2012 Fiscal Year Research-status Report
公立デモクラティック・スクールのカリキュラム・教育方法論に関する日米比較研究
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24531077
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
澤田 稔 上智大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00367690)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カリキュラム / 教育方法 / 民主主義 / 公共性 / アメリカ / 比較教育学 |
Research Abstract |
民主主義という理念に根ざしたカリキュラム・教育方法論の理論・実践両面にまたがる研究を目指すという本研究の主旨に基づき、研究成果の学会発表のみならず、教育現場におけるアクティヴィスト的活動にも従事した。より具体的には、以下のような活動を展開した。 1)学会発表:アメリカ合衆国において、とりわけ(不)平等問題に照準して現状に対する批判的な分析を重ねて来た批判的教育研究、あるいは批判的ペダゴジーと呼ばれる業績群で頻繁に目にするようになった「社会的公正 social justice のための教育」が持つ論理の解明と、その実践事例の紹介を行い、この論理と実践事例が、今後の教育研究に持つ意義に関して考察した。 2)アクション・リサーチ:都内のある公立小学校で、現場の教員と協力しながら、教科の自立型学習のためのカリキュラム・教育方法の開発に従事し、その実践研究の成果を公開した。一般に米国でもエリート向けと考えられることが多い、子どもの自立性・主体性を活かした授業づくりを進めながら、その過程で、教員と子どもがどのような変化を遂げるかを記録した。同時に、こうした学校で実践を展開した現場教員による学会発表を指導・支援した。 3)国内・海外学校調査:日本国内で従来から子どもの主体性を最大限に活かした授業を展開してきた学校の訪問調査、さらに、アメリカ合衆国で、NCLB以降進歩的教育実践の継続が困難になる中で、なお力強くそうした実践を続けている公立学校を訪問調査した。 4)翻訳出版の準備:アメリカ合衆国における公立デモクラティック・スクールの現状を知る上で最も有用な文献の翻訳作業を、前年度までの科研研究で開始したが、これを継続し、出版直前のところまで進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デモクラティック・スクールとは何を意味するのか、という問に対する可能な解答の明確化にはもう少し時間がかかると考えていたが、差し当たり、フレイザー(N. Fraiser)の「再配分・承認」理論を、ブルデュー(P. Bourdieu)の文化資本論と節合することで、この目標を、ある程度達成することができ、学会で発表することができたこと、及び、たんに文献研究に留まらず、教育現場で、その理念を維持しながら具体的な実践の展開に携わるとともに、その成果を公開することができたこと、他方で、これらをよりまとまった論文としてはまだ公刊できていないこと、これが上記評価の理由である。 くわえて、この研究の重要な目的の一つである海外において特に注目すべき実践校について深く考察することに関しても、継続的にディープな調査が可能なフィールドを持つことができるようになったことで、今後の調査研究の見通しが明るくなったことも、上記評価の理由となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、今年度、この科研研究での研究スタイルをある程度確立することができたと感じているので、それを踏襲することになる。すなわち、公立デモクラティック・スクールとは、どのような実践を展開する学校であるかちという点の明確化を、社会的公正という視点から追究する作業を継続し、さらに、日本・海外(特にアメリカ)でこうした趣旨に合致する公立学校を訪問取材すること、それとともに、日本では、これらの過程で得られた知見を最大限取り入れたカリキュラム・教育方法開発を特定の公立学校現場で推進し、またその成果を振り返って理論的に整理する作業を進める。 この過程で、社会学や政治学の知見を援用する可能性を探りつつ、各種研究会や学会への参加も可能な限り積極的に行って行きたい。また、今年度は、これらの研究の中で得られた成果を、研究者だけでなく、現場の実践家をも対象とするまとまった論考をものしたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最も主要な費目は、物品費と旅費である。動画・音声資料を多く蓄積するようになったため、こうした資料の整理・編集に必要な機器を買い替えたり、買い足したりする必要が必要となること、また、これに伴う消耗品、さらに、文献研究のための書籍費等物品費に相当額を費やすことになる。また、上記のように、国内海外の学校を多く訪問することになるので、そのための旅費が今年度並に必要となる。
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Research Products
(3 results)