2013 Fiscal Year Research-status Report
聴覚障害者の対人認知に関する基礎的研究ー主題統覚検査の物語分析を通して
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24530898
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
粟村 昭子 関西福祉科学大学, 社会福祉学部, 教授 (60319803)
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Keywords | 聴覚障害 / TAT(主題統覚検査) / S-HTP / 大学生 / コミュニケーション環境 |
Research Abstract |
本年度も引き続き聴覚障害にかかわる施設や機関への事前説明を行い、関係団体などとも慎重に連携を取りながら本格的に調査参加者を募り個別式で調査を行った。内容としては面接は幼少時のコミュニケーション環境、教育環境などを問うことを中心とし、心理検査は現在の対人関係をみる目的でTAT、S-HTPを実施した。結果として本年度は20歳代から30歳代の、重度の聴覚障害をもちながら自立して就労している被検者、19名を得ることができた。非常に多くの被検者に参加していただけたといえる。さらに聴覚障害者への調査研究などには手話通訳者との連携がカギとなるとの指摘がある(滝沢、2009)が、この点に関しても、幸いにして一貫して同じ手話通訳の方にお願いすることができた。手話通訳者と本研究の趣旨や心理テストの目的について一定の理解を得られたうえで、スムーズに実施することができている。またTATやS-HTPについては、対照群として健聴の大学生30名に個別式で実施することができた。 日本における聴覚障害者の本格的なパーソナリティ調査は、筆者の調べた範囲では非常に少なく、特にTATを使用した調査は初めてであると思われる。したがって本研究は個々の聴覚障害者の対人認知特徴だけではなく、聴覚障害者全般に多くみられる、いわゆる聴覚障害者に特徴的なTAT反応があるのかといった基礎的研究につながるものである。したがって多くの聴覚障害者の被検者を集めることに意義があるので、今年度は結果の分析を行っていない。次年度も引き続きデータを増やす予定である。これにより聴覚障害者の幼少期のコミュニケーション環境や言語教育の在り方が、大人になった時の対人認知にどのような影響を及ぼすのか、知る手がかりが得られると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
聴覚障害者は個々の生活環境に立脚する面も多く、健聴者ほど社会での交流が広いとは言いがたい側面がある。その中で一定数の対象者を確保するためには聴覚障害に関係する機関、団体に仲介を依頼し連携を図ることが本研究を円滑に進めるためには必要とし、それを前提に調査のスケジュールも検討した。 その一方で、障害者自立支援法の改正時期が本助成研究の初期の計画するところと重なったために、調査対象者の確保仲介を依頼した聴覚障害者関係機関などより、法改正に伴う事務作業等々を優先する必要から本調査研究に対する対応が遅延し、当初に比べて実際の調査研究がずれ込んだものである。
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Strategy for Future Research Activity |
聴覚障害者被検者について、引き続き参加者を募ったあと、結果の分析に入る予定である。また、分析結果については、日本教育心理学会、日本ロールシャッハ学会などでポスター発表、口頭発表をし、論文としてまとめていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本助成対象研究においては、前半により多くの調査対象者の確保を図るべく聴覚障害者関係機関、および団体とも協議・調整し、それを踏まえつつ調査予算の執行も計画していたところである。しかしながら調査対象者の個人情報保護については従前以上に慎重に対応する必要が出てきた。加えて障害者自立支援法の改正時期が本助成研究の初期の計画するところと重なったために、調査対象者の確保仲介を依頼した聴覚障害者関係機関などより、法改正に伴う事務作業等々を優先する必要から本調査研究に対する対応が遅延したため、当初に比べて実際の調査研究がずれ込んでいる。それにより一部執行が遅れた。 引き続き現在確保している調査対象者の個別調査を行い、その結果を分析する。
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