2012 Fiscal Year Research-status Report
保護観察中の性犯罪者の性的認知の特徴を踏まえた処遇方法の発展
Project/Area Number |
24530854
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
羽間 京子 千葉大学, 教育学部, 教授 (60323383)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 性犯罪 / 性的認知 / 保護観察 / 再犯防止 |
Research Abstract |
本研究の、本年度の研究結果は、以下の3点にまとめられる。 1.法務省保護観察所長の許可を受けて、同所長の保護観察下にある性犯罪者(刑事処分としての保護観察を受けている成人)が処遇過程で回答する性犯罪質問紙のデータ約260件(被害者が大人である者、子どもである者からなる)を収集した。これらのデータを、インフォームド・コンセントが得られた犯罪歴のない一般成人(以下、コントロール群)の性犯罪質問紙回答結果64件と比較したところ、欧米諸国における先行研究結果と同様、性犯罪者群は、コントロール群に比し、性的認知のゆがみが有意に認められることが明らかとなった。これらの成果の一部を、学会発表した。 2.法務省保護観察所長の許可ならびに千葉大学教育学部生命倫理審査委員会による承認受けて、同保護観察所長の保護観察下にあり、インフォームド・コンセントが得られた財産犯を対象に、性犯罪を含む犯罪一般についての質問紙調査を行い、60件のデータを収集した。現在、解析を行っている。 3.本研究の対象となる性犯罪者は、刑事施設仮釈放者(以下、仮釈放者)と保護観察付執行猶予者からなる。これまでほとんど論じられてこなかった仮釈放と保護観察付執行猶予制度の相違を、刑罰の基本原理である応報的原理と教育的原理に基づいて考察した上で、それぞれに対する保護観察処遇のあり方を明らかにし、論文化した。この研究は、保護観察処遇論を展開するための理論的基盤として位置づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(1)欧米諸国の先行研究において性犯罪の発生や反復の重要な要因とされている性的認知のゆがみが、わが国の性犯罪者においても認められるかを明らかにし、(2)その結果と事例研究を踏まえ、再犯防止のための、より実効性ある保護観察処遇論を展開することを目的としている。具体的には、保護観察所長の許可を受けて、①刑事処分としての保護観察を受けている成人の性犯罪者(以下、性犯罪者群)が、保護観察の処遇過程で回答する性犯罪質問紙回答結果の収集、②性犯罪歴を有しない犯罪者(以下、一般犯罪群)を対象とした性犯罪を含む犯罪一般についての質問紙調査を行い、これらの結果と、③我々がすでに有している犯罪歴のない一般成人(以下、コントロール群)の性犯罪質問紙回答結果を比較分析するとともに、性犯罪者群を罪種別、被害者の年齢などによってサブグループに分けての比較検討を行った上で、実務家との事例研究を行うこととしている。 当初の研究計画として、本年度は、上記①の性犯罪者群の性犯罪質問紙収集、②の一般犯罪者群の犯罪一般質問紙調査の実施、ならびにデータ整理を行う予定となっていた。当該計画はすでに終了し、平成25年度に実施予定としていた性犯罪者群とコントロール群の比較検討を行い、性犯罪者群は、コントロール群に比し、性的認知のゆがみが有意に認められることを明らかにして、研究成果の一部を学会発表した。さらに、同じく平成25年度実施予定としていた、性犯罪者群を罪種別、被害者の年齢などによってサブグループに分けての比較検討に着手している。したがって、現在までの達成度は、「当初の計画以上に進展している。」と言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、次の3点を計画している。 1.すでに着手した、性犯罪者群を罪種別、被害者の年齢などによってサブグループに分けての比較検討を推進する。その際、日本と主要な欧米諸国の性犯罪の分類や法的手続き等の相違について検討する。これらの研究を通して、欧米諸国と比較した際の、日本の性犯罪者分類や法的処遇等の特徴を明らかにし、日本ならではの性犯罪者の特性を踏まえた処遇のあり方を論考していく。 2.性犯罪者群と一般犯罪者群ならびにコントロール群の回答結果の比較分析を推進する。その際、性犯罪者群を罪種別、被害者の年齢などによってサブグループに分けた場合の一般犯罪者群との比較や、性犯罪に直接関係しない質問に対する回答状況の比較、質問項目別の比較などの精緻な分析を行い、性犯罪者と一般犯罪者との相違について検証する。 3.当初計画よりも研究が進展していることから、保護観察所長の許可を受けて、同保護観察所において把握可能な性犯罪者群の再犯に関するデータを収集し、より高度な統計解析を行うことを計画している。具体的には、すでに収集した性犯罪者のデータについて、釈放後再犯受刑に至るまでの期間を経過期間とする生存分析を行い、罪種による再犯リスクの相違について検証するとともに、Cox回帰分析によって再犯リスクに影響する要因について検証する。さらに、事件当時と処遇後の再犯リスクの評価得点の相異を、分散分析(対応あり)等によって検討する。これらを踏まえ、性犯罪者処遇のあり方を考察していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画よりも円滑にデータ収集ができたため、研究代表者・連携研究者・研究協力者の打ち合わせにかかる費用が計画よりも低く抑えられた。次年度は、当初計画の通り、研究費を、研究の深化を図るための関連図書購入や研究遂行に必要な消耗品の購入(物品費)、研究資料の整理のための謝金ならび論文化の英文校正代(人件費・謝金)として支出し、研究成果を諸学会において積極的に発表(旅費)、論文発表する予定である。加えて、IBM SPSS Advanced StatisticsならびにIBM SPSS Amosを購入し、「今後の研究の推進方策」に記したような、より高度な統計解析を行い、論考を深めることを予定している。
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Research Products
(5 results)