2013 Fiscal Year Research-status Report
ケイパビリティ概念の教育哲学的検討とそれに基づくキャリア形成支援プログラムの開発
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24530969
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Research Institution | Tokyo Kasei University |
Principal Investigator |
走井 洋一 東京家政大学, 家政学部, 准教授 (30347843)
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Keywords | 教育哲学 / 就労支援 / キャリア形成支援 / コミュニティ / 生の哲学 / ケイパビリティ |
Research Abstract |
平成25年度は,①若者の就労支援を担う地域若者サポートステーション(以下「サポステ」)の運営主体が利用者のニーズとコミュニティのニーズを結節させて新たな就労支援の枠組みを提供しているケースへの調査,②コミュニティへの参加の在り方をどう捉えるのかという点についての理論研究,を行った。 ①について中心的に調査を行ったのは,兵庫県豊岡市に所在する「若者サポートステーション豊岡」(以下「豊岡サポステ」)である。豊岡サポステでは,就労支援を行うための訓練を行うが,その訓練内容は必ずしも一般的な企業への就労というルートを確保するというものではなく,人口減と高齢化を背景とした農業をはじめとする農山村地域の次世代の担い手不足というコミュニティの課題を踏まえて決定されたものであった。そうした訓練の修了生が,自伐林家的森業を事業として立ち上げるという形で就労支援が行われている。こうした取り組みは,利用者のニーズに応じた就労の場をコミュニティに開発していこうとするものであるため,一般的就労の準備段階ではない,中間的就労の場として位置づけられるものである。 ②については,コミュニティへの参加が必ずしもコミュニティの論理や価値に同調・適応していくことではなく,コミュニティの構成員による対話によることに着目することを研究の出発点とし,以下の暫定的な見通しを得た。まず第1に,コミュニティが関係(テーマ)コミュニティとしての側面だけでなく,地域(場所的)コミュニティとしての側面が前提とされていること,第2に,コミュニティへの参加の多様さを認めるために,彼らの声を聞く仕組みを整える必要があること,が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度まではほぼ計画通りに進行していたが,平成25年度実施予定であったサポステへのアンケートが実施できなった点が予定を遅らせている要因である。アンケートが実施できなかったのは,研究代表者が参加した厚生労働省社会福祉推進事業補助金による研究プロジェクト(社会的事業体が取組む就労支援準備事業から持続性のある中間的就労創出に向けた制度・支援に関する調査研究,受託機関:一般社団法人協同総合研究所)において同様のアンケートが企画されていたため,平成26年度に持ち越したことが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度までの研究によって,キャリア形成支援にとって重要となるのは,個々の能力への働きかけだけでなく,むしろ彼らを支えるコミュニティそのものへの関与であることが明らかになってきた。 ここから,平成26年度については,キャリア形成支援を個別的なアプローチではなく,当事者とコミュニティとの相互的な関係のなかで行うという点に焦点化して研究を進めていくこととする。まず,平成25年度に調査を行った豊岡サポステと同様に,利用者のニーズとコミュニティのニーズを結節させた就労支援の現場,中間的就労の場を中心に調査を行う。 それと並行して,昨年度実施することができなかったサポステ全体の取り組み状況を把握するためのアンケート調査を実施する。そしてそこでの結果をもとに,就労支援の理念と現実がどの程度一致/乖離しているのか,について検討を行う。 また,コミュニティについて,特にコミュニティへの参加とコミュニティの在り方の2側面についての理論的研究を行っていく。前者については,参加の際に生じるであろう,矛盾や衝突の解消,ないしは吸収の仕方についてある程度の定式化を目指すこととしたい。後者については,コミュニティを人間存在が基礎づけられている場所の問題として考察を深め,コミュニティの在り方を解明することとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画に対して若干遅れていることの理由として,サポステ全体への実態把握アンケートの未実施をあげたが,次年度使用額が生じた理由もまた,ここにある。つまり,アンケートを実施するために目論んでいた費用を次年度に繰り越したことが次年度使用額が生じた理由である。 上記のように,サポステ全体への実体把握アンケートを実施するための費用を次年度使用額として繰り越しているため,次年度使用額はこのアンケートを実施することで使用することを計画している。
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Research Products
(4 results)