2012 Fiscal Year Research-status Report
教職大学院と公立小学校の協働による「若年教員」の授業力向上過程に関する実践的研究
Project/Area Number |
24530946
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
瀬戸 健 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (30510036)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松沢 要一 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (10401788)
水落 芳明 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (40510053)
早川 裕隆 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (90590365)
久保田 善彦 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (90432103)
松井 千鶴子 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (20401789)
辻野 けんま 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (80590364)
堀 健志 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (10361601)
清水 雅之 上越教育大学, 学校教育実践研究センター, 特任准教授 (10547053)
金子 淳嗣 上越教育大学, 学校教育実践研究センター, 特任准教授 (30609186)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 授業力 / 授業力向上過程 / 教材研究 |
Research Abstract |
本研究は、「若年教員」がどのようにして自分の目指す授業を実現していくかという、授業力向上の過程を研究するものである。研究のフィールドを提供してくれている東京都及び北陸地方の合わせて3つの公立小学校では、公開授業とその振り返り、また、今後の授業に向けての指導構想や指導案の検討会など、いわゆる研修の機会が各校とも6回程度もたれた。 その中で、劇的に授業が向上した二つの事例では、これまで行っていた前時までの学習の振り返りをやめ、この時間で問題にしたい内容について授業の開始から5~6分で到達するようになった。これは、この時間中に子どもに何を考えさせたいか、何について問うかという教師の課題意識が明確であり、したがって子どもたちのつぶやきも教師が考える学習の方向に合うものだけが拾われるという傾向が見られた。また、その変化の理由を授業者に聞き取ってみると、これまで授業では取り上げる内容全てについて完璧に「説明できる」よう授業準備をしてきたのであるが、やりたいことが明確な授業では、教師は子どもたちの発言が楽しみになっており、子どもたちが発言しやすいようにしていこうという意識が働くようになってきているという。 授業中の教師の発話分析を行ってみると、これらを裏付けるように「話題提示」「同意」「語尾上昇」などの言葉が増えており、これまでのように「指示」「説明」は、かなり減少するという傾向が確認できた。 今後は、このような変化の契機になるのは何かなど、飛躍的な授業改善の前兆となる状況をとらえていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れているものとして、二つの点をしてきできる。 1点目は、中華人民共和国や大韓民国など、東アジア諸国が行っている初任者や「若年教員」を対象とする研修体制の調査ができなかったことである。昨年は、北京師範大学の教員を窓口に、中華人民共和国の調査を計画していたが、我が国との関係が悪化したことから公的機関がほとんど我が国からの調査を受け入れないという状況になり、やむなく断念することとなった。 同様に、国内においての「若年教員」に対する研修体制を、各都道府県ごとに調査する予定であったが、質問紙等の作成に手間取り、実現できなかった。今年度は、各学校での授業映像の記録を継続するとともに、「若年教員」の授業力を高めようとする取り組みについて取材を重ねていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
第1は、中華人民共和国あるいは大韓民国を訪問し、「若年教員」を対象とする研修体制やその内容について調査を行いたい。特に東アジア諸国が共通してもつよい教師の条件として「使命感」が挙げられているが、それらと「実践的指導力」や「アカデミックな教養」との関連についても聞き取りを試みたい。 第2は、東京都及び北陸地方にある研究協力校における授業の記録と、指導助言の継続である。特に、記録した映像の文字化、授業後の授業者への聞き取りは、「若年教員」の内面的変化をとらえるのに不可欠であり、その記録に重点を移していきたい。また、授業の成否を左右する子ども理解では、子どもの思考傾向をとらえるだけでなく、教師の授業中のタクトを大きく左右する教材研究が大きな比重をもつことが徐々に見えてきており、専門的な力量をもつ観察者による授業分析にも力を入れていきたい。 最後に第3として、各都道府県が取り組もうとしている「若年教員」を対象とした研修の組織化については、まず、質問紙調査を先んじて行い、その後、いくつかの代表的な取り組みを選定して、当該都道府県を訪問する形で調査をしていきたいと考えている。計画的な取り組みとしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以上述べたように、本研究の中核は調査であり、研究協力鮫への訪問、東アジア諸国への訪問、新たな取り組みを展開している都道府県教育委員会や教育センターなどへの訪問調査が欠かせない。したがって、研究費のもっとも中心的な部分は、旅費となる。 ついで、様々な実践や聞き取り調査を記録するための器財、そして、それら音声や映像を文字化する費用となる。 研究の成否は、授業者である「若年教員」の教授行動、特に授業中に使われる言葉や動作、目配りなどの変化を的確にとらえられるかどうかにかかっている。そして、その変化がどのようなメカニズムで起こってきているのかも明らかにしたい。単に記録に取るだけではなく、足繁く通い、「若年教員」や各学校の管理職等と密接な関係が維持できるよう心がけていきたい。
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