2012 Fiscal Year Research-status Report
聴覚障害者の対人認知に関する基礎的研究ー主題統覚検査の物語分析を通して
Project/Area Number |
24530898
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
粟村 昭子 関西福祉科学大学, 社会福祉学部, 教授 (60319803)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 聴覚障害 / 主題統覚検査 / 対人認知 / 口話教育 |
Research Abstract |
聴覚障害はコミュニケーションの障害といわれる。そのためにさまざまな対人関係の問題を生じやすいとされている。このことを踏まえて、本研究では二つの問題に取り組む。第一は、聴覚障害者の対人認知様式を主題統覚検査を中心に施行し、明らかにする。第二に、現在の聴覚障害者教育において、母親による幼少期からの厳しい口話教育により母子関係が阻害され、対人能力に重大な影響が及んでいるとする指摘がある。主題統覚検査などの心理アセスメントと幼少期の口話教育の関係の分析によって聴覚障害者教育への実証的資料を提供できる。この研究によって、初めて聴覚障害者の主題統覚検査における基礎資料も作成することができると考える。 昨年度は申請した研究計画に基づき、筆者が関係してきた聴覚障害者の支援団体を通して被験者を募った。健聴者は心理アセスメントなどを受ける機会は多いが聴覚障害者はその障害特性のために、このような検査を受ける経験に乏しい。従って調査に際しては細心の注意が必要となる。今年度は早期療育として言語訓練を受けるなど恵まれた環境の中で成長した聴覚障害者の調査を行うことができた。心理アセスメントとして主題統覚検査と描画テストを、また幼少期の口話教育については半構造化面接を行った。今年度も引き続きさらに幅広い聴覚障害者のデータを収集する。同時に、比較のために大学生のデータも集めることを予定している。今年度得られた結果を日本ロールシャッハ学会などで発表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
聴覚障害者のコミュニティは狭く、また今回のような調査になれていない現状がある。無用なトラブルを避けるために、関係機関に対しては調査について丁寧な説明を行う必要があった。さらに本年度は、障害者自立支援法や児童福祉法の改正を受けて事業形態が変化する事業所があり、たとえば大阪府肢体不自由者協会や聴覚障害の早期療育を実施している社会福祉法人などはその準備の最中であり、調査者との協議時間がとりにくかったり、関係者への呼びかけを延期するよう求められたりしたことが、計画が遅延した大きな理由としてあげられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
申請した研究計画にあるように、より幅広い聴覚障害者団体に働きかけて被験者を募る。たとえば、調査者が今まで関わったことのある大阪府ろうあ会館で活動している聴覚障害者団体や京都市聴覚障害者センターなどに協力をお願いする予定である。 比較のために健聴者として大学生のTAT資料を集める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査に関するものとして、被験者への謝礼、および調査場所の部屋代、手話通訳や記録のテープ起こし・大学生の心理テスト実施協力者への必要な人件費などの諸経費があげられる。 研究に関するものとして学会活動などに関連する諸経費〈参加費、交通費、宿泊費など〉、書籍代などである。
|