2012 Fiscal Year Research-status Report
メディアの表現構成における社会的規範を通じた理解の実践に関する研究
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24530667
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
是永 論 立教大学, 社会学部, 教授 (50275468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 信一郎 清泉女子大学, 文学部, 非常勤講師 (00638570)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メディア表現 |
Research Abstract |
エスノメソドロジーおよび会話分析研究の既存研究から得られた知見をレビューしながら、従来どのような社会的場面についてどのような規範が明らかにされてきたのかについて、体系的な把握および整理を行った。その整理を元に、マンガや映画などにおけるいくつかのメディア表現について、社会的規範が遂行される場面にしたがいながら、その場面において「逸脱」としての理解や属性による区別についての理解が、どのような形で実践されるのかについて、データとして収集し、基本的な分析を行った。 以上の基盤的な研究をもとに、分析可能なコンテンツの対象を選定するとともに、新たな対象となるメディア表現の可能性を探るべく、短歌を制作する人々を対象に、専門的な知識の提供を含めて、表現制作者に対する聞き取り調査を行った。その際に、歌会という制作者どうしによる批評と推敲が行われる現場を観察しながら、表現の創作が実際に行われる過程を通じて、その際に参照される規範がどのようなものであるかをデータとして収集する可能性について検討した。 以上の研究状況から、単に商業的に大量流通・消費されているコンテンツだけでなく、ボランタリーな形で制作されている表現を分析対象とすることの可能性が示されるととともに、制作された結果としての作品内容に現れた社会規範を分析するだけではなく、制作される過程において、制作者による言語の使用や、それに対する評価といったものを、他の非言語的な情報を含む相互的なやりとりを通じて明らかにするようなエスノグラフィーを中心とする研究の方向性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度においては、既存の研究概念の検討を行い、人々が表現活動を実際に遂行する中で用いられている言語および非言語的リソースへ注目することの意義を確かめることができた。これに対して、実際にどのような表現分野を分析対象とし、その制作過程に対してどのようにアプローチするのかについては、相当の検討機会と時間を要することになった。 これに対して、短歌という表現分野と、制作者による歌会というフィールドを新たに検討対象とすることで、分析対象と制作過程へのアプローチが確実なものとなり、それと同時に制作過程についてより、多様な視点から分析を行う可能性が導かれることになった。 以上の観点から、当初の計画に対して、それ以上の進展と言えることはなく、また予算としてもフィールドの選定が遅れたことから、計画どおりの執行とならないところがあったが、研究内容としては到達すべき諸点に達していると考え、順調に進展しているものと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの検討をもとに、メディア表現の選定および、それらに関連した社会的規範の分析枠組みの確定をおこなう。また、短歌制作のほか、マンガおよび写真といった表現制作過程に対象を定めたフィールドワークを行い、現場データの記録・収集を実施する。その一方で、当該現場で制作されているメディア表現の分析作業を進め、収集したメディア表現の分析結果をもとに、制作者によるフィードバックや表現の受け手による評価などについて、それぞれ聞き取り調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、メディア表現コンテンツを収集した上で、その量的・質的な分析をもって実証的データとすることが不可欠である。そのためにコンテンツの収集と分析に当たっては,研究者以外にも,コンテンツの内容分析とデータの整理を行うことのできる研究補助者を採用することを計画し、雇用人件費を計上している。 メディア表現に関する情報収集と、表現制作現場の観察フィールドの提供に際しては、表現活動にたずさわっている専門家から、専門的知識および分析用のコンテンツの提供を受ける必要があり、その謝金が必要となる。 エスノメソドロジーの研究が海外において先進的な研究が展開しているため、海外文献資料を積極的に収集するほか、今年度開催される国際エスノメソドロジー・会話分析学会に出席し、最新の研究動向について情報を交換する計画である。
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Research Products
(4 results)