2012 Fiscal Year Research-status Report
戦後新制大学の質の維持・向上システムの再検証 -改革モデルの選択・理解・受容-
Project/Area Number |
24530949
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
日永 龍彦 山梨大学, 大学教育研究開発センター, 教授 (60253374)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 戦後大学改革 / 沖縄 / USCAR / CI&E |
Research Abstract |
今年度の資料調査活動は、沖縄県公文書館・琉球大学図書館・アメリカ合衆国連邦議会図書館・同国公文書館等において行なった。国内とりわけ沖縄における調査の成果として以下の2点をあげることができる。(1)琉球大学が米国のミシガン大学顧問団の指導の下、ランドグラント大学をモデルとして設立され、とりわけその重要な役割である社会普及事業を家政学部が担っていたことが明らかになった。研究協力者の石渡尊子は、この成果を日本家政学会家政学原論部会誌『家政学言論研究』に研究論文として投稿した。(2)琉球政府の中央教育委員会の審議資料・議事録から短期大学が初めて設置されていく経緯を把握することができた。しかし、短期大学設置基準案と短期大学設置認可申請が同日の委員会に上程されていながらこの日の議事録が県公文書館にも保存されておらず、その解明にはいたらなかった。また、中央教育委員会に対する米国軍関係者の助言・指導等の関与の状況の解明も次年度以降に持ち越しとなった。 米国調査では、1917年以降定期的に刊行されているアクレディテーション認定大学のリストの収集・分析が、戦後改革期前後の同国におけるアクレディテーションの実態解明につながった。当時は、今日的なアクレディテーション認定の主体である民間の大学・学校団体よりも州立大学や州政府が認定件数が圧倒的に多く、必ずしもアクレディテーションの専門家ではないCI&E関係者が日本側に指導・助言を行なう際、そのような現状認識が少なからず影響を与えているものと考えられた。これは、戦後改革期に導入された大学の設置認可とアクレディテーションの仕組みを「特殊日本的」と見なしてきた先行研究による解釈の見直しを迫るものである。研究代表者は、この成果を大学評価学会第10回大会において口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究会の実施は研究代表者と協力者の日程調整がうまく行かず、ウェブ上でのやり取りを通じて行なうか、調査先において随時行ない、必要な情報交換や検討を行なうことができた。 交付申請書の研究目的に記した研究課題のうち、(1) 戦後の大学設置認可制度とアクレディテーションのモデルとなった事例の有無と、その事例のアメリカ国内における一般性あるいは特殊性を検証する、という点については本年度収集した資料の分析によりその概要が明らかになった。口頭発表を基に今後論文執筆につなげる予定である。(2)沖縄における大学設置認可制度の形成過程とその運用状況については、制度の形成過程のうち琉球政府側の資料調査は進んだが米国民政府側の資料調査が課題として残っている。(2)個別大学の管理運営等の基本的枠組みについては主に沖縄のものについて情報収集した。「琉球大学設置法(案)」「琉球大学大学管理法(案)」「私立学校法(案)」などの諸法案と審議過程および琉球大学理事会会議録等の収集を終えている。(3)ミシガン州立大学顧問団による琉球大学の管理運営等の基本的枠組みづくりに関する諸支援の内容については、家政学部の設立や社会普及活動の展開を通してその一部を明らかにした程度にとどまっている。沖縄と日本本土における諸施策との異同や相互の連携の有無については、その一端を示す資料を発見しているが、具体的な検討は次年度以降行うことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度においては、24年度同様、国内調査、米国調査および研究会開催を予定している。国内調査では、琉球大学および直接統治下で設置認可された沖縄県内の私立大学において資料収集を行うとともに、国内の個別大学における特定分野の学部教育基準の受容過程についても調査研究を行う。 米国調査では、琉球大学のモデルにされると同時に家政学についての学部教育基準のモデルとされたミシガン州立大学、およびCI&Eからもたらされたアクレディテーションのモデルとされたシカゴにある北中部地区大学・学校協会を対象に資料調査・収集を行う。また、本年度の沖縄の調査から、同県公文書館が収集している在米資料の概要が把握できた。かなり網羅的に収集しているが、本研究推進の上で必要な資料が必ずしも収集されていないことが明らかになった。本年度の米国調査では、そのような資料にも重点をおいて調査・収集を進めていく予定である。 さらに、沖縄の当時の状況を知る人々がご存命であることも確認できている。文書資料の収集と同時にインタビュー調査にも重点を置いていくこととしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)