2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24531045
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokiwakai Junior College |
Principal Investigator |
高橋 一夫 常磐会短期大学, その他部局等, 講師 (10584170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 真紀 常磐会短期大学, その他部局等, 教授 (70342201)
糠野 亜紀 常磐会短期大学, その他部局等, 准教授 (60342268)
新谷 公朗 常磐会短期大学, その他部局等, 教授 (30340871)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 保育・幼児教育 / 素話 / 読み聞かせ / 絵本 |
Research Abstract |
【研究の成果】平成24年度に実施した研究の最大の成果は、絵本の読み聞かせと「素話」による効果が異なることを実証的に明らかにできたことである。 【研究の背景】保育現場においては、絵本を中心とした読み聞かせが数多く実践されている。また、絵本の読み聞かせに関しては、様々な側面から数多くの研究がなされている。しかし、大人が子どもに物語る行為である「素話」については、それほど議論が多くなく、先行研究も非常に少ない。そして実際に、「素話」の重要性を指摘する保育者が多いにも関わらず、その実践は減少している。その要因としては、①「素話」は保育者が物語を覚える必要があるため負担感が強い点、②絵本を用いないため子ども達が集中できない可能性が高い点、③内容を理解するためには想像力が必要であり、生活経験が乏しい幼い子どもには不向きである点、などが推測される。 【研究の具体的な内容】そこで、研究実施計画に記載した「素話に適した題材は、どのようなテーマなのか」を検討しつつ、同時に「素話に特徴的な効果を明確にする」ことを目指した。 具体的な研究方法として、保育現場の子ども達に「素話」を実践した後に塗り絵を実施し、その塗り方の差異を抽出する方法を採用した。その結果、「素話」において子ども達が未知のものが登場した場合、自由な想像や好みから塗り絵をすることがわかった。この結果は、絵本の読み聞かせ後に実施した場合と異なっている。 【意義・重要性】多くの保育者が「素話」は重要であると認識しつつも、なぜ重要なのかという点について、明確に具体的な効果を把握できていなかった現状がある。今回の研究の成果から、「素話」の持つ具体的な効果を実証的に明らかにできたことで、保育現場での「素話」の実践を促進する根拠になるのではないかと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展しているとした理由は、研究実施計画に記載した「素話に適した題材は、どのようなテーマなのか」を検討しつつ、同時に「素話に特徴的な効果を明確にする」ことができたからである。特に、素話の実践を豊富におこなってきた実践者が指摘した『多くの保育者が「素話」は重要であると認識しつつも、なぜ重要なのかという点について、明確に具体的な効果を把握できていない』ということに焦点を当て、具体的な効果を実証できた。 保育現場や読み聞かせの実践の場において、ベテランの保育者やストーリーテラーは「素話」の素晴らしさを認識し、その実践が広がることを希望している。しかし、「具体的な効果」を尋ねられた場合に、その返答に困惑することが多々あるという指摘がある。つまり、「素話」を若手保育者などに勧める場合、「素話は素晴らしいから」という曖昧な理由だけでは「素話」を実践する負担感を超越する動機とはなり得ない。 しかし、平成24年度の研究から、このジレンマを解決することができる成果が得られたため、おおむね順調に進展していると自己評価をおこなった。ただし、「素話に適した題材は、どのようなテーマなのか」という点に関しては、今後も調査を継続しておこない、より詳細な分析をする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、平成24年度に実施した研究を継続しつつ、平成25年度の研究実施計画に基づいた研究を実施する。本年度は特に「素話」の読み聞かせ方の違いに注目し、その効果を比較検討する。 具体的な研究調査としては、①保育者の「素話」の語り方の違いによる子どもたちの反応を参与観察する。②「素話」を聞く間、および「素話」後の子どもたちの発話を収集し、テキスト分析をおこなう。③「素話」後の子どもたちの描画活動(塗り絵)から、絵の特徴を分析する。④「素話」の様子をビデオ撮影し、保育者の語り方の違いに対する子どもの集中度を分析する、などである。 これらの研究調査を研究分担者および連携研究者とともに進める。具体的には研究代表者である高橋一夫が「素話」の語り方の整理と類型化、および、語り方の違いに関する保育者の意識と子どもの反応の分析を中心におこなう。また、研究分担者の平野真紀は、描画活動の指導、および語り方と子どもの絵の関連性の検討を中心におこなう。同じく、研究分担者の糠野亜紀は、語り方の違いによる子どもたちの反応の相違の分析をおこない、新谷公朗は素話のビデオ記録、および、子どもの集中度分析をおこなう。さらに連携研究者の金田重郎は、子どもの集中度分析の支援をおこなう予定である。 なお、平成24年度の研究が順調に進んでいることから、研究実施計画や推進体制の変更は予定していない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究実施計画に基づき、研究費を使用する。具体的には、保育現場の子ども達に塗り絵を利用した調査を実施するため、スケッチブック、クレパス、色鉛筆、絵の具、ペンなどといった描画用具が必要である。そのため、塗り絵用の描画用具を購入するため、消耗品費を使用する。また、調査のための交通費や、調査補助・調査データの入力作業などといった人件費も使用する予定である。 さらに、研究成果を発表するため国内学会発表と国際学会発表を予定しており、そのための旅費として研究費を使用する。
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Research Products
(3 results)