2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24531160
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
佐野 仁美 京都橘大学, 人間発達学部, 准教授 (10531725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小畑 郁男 福岡女学院大学, 人文学部, 非常勤講師 (20149834)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 旋律表現法 / 小学校教員養成課程 / 幼稚園教員養成課程 / 保育士養成課程 / 小学校歌唱共通教材 |
Research Abstract |
楽典や楽式論などの従来の音楽理論を援用するのみで「音楽的な表現とは何か」を十分に説明することは難しく、音楽表現については、これまで個人の音楽性の問題として考えられてきた感がある。本研究の目的は、音楽経験の浅い小学校・幼稚園教員養成課程、保育士養成課程の学生が楽譜から音楽の構造を読み取り、自らの力で深い音楽表現に到達するための教授法および教材を、現代における認知心理学の成果を背景に開発することである。 西洋音楽における旋律表現は、①アクセント、②音のまとまり、③抑揚(あるいは「緊張と弛緩の交替」)という3つの側面から見ることができる。時間を区分することは「拍子」に内在する性質であり、五線記譜法は「拍子」や「拍子的まとまり」を視覚化し、その力を借りて、音の時間的な配置関係を客観化するシステムである。それゆえに「アクセント」の存在の可能性は捉えられやすく、音価を頼りに音同士の近接性を読み取っていくことによって「音のまとまり」を把握することもできる。しかしながら、「抑揚」を楽譜から直接的に読み取ることは難しい。本研究では、「拍子」「音のまとまり」「抑揚」を重ねあわせた「拍子の型」を設定することによって、音楽の表現を視覚化することを試みた。 平成24年度は、小学校・幼稚園教員養成課程、保育士養成課程におけるピアノ指導で定番として用いられている楽曲を分析し、旋律の中心となる音や方向性、旋律のまとまり等の旋律構造を解明して、図示した。その上で、音楽表現の階層性に留意しつつ、考えられる表現法を列挙した。 以上のような分析から導かれた表現法を用いて、音楽経験の浅い小学校・幼稚園教員養成課程や保育士養成課程の学生に指導を行った。学生が自分なりの表現で演奏した場合と指導した後の演奏を比較したところ、学生の表現に明らかな変化が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従って、音楽表現に関連する図書や資料、小学校の表現教材や子どもの歌の分析および表現法、教授法に関する先行文献を収集、検討した。また、小学校の教科書に掲載されている表現教材や子どもの歌、および小学校・幼稚園教員養成課程、保育士養成課程のピアノ指導において用いられている楽曲を収集した。拍子やリズム、旋律型等によりそれらの楽曲を分類し、各々のグループの中で特徴的な曲を選び、研究対象に相応しい楽曲を絞り込んだ。その中の数多くの楽曲について分析を進めており、現在は、教員養成課程におけるピアノ指導で定番として用いられている初歩の教材とともに、小学校歌唱共通教材の分析を行っている。 また、分析済みの教材を用いて、小学校・幼稚園教員養成課程、保育士養成課程の学生に指導を試みた。教材を自分なりの表現で演奏する学生に、旋律表現の方法を理解させると同時に、実際に体験させ、学生が音楽的な表現を実現していく過程をビデオカメラで記録する作業を進めている。さらに、学生が自分なりの表現で演奏した場合と、上記の表現法を教授した後に演奏した場合のそれぞれについての録音を比較検討し、その効果を確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.前年度に引き続き、小学校・幼稚園教員養成課程、保育士養成課程でよく使用されている楽曲の分析を進める。 2.これまでに得られた旋律表現法についての研究成果を学会等で発表し、そこで得られた知見や批判等を研究にフィードバックさせる。平成25年度は日本音楽表現学会、日本音楽学会西日本支部例会、関西音楽教育研究会を予定している。 3.今回の旋律表現法の研究成果を一般の人達にも広く知らせるとともに、この旋律表現法が汎用性を持つことを確かめるために、よく知られたピアノ・ソナタを分析し、それらの楽曲の演奏と旋律表現法についてのレクチャーを交えたコンサートを開催する。 4.音楽表現分析を行った教材を集めて、小学校・幼稚園教員養成課程、保育士養成課程の学生を対象とした旋律表現曲集を出版する。 5.引き続き、音楽表現分析を行った教材を用いて小学校・幼稚園教員養成課程、保育士養成課程の学生を対象に指導を行い、その結果を吟味して一般化し、初心者の学生に分かりやすく旋律表現を伝えるための教授法を考案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.音楽表現に関連する文献を収集するために、書籍費、論文複写代、資料郵送料等の費用が必要である。 2.平成25年度は日本音楽表現学会、日本音楽学会西日本支部例会、関西音楽教育研究会において研究発表を予定しており、学会参加費、宿泊費、交通費等の経費が必要である。 3.平成25年9月に池田市のマグノリアホールにおいて、ピアノ演奏の例示を伴うレクチャーコンサートを予定している。ホール使用料、ピアノ使用料、ピアノ調律代、付属設備使用料、広報費、人件費、交通費等の経費が必要である。 4.旋律表現分析を行った教材を集めて、小学校・幼稚園教員養成課程、保育士養成課程の学生を対象とした旋律表現曲集の出版を予定している。出版社が遠方であるため、打ち合わせのための交通費等、出版に関わる費用が必要である。 5.研究代表者と研究分担者は互いに連絡を密に取り合っているが、研究をスムーズに進めるため、年4回の会議を予定している。また、小学校・幼稚園教員養成課程、保育士養成課程の学生を対象に旋律表現についての指導とその記録を協力して行い、その効果を確認している。研究代表者と研究分担者の住居が離れているため、宿泊費、交通費が必要である。
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Research Products
(3 results)