2012 Fiscal Year Research-status Report
算数的・数学的活動の指導の体系化およびその評価方法の開発研究
Project/Area Number |
24531095
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
山崎 浩二 岩手大学, 教育学部, 教授 (80552611)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究の目的の一つである、小・中学校の体系的な視点から見た「算数的・数学的活動」を通した指導の効果について、岩手、東京・神奈川、北海道の3地区による授業研究をもとに分析を試みた。その結果、次の2点について知見を得た。 1 「算数的・数学的活動を通した授業」に対する授業者の考え 授業者は、算数的・数学的活動を通した授業を、「子どもたちが、何らかの数学的な表現を用いて考え、それをお互いに説明したり、伝え合えるようにしたりすることができる授業」、「子どもたちが数学的な興味・関心を持って取り組める授業」と捉える傾向にあった。授業の多くは、数学的な関係や性質を見いだし、その見いだした事柄を数学的に表現したり、数学的に考え判断したことをもとに、数学的に説明したり伝え合ったりする、といった一連の流れで構成されていた。授業者は、算数的・数学的活動を通した授業では、活動しながら考えること、活動を通して数学的な興味・関心を高めること、活動の中からやり取りを生み出していくこと、を大切にしていた。授業者は、そのような授業から、算数・数学の学習に対する子どもたちの前向きな態度を求めていこうとしている。 2 「算数的・数学的活動を通した授業」の効果と課題 算数的・数学的活動を通した授業の効果について、授業者は、学習内容とその意味についての理解が期待できると考えている。また、言葉や数、式、表、グラフなどを用いて考えたことを伝え合えること、子どもたちの主体的な活動が見られることも期待していた。小学校の教員は、算数的活動に伴う子どもの発言や気づきなどをもとに授業を展開することができたことも評価している。中学校の教員は、数学の学習に対する生徒の興味・関心が高まることが期待できる、という効果もあげている。また、このような効果は、継続的な授業実践や長期的な視座に立った授業計画をすることでも期待できそうである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究推進にあたっては、当初の研究計画に則り、3地区による地区会を各地区2回ずつ開催し、授業の計画とその評価について検討を行うとともに、3地区代表者による全体会も1度開催し、各地区の授業研究の成果を共有化を図ることができた。 また、今年度は、算数的・数学的活動を通した授業について、78人の研究協力者により3年間で小学校43事例、中学校47事例、計90事例の授業研究を実施し、分析することができた。授業研究については、小学校1年から中学校3年までのすべての学年、すべての領域で実践することができた。これは、算数的・数学的活動を通した授業が、多くの学校で、多くの学年の学習内容において、その実践が可能であることも示すことができた。 これらの研究推進の状況と得られた知見を鑑み、算数的・数学的活動を通した授業の体系化について、1年次の研究推進はおおむね順調であったと考えている。 これらの研究成果については、日本数学教育学会等の数学教育関連の学会でも公表している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進に向けて、以下の3点をあげる。 ①(算数的・数学的活動を通した授業についての課題の検証) 算数的・数学的活動を通した授業については、今年度いくつかの効果を見取ることができたが、一方で、活動そのものに時間がかかるなどにより、丁寧な指導が十分にできなかったと感じたり、説明し伝えあう活動に不十分さを感じたりする授業者もいた。また、中学校では、活動の内容を難しいと感じる生徒もいた。授業者は、算数的・数学的活動を通した授業は、子どもたちの確かな理解や数学的な興味・関心、数学的に考える力を育むと感じ、算数・数学の学習の楽しさやよさを実感してほしいと願っている。しかし、一方で、それらを一時間の授業の中で実現していくことが、必ずしも簡単なことではないことも感じていた。これらの様相については、今後、引き続き授業研究を蓄積するとともに、2年次以降も注視していく必要がある。 ②(算数的・数学的活動を通した指導の体系化への分析) 研究計画に則り、2年次では、算数的・数学的活動を通した指導の体系化に向けたより詳細な分析も試みていく。引き続き、継続的な授業研究を実施し、得られた知見をより一般化することを試みることも必要となる。 ③(算数的・数学的活動を通した授業の評価方法についての資料収集) 3年次に向けて、算数的・数学的活動を通した授業の評価方法についての基礎的な研究を推進することも計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、岩手、東京・神奈川、北海道の3地区代表者による中学校を対象とした授業研究会を実施した。しかし、小学校教員を対象とした3地区代表者による授業研究会については、会場校の事情で、実施することができなかったため繰越金が発生した。 次年度は、10月中旬に小学校教員を対象とした3地区代表者による授業研究会を実施する予定である。 研究費は、会開催のための研究協力者の旅費(2日間×1回 231千円)を予定している。
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