2012 Fiscal Year Research-status Report
高次脳機能障害アセスメントの問題点とその対策に関する研究
Project/Area Number |
24530873
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
山下 光 愛媛大学, 教育学部, 教授 (10304073)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 臨床心理学 / 神経心理学 / アセスメント / 練習効果 / 利き手 / 作話 / 詐病 |
Research Abstract |
旧ソビエトの神経心理学者Luria, A. R.は,人が指を組んだり,腕を組む際に,左右どちらを上にするのを好むかが,遺伝的な利き手傾向(潜在的利き手)や,脳の半球機能差と関係があると主張した(1947)。この仮説について,大学生352名(平均年齢18.9±2.1歳)を対象とした質問紙調査で検討した。質問紙は10種類の日常生活動作に関する左右の手の好みをたずねるエディンバラ利き手検査(Oldfield,1971)と腕組み,指組みの左右の好みを答えるための図から構成された。その結果,352名中12名が左利きと判定された。腕組みに関しては左上・右上の出現頻度に差はなかったが,指組みに関しては左上が有意に多かった。Mohrら(2006)によって導入された腕組みと指組みの組み合わせによる分析では,左上(腕)・右上(指)という組み合わせが最も出現頻度が少ないにもかかわらず,12名の左利き者中6名がこの組み合わせを示した。また,右利き傾向の強さを示すラテラリティ係数も他の3つのグループよりも有意に低く,腕組み・指組みの左右偏好が利き手と関係している可能性が示された。この問題に関しては,今後もさらに検討を続ける必要がある。この研究結果は,愛媛大学教育実践センター紀要に掲載された。また片手動作課題(握力,タッピング,Grooved Pegboard,Dot Filling Test)のパフォーマンスの左右差と,腕組み・指組みの左右偏好の関係についても検討を行った。大学生136名を対象とした実験の結果,すべての課題で腕組みで右手が上になる参加者の方が,右手の作業能力が左手よりも高い傾向が強いことが分かった。それに対し,指組みではGrooved Pegboardでのみ,左手が上の方が右手の作業能力が左手よりも高い傾向が認められた。この結果に関しては第36回日本高次脳機能障害学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
<1. 注意・遂行機能検査における練習効果の検討>この研究に関しては,大学生を対象としたデータの収集がほぼ完了した。現在はデータの解析を行っており,次年度中に論文の作成に着手する予定である。 <2. 利き手が検査成績に与える影響>このテーマに関しては,今年度5つの実験的研究を行った。その中で,研究実績の概要で紹介した潜在的利き手に関する研究については,紀要論文1,学会発表1があるが,引き続きデータの収集を継続している。また,左右弁別能力と利き手の関係についての研究では,英語論文を作成・投稿中である。その他の実験結果についてもデータの解析を進めているが,実験に使用する振動刺激装置の購入がまだできていないためにストップしている研究がある。これは購入を予定していた装置の性能に不十分な点があったためである。 <3. 病態失認と作話に関する実験的研究>このテーマに関しては,文献の収集と内容の吟味を進めている。 <4. 神経心理検査における詐病の検討>大学生を対象とした,実験的研究をスタートさせ,現在もデータの収集を続けている。 このように,各研究テーマに関する研究をスタートさせることができた。また,研究成果の発表も,1年目から複数行うことができた。予定していた装置の購入が実験に必要な性能の問題で停止しており,この点を解決する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
各テーマに関して,引き続き研究を進める。特に現在購入計画が停止している刺激装置に関しては,なるべく早く対応策を決定し研究をスタートさせる必要がある。また,研究の速やかな論文化を心掛け,研究成果の還元に努力する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度の未使用額は,主に昨年度購入予定だった刺激装置あるいはその代替品の購入に使用する。また,データ処理のためのパソコン,統計ソフトの購入に物品費(200,000円)を計上している。旅費に関しては国内学会2回分(200,000円),論文投稿にかかわる経費としてその他(200,000円)を計上している。
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Research Products
(3 results)