2013 Fiscal Year Research-status Report
公立デモクラティック・スクールのカリキュラム・教育方法論に関する日米比較研究
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24531077
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
澤田 稔 上智大学, 総合人間科学部, 准教授 (00367690)
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Keywords | カリキュラム / 教育方法 / 民主主義 / 公共性 / アメリカ / 比較教育学 |
Research Abstract |
民主主義という理念に根ざしたカリキュラム・教育方法論の理論・実践両面にまたがる研究を目指すという本研究の主旨に基づき、研究成果の学会発表とともに、教育現場におけるアクション・リサーチにも従事した。より具体的には、以下のような活動を展開した。 1)学会発表:アメリカ合衆国における批判的教育研究、及び、アメリカにおける民主主義教育の実践事例に関する報告を行った。 2)アクション・リサーチ:昨年度に引き続き、都内のある公立小学校で、現場の教員と協力しながら、教科の自立型学習のためのカリキュラム・教育方法の開発に従事し、その実践研究の成果を公開した。一般に米国でもエリート向けと考えられることが多い、子どもの自立性・主体性を活かした授業づくりを進めながら、その過程で、教員と子どもがどのような変化を遂げるかを記録した。同時に、こうした学校で実践を展開した現場教員による学会発表を指導・支援した。 3)国内・海外学校調査・海外学会参加:日本国内で従来から子どもの主体性を最大限に活かした授業を展開してきた学校の訪問調査、さらに、アメリカ合衆国で進歩主義的な教育実践を続けている公立学校を訪問調査した。また、アメリカ合衆国における進歩主義的な教育実践の支援団体が開催する学会大会に参加し、この方面でにおける同国の最前線事情に関する情報を収集した。 4)翻訳出版:アメリカ合衆国における公立デモクラティック・スクールの現状を知る上で最も有用な文献の翻訳作業を終え、詳細な訳注と訳者解説を付して出版した。 5)その他の研究:「第2の近代」あるいは「再帰的近代」の公教育における民主的な主体の育成という課題を設定し、そのための理論的な枠組に関する文献研究を進めたが、論考を発表するまでには至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発表できた最大の研究成果としては、アメリカにおける公立デモクラティック・スクールの実践記録集を翻訳し、きわめて詳細な訳注と長文の解説を付して出版することができたことがあげられる。学会誌での書評でも扱われ、同書の評判は上々といってよい。 実践研究に関しては、日本における学校現場では実践開発を継続的に推進し、アメリカ合衆国では、民主主義的な教育実践という点で、最も充実した取組を展開している公立学校に2010年からの年次訪問を継続できたことで、公立デモクラティック・スクールのカリキュラム・教育方法論に関する日米での知見をさらに深めることができた。 理論研究に関しては、昨年度から、デモクラティック・スクールとは何を意味するのか、という問に対する可能な解答として、フレイザー(N. Fraiser)の「再配分・承認」理論を、ブルデュー(P. Bourdieu)の文化資本論と節合することで考案した理論モデルの有効性を確認できつつあるように追われる。他方で、民主的な主体の育成に資する進歩主義的な教育実践を展開するための規範理論に関する研究を、熟議民主主義、ラディカル・デモクラシー論を中心に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1 上述した理論研究と実践研究を接合した成果を、学術論文、及び一般教員向け論考として発表・公刊して、この科研研究の節目とすること。 2 日本の公立学校におけるアクション・リサーチを継続し、現場の実践家による研究成果の発表等を支援して、こうした研究のネットワーク形成を図ること。 3 アメリカ合衆国においてここ数年継続して訪問調査に入っている学校で、引き続き調査を実施し、そのデータの活用を図り、これらに関する分析を学会で発表すること。 4 これまでの個人研究の成果を踏まえて、さらに規模を拡大し、今後の日本における教育改革の方向性を見定める上で有効な知見を提供できるような共同研究計画案を作成すること。 などを念頭において、研究を推進する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度に実施した海外出張(アメリカ合衆国学校調査及び学会発表)において手に入れた新たな情報により、2014年度の海外出張や期間が増加する見込みとなり、その旅費の一部確保のため、また、2013年度に実施した海外出張(アメリカ合衆国学校調査及び学会発表)において得た調査データの翌年度分析にアルバイト雇用が必要であると判断し、備品や図書費に費やす予定でいた予算を次年度に繰り越すことに決めたものである。 アメリカ合衆国への学校調査訪問旅費やアルバイト謝金の補填に用いる予定である。
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Research Products
(5 results)