2012 Fiscal Year Research-status Report
私立大学経営の効率性・有効性評価―内部及び外部環境の視点から―
Project/Area Number |
24531081
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
山崎 その 京都外国語大学, 学長事務室, 室長 (70449502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊多波 良雄 同志社大学, 経済学部, 教授 (60151453)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大学経営 / ガバナンス / 経営効率性 / DEA / Malmquist生産性指数 |
Research Abstract |
本研究の目的は、大学を教育・研究・社会サービス等を生産する主体と捉え、その活動を効率性の視点から定量的に分析し、その結果を大学の内部要因(使命・計画、組織構造・構成員・ガバナンス)と外部要因(補助金・認証評価制度)の関係から考察して、組織設計上の問題点を明らかにすることである。また、大学の戦略的経営に役立つ定量的分析ツールの開発も目的としている。 平成24年度は、大学経営の実態を把握するためのデータ収集とその分析を行った。当初計画では、効率性分析の対象となる大学の選別を目的とした第一段階のアンケート調査を行う予定であったが、費用対効果を勘案し、大学経営に関する情報収集を行うこととした。 まずアンケート調査の結果の単純集計を行い回答大学の概要を把握した。次に、複数の視点から大学経営の効率性との関係を表す仮説を立て、大学経営に関して網羅的に収集したデータを用いて仮説を検証するという作業を行った。効率性の計測については包絡分析法(DEA:Data Envelopment Analysis)、因果関係についてはAMOS(共分散構造解析)等を用いた分析を進めている。分析の結果から、設置形態・大学が目指す機能・中長期計画・大学の規模・学生支援体制・ガバナンスのタイプと効率性とは、一定の条件の下では因果関係がある可能性が高いことが明らかになった。しかし、分析結果の解釈には各要因の複雑な関係や大学の個別性を洗い出すことが必要である。定量的なデータについては、時間的変化を分析するパネルデータを収集するため、平成25年度もアンケート調査を行う予定である。 したがって、平成24度の研究成果は、アンケート調査の結果やデータベース化した公開情報を分析することによって、効率性評価のための評価指標の設定とデータ選択、効率性を規定する要因を抽出するために不可欠な予備的分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画は、①私立大学はどのような経営戦略及び組織構造による経営を行っているのか、②補助金制度及び認証評価制度が私立大学経営に与える影響はどのようなものか、という二つの視点から考察することであった。近年、情報公開が進んできてはいるものの、大学経営の実態に関する情報は未だ十分にデータベース化されていない。そこで、初年度となる平成24年度は研究に必要な情報のデータベース化に注力することとした。 データの収集は、公開されている情報のデータベース化と本研究独自の調査によるものの二つの方法を同時並行で進めた。公開されている情報については、各大学のホームページや関係諸機関のホームページから財務に関する情報、教育研究に関する基礎的な情報、科学研究費等補助金に関する情報等のうち本研究に関すると思われるものを選別し、データベース化を行った。独自調査については、アンケートによる情報収集を行った。アンケート調査では、大学の基本情報と経営戦略(使命・中長期計画)、組織構造(教員組織・事務組織)、組織過程(意思決定プロセス)補助金制度や認証評価制度への取組みに関する事項等、大学経営に関する様々な情報を網羅的に収集することができた。とくにアンケート項目については、先行研究のレビューや大学関係者へのヒアリングを行って設定した。現在は、これらのデータを用いた分析を進めている。 以上より、本研究はおおむね順調に進展していると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策は、当初計画通り、効率性評価のための評価指標の設定、分析に用いるデータの選定、効率性を規定する要因を抽出するための仮説検証を行う。なお、研究対象を当初計画では私立大学に限っていたが、設置形態の違いを明らかにすることは経営戦略をはじめとする要因分析に有為であると判断し、国公私立すべての大学を対象とする。具体的な方法としては、アンケート調査、IRや評価関係機関へのヒヤリング調査、研究会を行う。 平成25年度は、まず平成24年度の研究から得られた大学のデータを分析し、パネルデータを収集する大学を選択する。次に、対象とした大学に対してインプット・アウトプットの代理変数となる定量的なパネルデータ収集のためのアンケート調査を行う。効率性や生産性変化に関する評価手法はDEA、Malmquist生産性指数及びBSCを用いる。同時に、大学のガバナンスに関する課題をアンケート調査の結果から抽出し、その解決策の検証も行う。これらの分析から得られた成果を学会や研究会等で発表し、広く意見交換を行う。 最終年度となる平成26年度も、インプット・アウトプットの代理変数となる定量的なパネルデータ収集のためのアンケート調査を行う。データ分析から得られた研究成果は学術誌等で公表する。また、大学経営の効率性は文部科学省等が推進している高等教育政策と密接な関わりがあるため、高等教育政策の分野の研究者や関係省庁の政策担当者等の意見交換も積極的に行い、本研究の成果を取りまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、次の経費を使用する予定である。 アンケート調査については、アンケート配付及び回収、データ入力等のための人件費、委託手数料、印刷費、郵送費を使用する。ヒヤリング調査に伴う諸経費としては、旅費と本研究に関する専門知識提供者に対する謝金を使用する。 また、研究成果を発表するため、学会等への参加費や旅費、資料収集のための旅費を使用する。
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Research Products
(5 results)