2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24531160
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
佐野 仁美 京都橘大学, 人間発達学部, 准教授 (10531725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小畑 郁男 福岡女学院大学, 人文学部, 非常勤講師 (20149834)
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Keywords | 旋律表現法 / 小学校教員養成課程 / 幼稚園教員養成課程 / 保育士養成課程 / 小学校歌唱共通教材 |
Research Abstract |
本研究の目的は、音楽経験の浅い小学校・幼稚園教員養成課程、保育士養成課程の学生が楽譜から音楽構造を読み取り、主体的に音楽表現に立ち向かうための教授法を開発することである。平成25年度は、楽曲の分析と旋律表現法の考案に主眼をおいた。 音楽表現に関する先行文献を検討した結果、西洋において言葉を源泉とする抑揚は表現の前提条件のようになっているが、日本ではあまり意識されていないこと、実際の日本の音楽教育現場では、抑揚につながる「リズムのアクセント」と「拍子のアクセント」が混同されて用いられる傾向があることが明らかになった。 次に、小学校・幼稚園教員養成課程、保育士養成課程におけるピアノ指導で定番のテキストとして用いられている『バイエル教則本』や『ブルグミュラー25番練習曲』の中から楽曲を選択して、フレージングに着目して分析を行い、表現方法を考案した。 上述のように、西洋音楽はヨーロッパの言語構造と結びついて発展してきたため、それとは異なる日本語の歌詞を持つ歌の場合、器楽の表現方法をそのまま用いて演奏すると、矛盾する点が出現する。この問題を解決するために、小学校共通教材を1.拍子的なまとまりと旋律が一致している場合、2.伝統的な音楽の場合、3.拍子的なまとまりと旋律が一致しない場合の3つに分類し、それぞれの傾向を示している曲を選び、分析して、表現方法を考案した。さらに、保育現場でよく用いられている子どもの歌についても、同様の観点より分析を行い、表現方法を考案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、先行文献を検討して、日本の音楽教育現場における旋律表現についての問題点を明らかにした。その問題意識をもとに、小学校・幼稚園教員養成課程、保育士養成課程で使用される頻度の高い教材や、小学校共通教材の分析を進め、それぞれの楽曲についての旋律表現法を考案している段階である。 研究成果は、学会発表およびレクチャーコンサートで発表した。また、そこで得られた知見や批判をもとに、検討を加え、論文を執筆した。 平成25年度末には、既に分析した楽曲を集めて、旋律表現曲集を出版した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.前年度に引き続き、小学校・幼稚園教員養成課程、保育士養成課程で用いられる頻度の高い楽曲を分析する。 2.楽曲の分析結果をもとにして、さらに広い範囲の音楽に応用できるように、旋律表現の型を一般化する。 3.短い曲だけにとどまらず、ソナチネやソナタなど、多楽章の曲についても分析を行い、楽曲全体に一貫性が感じられるような旋律表現法にまで発展させる。 4.旋律表現法についての研究成果を学会等で発表し、そこで得られた知見や批判等を研究にフィードバックさせる。 5.旋律表現法についての研究成果を一般の人々に広く知らせるとともに、この旋律表現法が汎用性を持つことを確かめるために、楽曲の演奏とレクチャーを交えたコンサートを開催する。 6.分析を行った楽曲を用いて小学校・幼稚園教員養成課程、保育士養成課程の学生を対象に指導を行い、その結果を吟味して一般化し、初心者の学生が自らの力で深い音楽表現に至るための教授法を考案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
『旋律表現のためのやさしいピアノ曲集~楽譜をどう表現するか~』を出版するにあたって、当初見込んでいた金額を使用することなく、出版することができた。具体的には、出版のための打ち合わせを電話やメールで済ますなど、簡素化したこと等が挙げられる。また、旅費については、なるべく早く予定を組むことにより、航空運賃等を安く抑えることができた。 音楽表現に関する文献を収集するために、書籍費、論文複写代、資料郵送料等が必要である。また、平成26年度は日本音楽表現学会において研究発表を予定しており、学会参加費、交通費等が必要である。さらに、平成26年9月に長崎市旧香港上海銀行長崎支店記念館において、レクチャーコンサートを予定している。ホール使用料、ピアノ使用料、ピアノ調律代、付属設備使用料、人件費、交通費、宿泊費が必要である。 研究代表者と研究分担者は互いに密に連絡を取り合っているが、研究をスムーズに進めるため、年4回の会議を行い、また研究の活性化を図るために、外部の研究者を含めて年3回の研究会を行う計画を立てている。研究代表者と研究分担者の住居が離れているため、交通費、宿泊費が必要である。
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Research Products
(5 results)