2012 Fiscal Year Research-status Report
パネルデータ・回顧データに基づく教育効果・発達過程の計量分析
Project/Area Number |
24531078
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中澤 渉 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (00403311)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | トランジション / パネル調査 / 傾向スコア / 因果効果 / JLPS / SSM / 台湾 / 教育と労働市場 |
Research Abstract |
東京大学社会科学研究所で実施しているパネル調査(JLPS)の職歴データを用いて,職業から労働市場への移行に関する分析を行い,予定通り夏のISA RC28の会合(ヴァージニア大学)に参加して報告を行った。その際,学校経由の就職がその後の職場への定着に寄与するか,という学校経由の就職の因果効果を正確に確かめるため,傾向スコアを用いた調整を行った。その後,アメリカ社会学会にも参加し,教育社会学や統計分析に関する最新の方法に関する情報収集を行った。 こうした傾向スコア分析を応用し,その有用性を主張するため,同じくJLPSのデータを用いて通塾や学校外教育のその後の進路選択に与える因果効果について検討した。それらはディスカッションペーパーにまとめられ,ブラッシュアップしたものを『教育社会学研究』に投稿し,採択されることが決まっている。近年,アメリカの社会学では,社会科学におけるCausal Inferenceの正確な推定が非常に強い関心をよんでおり,それに関する議論も盛んである。一方で日本ではそういった議論はあまりなされておらず,また推定技法も未熟であるといわざるを得ない。世界的な動向を紹介し,日本の現在の停滞した計量分析の状況を打破するために,ささやかながら貢献する成果を出せたものと考えている。 また国際比較の視点を取り入れるため,2005年SSM調査の台湾データの職歴部分の変数を加工し,それを次年度の夏の学会で発表するように準備を始めている。その分析の初発の部分については,当該年度の2月に行われたシンポジウムにて,口頭で報告を行った。台湾の方が企業間移動が多くなる傾向があるが,それは台湾で日本以上に特に中等教育段階の学科編成と,労働市場との間に密接な制度的な関連性があることが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は初年度の海外学会については,余裕があれば発表し,基本的に情報収集,ということも考えていたが,分析が順調に進んだため,予定通り発表することができ,またアメリカ社会学会でも近年のアメリカの研究動向を学ぶことができたため,非常に有意義であった。またそれらをもとにしたペーパーの執筆や次の学会発表に向けての準備も順調に進んでおり,一部はすでに投稿済み,また海外学会発表についても既に2つの学会でアブストラクトがアクセプトされている。 以上により,概ね順調に進展していると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は2回の学会報告を予定している。まず6月に開催されるWorld Congress of Comparative Education Society(ブエノスアイレス)では,教育意識や不平等意識に関するパネルデータ分析の結果を報告し,横断データだけから結論を導くことの問題点を指摘する。そして7月にはISA RC28の夏の会議(ブリズベン・クイーンズランド大学)では日本と台湾の職歴と教育歴の関係について,時系列データを用いた分析を行ったものを発表する。ここでは職歴の変化に教育が与える影響を,特に両者の教育制度の違いに注目して分析を行う。また昨年までに学会発表したものについては,ペーパーにまとめ投稿するなどといったことを考えている。 国際比較については,現段階では台湾のデータのみを加工して分析しているが,これに韓国のデータを含めることや,別の国のデータ(アメリカなど)についても検討を行いたい。ただしパネルデータや時系列データは非常に複雑で,1か国でも分析に至るまでの準備に多大な労力を要するため,比較対象国を増やす際にはその目的を定める必要がある。またパネルデータ分析についても,特に成長曲線モデルや,構造方程式モデリングを応用した分析の可能性についても検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(4 results)