2014 Fiscal Year Research-status Report
ケイパビリティ概念の教育哲学的検討とそれに基づくキャリア形成支援プログラムの開発
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24530969
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Research Institution | Tokyo Kasei University |
Principal Investigator |
走井 洋一 東京家政大学, 家政学部, 准教授 (30347843)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 教育哲学 / 就労支援 / キャリア形成支援 / コミュニティ / 生の哲学 / ケイパビリティ / 人間学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,①若者の就労支援を担う地域若者サポートステーション(以下「サポステ」)の運営主体が利用者のニーズとコミュニティのニーズを結節させて新たな就労支援の枠組みを提供しているケースへの調査(加えて,サポステを中心としていないものの,その先進的なケースと考えられる事例についての調査),②コミュニティへの参加の在り方をどう捉えるのかという点についての理論研究,を行った。 ①については,「若者サポートステーション豊岡」(兵庫県豊岡市)を昨年度に続いて継続的に調査を行うとともに,今年度は新たに「はちのへ若者サポートステーション」(青森県八戸市)を調査した。また,先進的事例として,秋田県藤里町社会福祉協議会によるひきこもり支援の調査と,生活困窮者自立支援法のモデル事業の枠組みでの就労支援をしている京丹後市と千葉市の調査も行った。どの事例においても,個別的な能力の開発ということにとどまらず,コミュニティのなかでの就労支援として行われている点を確認することができた。また,どの事例も一般的就労の準備段階ではない,中間的就労の場として位置づけられる枠組みを模索しているところに特徴を見出すことができた。 ②については,昨年度に続いて,コミュニティへの参加が必ずしもコミュニティの論理や価値に同調・適応していくことではなく,コミュニティの構成員による対話によることに着目し,対話的関係の構築に必要な枠組みについての検討を人間学の視点からおこなった。その結果として,ヒトの協同性に注目することで,新たな対話の地平が拓かれる可能性を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度に実施予定であった,地域若者サポートステーションを対象としたアンケートを平成26年度に延期したが,生活困窮者自立支援法が成立したため,その制度のもとで実施されるであろう就労支援のプログラムとの連携がどの程度行われるのかの実態調査を行うために,同法が施行される平成27年度に実施することとした。そのため,その部分での遅れが生じていることが原因である。 それ以外の調査・研究については,おおむね予定通り実施されている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度までの研究によって,平成25年度までに明らかにしてきたコミュニティそのものへの関与が必要であることがより明確になった。 最終年度にあたる平成27年度は,就労支援のためのプログラムを,個別的なアプローチにとどまらず,当事者とコミュニティとの相互的な関係のなかで行うという点から開発することを目指す。そのために,平成26年度までに継続的に調査を行ってきている豊岡サポステを中心に,利用者のニーズとコミュニティのニーズを結節させた就労支援の現場,中間的就労の場を中心に調査を行う。 それと並行して,サポステ全体の取り組み状況を把握するためのアンケート調査を実施する。その際,生活困窮者自立支援法との連携を含みつつ,就労支援の理念と現実がどの程度一致/乖離しているのか,について検討を行う。 そして,それらの研究をもとに,コミュニティへの参加とコミュニティの在り方の2側面についての理論的研究を行っていく。前者については,参加の際に生じるであろう,矛盾や衝突の解消,ないしは吸収の仕方についてある程度の定式化を目指すこととしたい。後者については,コミュニティを人間存在が基礎づけられている場所の問題として考察を深め,コミュニティの在り方を解明することとしたい。
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Causes of Carryover |
研究計画に対して「やや遅れている」ことの理由として,地域若者サポートステーションへの実態把握アンケートが未実施であることをあげたが,次年度使用額が生じた理由はこの点にある。つまり,アンケート実施にかかる費用および追加調査にかかる費用が次年度使用額として計上されているため,このような結果となっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のように,地域若者サポートステーションへの実態把握アンケートを実施するための費用と追加調査を次年度使用額として繰り越しているため,次年度使用額はこのアンケートを実施することを計画している。
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Research Products
(2 results)