2013 Fiscal Year Research-status Report
算数的・数学的活動の指導の体系化およびその評価方法の開発研究
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24531095
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
山崎 浩二 岩手大学, 教育学部, 教授 (80552611)
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、3地区(岩手、東京・神奈川、北海道)の小・中学校教員を中心とした協力者76名(小学校教員34名、中学校教員32名、高等学校教員1名、指導主事6名、大学教員3名)による算数的・数学的活動を通した授業の継続的な実施を試み、授業研究の立場から算数的・数学的活動を通した授業の様相とその体系化について明らかにしていこうと試みた。その結果、以下の5点が明らかになってきた。 1.授業者は、算数的・数学的活動を通した授業を、算数・数学の授業づくりと算数・数学の学習の目的の2つの視点から捉えようとしている。2.算数的・数学的活動を通した授業では、数学的な関係や性質・方法などを見いだすこと、結果や考えを説明し伝え合うこと、などが数多く計画されている。3.授業者は、算数的・数学的活動を通した授業を通じて、学習内容とその意味についての理解を実感している。4.算数的・数学的活動を通した授業では、学習内容の取り扱いの不足、教材研究や指導の工夫の不足、などを実感する授業者が少なくない。これらは、授業者にとっての算数的・数学的活動を通した授業づくりの課題となっており、授業者自身の授業に対する満足感や達成感にも影響を与えている。5.授業者は、算数的・数学的活動を通した授業を通じて、数学的に考える力をつけていきたいと考えているが、その効果を実感するまでには至っていない。 これらの知見をもとに、以下の4点を今年度までの成果とした。 1.算数的・数学的活動を通した授業について5つの様相をもとにした授業づくりが求められること。特に、授業展開の様相、説明し伝え合う活動の様相については特徴的であること。2.長期的な授業実践のさらなる継続的な試みとその効果が求められること。3.算数的・数学的活動の質的な評価とその体系化が求められること。4.より一層の授業の評価および子どもの評価の方法の在り方が求められること。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究推進にあたっては、当初の研究計画に則り、今年度も3地区による地区会を各地区2回ずつ開催し、授業の計画とその評価について継続的に検討するとともに、3地区代表者による全体会において研究内容の共有化を図ることができた。今年度は、76名の研究協力者による、小学校21事例、中学校23事例、計44事例の授業研究が実施された。これで、授業研究の事例数は、4年間で、小学校64事例、中学校70事例、計134事例となり、算数的・数学的活動を通した授業の体系的な様相が少しずつ明らかになってきている。算数的・数学的活動を通した授業を具体化し、さらにはより質の高い授業実践の実現を目的とした授業研究会についても、各地区で1回ずつ開催した。以上のことから、授業研究を中心とした研究の推進とその共有化を図ることができたと考えている。 また、昨年度からの課題となっていた、長期にわたる授業研究についても、今年度までに計4例実施することができ、長期的な視座から算数的・数学的活動を通した授業の効果についても少しずつ明らかになってきている。さらには、算数的・数学的活動を通した授業の評価方法についても、その資料収集が始まっている。 これらの研究推進の状況と得られた知見を鑑み、算数的・数学的活動を通した授業の体系化、およびその評価方法について、2年次までの研究推進はおおむね順調であったと考えている。ただし、授業研究という質的な研究方法を採用しているがために、その授業分析については、必ずしも十分とはいえず、さらにより客観的な判断が必要であると考えている。また評価方法の開発については、まだ十分な検討がなされているとはいえない。引き続き、最終年度の課題としていきたい。 これらの研究成果については、今年度も日本数学教育学会等の数学教育関連の学会でも継続的に公表している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の研究推進に向けて、以下の3点をあげる。 1 授業づくりの共通性とその体系化について、授業展開の様相、説明し伝え合う活動の様相をさらに見取る必要がある。特に、説明し伝え合う活動は、「式や表、グラフなどの数学的な表現を用いて、子どもたち自身が見いだしたものや判断したことを他者に伝えること」、「他者の説明を理解し、自分の言葉で再構成し、表現すること」、「既習事項を短時間に他者と相互に確認するもの」、「他者と協同で解決方法をつくりあげるもの」などが見られた。また形態も、ペアによるものから、グループなどの小集団、さらには一斉によるものなど多様であった。説明し伝え合う活動が、算数的・数学的活動を通した授業において何らかの役割をもつことは間違いないが、引き続き注視していく必要がある。 2 算数的・数学的活動の質的な評価と体系化については、「多様な解決方法や多様な答えを見つけるものなど、子どもたちの多様な思考を促すもの」、「多様な反応を基に共通なきまりや性質を見いだし、統合的な見方を促すもの」、「本時の課題を解決した後、その課題をさらに発展させ、学習内容のより深い理解を促すもの」などは、より質の高い算数的・数学的活動を促すものとして、引き続き注視していく必要がある。また、「見いだす」活動には、関係を見いだす、結果を見いだす、手順や方法を見いだすなど、さらに体系的に捉え直していくことが課題である。 3 評価の様相については、授業者による授業前後、授業中の子どもたちの様子の観察、授業前後の子どもたちの学習感想やアンケート・自由記述、参観者の授業感想やアンケート・自由記述などによるものでなされてきた。加えて、授業前後の評価テストの結果によるもの、発展させた課題による活動のようすの観察、さらには問題づくりを取り入れたものなど、多様なものも見られてきている。さらに注視していく必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、25年度に計画していた米国での学会(全米数学教師協議会年会)への参加が、大学での業務と重なり、実施できなかったため。 来年度も、引き続き3地区による授業研究および授業研究会を計画し、3年間の成果を検証していく。そのために、まずは3地区ごとの協力者による会議参加のための旅費(岩手地区30千円×2回 北海道地区50千円×2回 東京地区5千円×2回 170千円)を予定している。また、今年度までに、岩手、東京の2地区で授業研究会(全体会も含む)を開催し、3地区での研究推進の状況を共有してきたが、来年度はその会を北海道地区(江別市立大麻西小学校 江別市立大麻中学校)で10月3日に実施する。3地区の代表者の会議参加のための旅費(岩手地区60千円×5名 東京地区60千円×5名 600千円)を予定している。このほか、2年次までの研究成果を発表するための学会参加の旅費(鳥取県米子市・80千円×1名 熊本大学・100千円×1名 180千円)、さらには3年間の研究成果をまとめた報告書の作成費(350頁 320千円)を予定している。
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