016 「医療事故」カテゴリーの言説分析:新聞記事DBを利用して 『奈良女子大学社会学論集』Vol.23 2015 『社会学論集』掲載の論文では、「交通事故」と「医療事故」の記事件数や内容を比較しながら、同じ「事故」カテゴリーが適用されていても、カテゴリー執行の様態が全く異なることを指摘した。すなわち、前者は逸脱の加害者・被害者とは直接関わらない第三者たる警察がカテゴリーを執行するのに対し、医療事故ではしばしば一方の側である医療者(仮に直接の当事者でなくても)が認定する。この不均等が、新聞記事で「ミス」あるいは「過誤」カテゴリーの使用が継続されている理由の一つだと考えられる。 他方、『文学部研究教育年報』掲載論文では、医療者側からの強い反発にもかかわらず、医療者の責任を示唆する「医療ミス」および「医療過誤」カテゴリーが一定程度使われ続けていることを指摘し、それは疾病を統制する医療者の逸脱、つまり統制側の逸脱に対して、新聞および背後の社会の関心が強いことから説明できると示唆した。医療者による先行研究では、新聞が医療者の責任を想起させる「ミス」や「過誤」カテゴリーの使用に慎重になったと評価されている。しかし、実は「手術ミス」や「診断ミス」、「医療過誤」と結びつく「起訴」などの用語で検索すると、多くの記事が索出される。すなわち、診断治療で生ずる有害事象、つまり統制側の逸脱に対する関心は必ずしも減退していないと見るべきである。
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Research Products
(2 results)