2012 Fiscal Year Research-status Report
運動学習中のパフォーマンスモニタリングに関する研究
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24530925
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
正木 宏明 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 准教授 (80277798)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 運動学習 / エラー関連陰性電位 / 運動電位 / 事象関連電位 / パフォーマンスモニタリング |
Research Abstract |
平成24年度では先ず,運動学習中のパフォーマンスモニタリング機能について,その意義と今後の展望について検討した。運動学習と運動制御の視点から従来の研究知見を概観し,運動学習研究を推進するうえで有効と考えられる認知神経科学的方法論を再考した。その結果,スキル動作の習得にはパフォーマンスモニタリング機能が強く関与しているものの,事象関連電位(event-related potential: ERP)で検証した研究はほとんどないことがわかった。これらの検証結果は,総説論文としてJournal of Physical Fitness and Sports Medicine誌に報告し,本研究を遂行するうえでの礎とした。次に実験的に検証するため,運動学習に及ぼすフィードバック頻度の効果に注目した。学習者に対して試行毎に結果の知識(knowledge of results: KR)を与える群と,50%頻度でKRを与える群を比較し,そのときの運動電位を調べた。運動電位は体性感覚野由来の陰性電位であり,反応肢と反対側で大きくなる偏側性を有し,末梢からのフィードバック情報を反映するものと考えられている。さらに文脈干渉効果に着目した実験を行い,ランダム練習とブロック練習がもたらす学習効果の差異と,運動電位を対応づけた。これらの実験結果から,運動電位は運動学習中のパフォーマンスモニタリングを反映することが示唆された。運動制御の観点では,タイミングスキルに注目した実験を行った。タイミング反応後に生じるスキル陽性電位は,タイミング動作のモニタリングを反映すると考えられてきたが,実際には提示刺激に対する認知処理を反映しているに過ぎないことが示唆された。これら研究成果の一部は関連学会でポスター発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の研究知見を概観し,論文に纏めたことで,本研究を遂行するうえでの方向性を明確にすることができた。この方針に従って有効な運動学習パラダイムを選定し,運動学習に伴う事象関連電位の変化を検討する実験を複数完遂できた。研究計画書に記載したスケジュールを前倒しに進めることができていることから,順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では研究計画書に基づき,スキル陽性電位(skilled performance potential: SPP)の機能的意義をさらに探求する。SPPがパフォーマンスモニタリングを反映する電位なのかについては疑義が抱かれる。そこでSPPパラダイムに工夫を加え,SPP振幅値が学習者の主観的なモニタリングを反映するものかについて検討する。その際,プログラミング作成や実験参加者への謝礼金が必要となる。また得られた研究知見については,連携研究者のW. Sommer博士(Humboldt University教授)を訪問し,議論を重ねながら論文に纏める。学術雑誌によっては論文掲載費等が必要となるため研究費の一部を充てうる。 運動学習の神経基盤を探るうえで,空間分解能の低い事象関連電位では限界が生じる。研究計画書に基づき,機能的MRIを適用したうえで運動学習中のパフォーマンスモニタリングを検討する準備に入る。MRI適用に最適な実験課題と動作パラメータの選定に時間を多く充てる予定である。とくに力量発揮課題を工夫し,予備実験を重ねる。 平成24年度に得た実験データについても,平成25年度中に論文に纏める努力をする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
MRI実験で必要となる力量測定器具の作成に必要な実験部材(信号送信ケーブル,圧感受センサ等)やトリガ装置など,消耗品と機械備品に研究費を充てる。また,脳波実験とMRI実験に必要な多人数の実験参加者を効率的に募るために,実験参加謝礼金が必要となる。また,脳波解析には多大な時間がかかるため,解析補助を学生から募ることとなり,それに必要な謝礼金に研究費の一部を充てる。さらに,専門知識を得るための研究出張および研究成果を報告するための学会出張費が必要となる。
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Research Products
(7 results)