2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530880
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
土岐 篤史 鹿児島大学, 臨床心理学研究科, 准教授 (80567321)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / 超早期発見 / 乳児期発達徴候 / 乳幼児健診 / スクリーニング / 発達行動学的分析 |
Research Abstract |
本研究は,自閉症スペクトラム障害の1,2歳という早期発見の時期よりさらに以前の乳児期からの超早期発見において,障害特性が明確になる前段階の特異的乳児期徴候を抽出して,自閉症関連特性との関連性を調査し,スクリーニング尺度を作成する目的を有する。平成24年度は実施計画に沿って,発達的異常を示唆する乳児期徴候の調査,および,健診事後教室における行動観察による乳児期発達徴候の変移の調査を行った。総出生数167名に対して,生後4ヶ月から乳児期徴候のスクリーニングを行い,特異的乳児期徴候を有する46名を対象にして詳細な発達行動学的分析を経時的に行った。 46名を1歳時点で要療育群と経過必要群に分けて分析したところ, ①4ヶ月児健診で異常発現において有意差が認められた指標は,「対象への手出しがない」「発声が出ない」「定頸していない」「姿勢異常」であった。 ②11ヶ月児相談で異常発現が多かった指標は,「表情に乏しい」「人見知りがない」「共有ができない」「模倣をしない」「呼名に反応しない」「移動発達が遅れている」であった。 ③自閉症関連特性は7ヶ月以降という乳児期後期より明らかになるが,乳児期前期から生理的困難や視線異常,応答異常を示し,自閉症的特異行動を示す児が出生数の4.2%存在した。 本結果からは,自閉症関連特性は乳児期前期には明確ではなかったが,複数の特異的乳児徴候を同定することができ,その徴候を元にして陰性的中率を重視した早期スクリーニングが行えることが示唆された。また,11ヶ月時相談では出生数の4.2%の児が自閉症的特異行動を示し超早期療育の対象となることから,陽性的中率を重視したスクリーニングを行えることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は,自閉症スペクトラム障害の超早期発見のためのスクリーニング開発を目的としている。該当地域保健師や研究協力者との強力な連携において,当該年度の計画である,発達的異常を示唆する乳児期発達徴候の探索と,健診事後教室における行動観察による乳児期発達徴候の変移の調査は計画通り行うことができた。想定していた結果に非常に近いデータが得られている。対象とする乳児期発達徴候の絞り込みも行うことができた。 予備研究の成果は,日本小児心身医学会で研究発表を行い,学術論文を投稿中である。乳児期発達特徴に関する先行研究を実証可能な形でのデータ収集が行え,さらに,詳細な項目に関しての調査数は順調に増えている。 さらに,本調査を元にした研究結果は,ストックホルム児童精神医療部で発表を行い,先端研究者と先端臨床実践家とディスカッションを行うことができた。次年度予定していた関連発達徴候の抽出およびスクリーニング方法の作成にも予定を繰り上げて着手を行い,信頼性に関する仮検討を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
①自閉症スペクトラム障害に関連しうる発達徴候の抽出:平成24年度で調査した乳児期発達徴候を要療育群,経過フォロー群,健常群との分類して,三者間における有意差を確認する。さらに,自閉症スペクトラム障害の障害特性(視線異常や並べ遊びへの没頭などの行動学的異常)との関連性について調査を行う。研究代表者は,2歳半健診に医師として,地域保健師および研究協力者と共に全数の発達徴候確認を行いながら,早期診断方法について確定していく。 ②抽出された障害関連の発達徴候における信頼性の検討:自閉症スペクトラム障害の障害特性を有する群,有さない群と2群に分けて,各発達徴候の感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率の調査を行う。調査分析を基にして,本研究における超早期発見スクリニーング尺度の開発のための仮尺度を作成する。平成26年度の実施を経て,本尺度作成を行う予定である。 ③本研究成果を基にした学術報告と支援システムへの臨床的応用:本研究成果を基にした研究論文作成と研究発表を行い,広く有識者から意見をうかがう。また,本研究成果に基づく具体的支援方法を研究協力者と共に協議を行い,超早期発見だけでなく支援システムの整備にも寄与する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,平成24年度に引き続いて対象地域における事例的調査を進めるため,乳児期から1,2歳代の発達確認を目的とした研修映像や資料作成を行うための機材購入を行う。また,研究支援者の雇用を行い,データ収集およびデータ整理を進める。また,統計学的分析を進めるため,必要なPC関連機器を購入する。 また,次年度は,平成26年度の海外発表に向けて,翻訳資料や医療情報処理のための機材を購入する予定である。国内学会において複数発表を予定しており,本年度は経過部分をまとめた学術論文提出を予定しているので,英文校閲に支出する。積極的な研究活動の周知に向けて,ホームページ作成や資料作成などを行う。
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Research Products
(6 results)