2013 Fiscal Year Research-status Report
深い学習を促すパフォーマンス評価の開発―OSCE-Rを中心に―
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24530953
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松下 佳代 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 教授 (30222300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 朋子 藍野大学, 医療保健学部, 准教授 (80388701)
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Keywords | パフォーマンス評価 / OSCE-R / 深い学習 / ルーブリック / PBLテュートリアル / コンセプトマップ / 直接評価 / 学習成果 |
Research Abstract |
(1)理論研究 ①AAC&UのVALUEプロジェクトを参考に、大学・部局・科目ごとの多様性をふまえながらルーブリックを大学間で共有する可能性について検討した。その結果、メタルーブリック(各大学でのルーブリック開発のリソースになるルーブリック)、コモンルーブリック(特定の大学内で共有されるルーブリック)、科目ルーブリック(個々の授業科目で用いられるルーブリックなど)の3階層の設定が効果的であることを明らかにした。②CLAやOECD-PISAなどのパフォーマンス評価型標準テストの検討により、その問題点(内容や文脈が捨象されやすいことなど)を指摘した。 (2)実践研究 ①藍野大学医療保健学部理学療法学科において「OSCE-R v2(考えるOSCE-R)」を開発・実施し、学生の学習に対するインパクトを、OSCE得点の変化、質問紙調査、インタビュー、ワークシート等のデータを用いて分析した。その結果、OSCE-Rが単にパフォーマンス(実技)を向上させるだけでなく、理学療法過程についての思考を促していることが確認された。②新潟大学歯学部において、初年次教育科目「大学学習法」のレポート評価のためのルーブリックを開発し、2012年度の分析結果をもとに改訂を行った。その結果、評価者間信頼性の向上が確認された。また同学部口腔生命福祉学科の「PBLテュートリアル」において、2種類のパフォーマンス課題とルーブリックを含む「改良版トリプルジャンプ」を開発した(小野和宏教授との共同)。③京都大学文学部の哲学系専門基礎科目において、コンセプトマップが深い学習のための評価ツールとなりうることを、ルーブリック開発を含むアクションリサーチを通じて示した。④大学教育学会の課題研究「学士課程教育における共通教育の質保証」の一環として「共通教育における学習評価の直接評価」を担当し、新潟大学の他、山口大学、名古屋商科大学等で、ルーブリック開発を支援した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、2013年度は、(a)理学療法教育分野におけるOSCE-R v2の開発・実施と、その学習へのインパクトの分析、(b)「深い学習を促すパフォーマンス評価」を支える理論の構築と、他領域への応用可能性の検討、を予定していた。 (a)に関しては、2013年度までに、第1サイクル(2009年度入学生対象、2012年度末まで)と第2サイクル(2010年度入学生対象、2013年度まで)の2サイクルによる追跡調査を行い、データ収集が終了した。学習へのインパクトが確認され、分析結果については論文・学会発表を通じて公表ずみである。 (b)に関しては、当初、他領域のフィールドとして、京都大学文学部の授業、京都大学工学部のPBLサマーキャンプ、関西地区FD連絡協議会でのライティング指導などを予定していが、京都大学文学部以外は、フィールドに変更があった。自然科学系の主なフィールドは、工学部のPBL(Project-Based Learning)から歯学部のPBL(Problem-Based Learning)になり、大学間連携のフィールドは、関西地区から、大学教育学会課題研究「学士課程教育における共通教育の質保証」に参加する全国の複数の大学に変更された。内容も文章コミュニケーションだけでなく、問題解決、市民としての社会参加などにもまたがっている。したがって、計画は変更されたものの、当初予定以上の広がりをもつものになったということができる。 理論的には、パフォーマンス評価の開発・実施について、信頼性と実行可能性の担保、大学間の共通性と多様性の調停、間接評価との統合、ルーブリックの有効性と限界、といった問題とその解決策が明らかになりつつあり、当初考えていた以上の成果が得られている。 以上から、当初の計画以上に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(a) OSCE-R v2 の開発・実施と、その学習へのインパクトの分析 引き続き、OSCE-R v2の開発・実施と学習へのインパクトの分析を行う。前述のように、OSCE-R v2ついては、2013年度までに2サイクルのデータ収集が終了したが、そのなかでOSCE-R v2のパフォーマンス課題や評価表を一部改訂したことに伴い、あらためて第3サイクル(2011年度入学生対象、2014年度まで)を設定し、データ収集を行っている。2014年度は、これらのデータの分析を行いながら、評価表の改訂を進めるとともに、リフレクションシートなどを用いたリフレクションの方法についても検討を進め、深い学習を促すパフォーマンス評価のさらなる改善を試みる。 (b) 「深い学習を促すパフォーマンス評価」を支える理論の構築と、他領域への応用可能性の検討 他領域のフィールドとして、主に以下の2つのフィールドでの研究を継続、発展させる。①新潟大学歯学部口腔生命福祉学科でのPBLテュートリアルについてのパフォーマンス評価:2013年度には2年次前・後期で実施したが、引き続き3年次対象に改良版トリプルジャンプを実施する。ここで開発したルーブリックは長期的ルーブリックなので、前年度からの学生の成長が分析できる。②大学教育学会の課題研究のサブテーマ「共通教育における学習評価の直接評価」のフィールドとして、山口大学、名古屋商科大学等で、引き続きルーブリック開発を支援する。また、「授業用学習質問紙」を開発し(大学院生・斎藤有吾との共同)、パフォーマンス評価による直接評価と質問紙による間接評価の統合の可能性について検討する。また、ルーブリックの有効性と限界についての理論的検討もあわせて行う。 なお、深い学習については、本科研での評価研究の成果も織り込みながら、松下編著による単行本『ディープ・アクティブラーニング』を2014年度中に勁草書房より刊行する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度に国際シンポジウムを開催することを、平成25年度中に企画し、そのための予算を次年度使用額として確保したため。 現在の残額総計は、2,057,055円である(平成25年度からの繰り越し:857,055円、平成26年度配分額: 1,200,000円(直接経費のみ))。 平成26年度は本科研の最終年度であり、ハーバード大学よりエリック・マズール教授を招聘し、成果発表をかねて、学習評価に関するシンポジウムを開催する。シンポジウム開催に関わる経費のうち、一部は、所属する高等教育研究開発推進センターの予算より支出する。これに対する使用計画は以下の通りである。 物品費:437,055円(書籍費、コンピュータ関連用品、その他消耗品費)/旅費:500,000円(成果発表旅費300,000円、調査・研究旅費200,000円)/人件費・謝金:1,120,000円(研究補助(5×30 人・日)150,000円、専門的知識の提供200,000円/英文校閲170,000円、海外からの招聘旅費600,000円)
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Research Products
(17 results)