2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24531045
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Research Institution | Tokiwakai Junior College |
Principal Investigator |
高橋 一夫 常磐会短期大学, その他部局等, 講師 (10584170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 真紀 常磐会短期大学, その他部局等, 教授 (70342201)
糠野 亜紀 常磐会短期大学, その他部局等, 准教授 (60342268)
新谷 公朗 常磐会短期大学, その他部局等, 教授 (30340871)
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Keywords | 保育・幼児教育 / 素話 / 読み聞かせ / 絵本 |
Research Abstract |
【研究の成果】平成25年度に実施した研究の最大の成果は、大きく3点ある。まず、絵本の読み聞かせと「素話」の実践が子どもに与える効果が異なるにも関わらず、保育現場における「素話」の実践が減少している点を明らかにした点である。2点目は、どのように減少しているのか、減少の構造を明らかにした点である。3点目は、「素話」の実践を阻害する要因として物語の語り方に注目し、その背景には物語の覚え方の特性が関わっていることを発見した点である。 【研究の背景】「素話」に関する先行研究には、保育現場における「素話」の実践の減少を指摘しているものがある。しかし、どのように減少しているのか、その減少の構造は明確に示されていない。また、「素話」の実践を阻害する要因も詳しく検討されていない。そのため、物語の語り方に注目し、「素話」の減少について検討した。 【研究の具体的な内容】「素話」実践の減少を、「素話は乳児に適さない」という一般的に流布している言説と、研究実施計画に記載した「子どもにとって効果的な物語の語り方」という側面から検討した。その結果、乳児担当の保育者だけでなく、幼児担当の保育者においても「素話」の実践が減少していることが明らかになった。そして、絵本の読み聞かせとの比較においても非常に少ないことがわかった。また、「素話」は物語を語る難しさを保育者が感じていることが明らかになり、その背後にある物語の覚え方について見当する必要がわかった。 【意義・重要性】「素話」の実践が減少している構造を詳細に検討することで、物語を聞く子ども達の年齢や理解力への配慮による減少ではなく、「素話」を語る保育者の「素話は難しい」という思いからはじまる負担感が減少に大きく関わっていることが明らかになったことは、保育者の負担をどのように軽減するかを議論する契機になる大きな意義を持つと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展しているとした理由は、「素話」の実践が減少している状況について、研究実施計画に記載した「子どもにとって効果的な素話の読み聞かせ方を明らかにする」という側面から検討し、減少の構造を明らかにできたからである。 特に、現場で活躍する保育者の担当別・経験別を問わず、全体的に「素話」の実践が減少していることが明らかになった点と、「素話は難しい」と感じている保育者の心理的な負担感がより明確になった点は、今後の「素話」の在り方を検討する上で非常に大きな成果といえ、さらには、保育者養成校における「素話」に関わるカリキュラムの内容を検討する重要な材料になると指摘できる。 また、平成24年度から検討を続けて来た「素話に適した題材は、どのようなテーマなのか」については、研究成果の蓄積が豊富である昔話研究の知見から、創作物語よりも構造が明確である昔話が、「素話」に適している傾向があることが保育者養成校の学生に対するヒアリング調査から明らかになった点も本年度の研究成果だといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、平成24年度・25年度の研究成果を踏まえつつ、平成26年度の研究実施計画に基づいた計画を実施する。加えて、本年度の研究成果から新たに重要な視点として認識できている、物語の覚え方と語り方の関係性についても継続して研究を続けたい。 具体的な研究調査としては、①「素話」の実践に適した環境についての検討、②保育者の負担を軽減する物語の覚え方についての検討、③物語の語り方についての検討、そして、④研究の総括の大きく4点に絞る。研究の推進はこれまで通り、研究分担者および連携研究者との十分な議論を重ねた上で進める。 具体的な研究の分担としては、研究代表者である高橋一夫が全体の研究調査の設計をおこないながら、特に「素話」の覚え方と語り方に関する保育者の意識について検討する。研究分担者の平野真紀は、それぞれの研究テーマに対して、子ども達の描画活動を通して検討をおこなう。同じく研究分担者の糠野亜紀は、「素話」を語る保育者の心理的な側面から検討をおこない、「素話」の実践を阻害する要因について分析をする。また、研究分担者の新谷公朗は「素話」を語る保育者の状態を定量的に測定し可視化を図る。具体的には心拍測定器などを活用し、「素話」を実践する保育者の状態を計測する予定である。そして、連携研究者の金田重郎は、保育者の定量的測定に関する支援をおこなう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
素話を実践する保育者の負担感が、どのような要因から発生しているのかを実証的に測定するための方法論の検討を共同研究者と綿密に行ってきた。そのため、適切な調査実験の方法や測定機器の選択をより慎重に行った結果、本格的な実験の開始を年度をまたいで行うことにした。その結果、次年度使用額が生じた。 使用計画としては、調査実験に必要な交通費、測定機器の購入、子ども達の描画実験を行うための物品の購入、分析補助に関わる費用、および成果発表に関わる費用などに使用する。基本的には当初計画と相違はない。
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Research Products
(9 results)