2012 Fiscal Year Research-status Report
間伐材・低質材等の木材資源を有効利用する造形用素材及び環境教育教材の開発
Project/Area Number |
24531183
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
林 耕史 群馬大学, 教育学部, 教授 (50556743)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 森林資源保全 / 木製共遊玩具 / 木材加工 / 歩留まり / 低位利用広葉樹 / 針葉樹間伐材 |
Research Abstract |
研究初年度は主に,1森林資源運用の現状と課題把握,2入手可能な木材を用いた彫刻制作・造形用素材開発 にそれぞれ取り組み,研究展開の端緒をつかんだ。 1 森林資源運用の現状と課題把握 (1)秋田県立大学木材高度加工研究所,青森県産業技術センター林業研究所,福島県林業研究センターの各所を視察し,各県産の木材資源の有効利用と森林育成の現状について取材した。各樹種の加工技術開発では,高度圧縮,集成材加工などに注目した。間伐材利用促進・森林保全と,とりわけ福島県では放射能対策も課題であるが,杉など地域の主伐材有効利用が特に求められている現状にふれた。(2)東北3県の木工所・木材販売所で,曲げわっぱ,木製玩具など工芸品加工の具体例を視察した。伝統的工芸品・秋田曲げわっぱ,コイル状のブナ材加工品,地元産杉材を用いた積木など,地域材の特性を生かした有効利用法は大いに参考になった。また木材販売業者側からは主伐材の有効利用の重要性が示唆され,造形用素材開発には,間伐材・低質材に加え,主伐材の有効利用も考慮する必要性を強く認識した。 2 入手可能な木材を用いた彫刻制作・造形用素材開発 (1)寄木技法を用いた彫刻と,丸太から全て自身で板状に製材し構成する彫刻を試作した。寄木技法では,主たる材に加え木っ端様の小材まで使うことで可能な造形を意図した。また丸太からの加工では,板状にすることで原木をほぼ全て使用し,高い歩留まりで独特の造形が可能となった。これらは,「第35回国画会彫刻部秋季展」,「第7回国展群馬」,「林耕史彫刻展」にて発表した。(2)造形用素材開発では,木っ端様小材を用いた題材,板状加工による木片積木の試作を開始した。木っ端様小材を用いた題材は,ボルトによる連結構成をするもので,中高生,一般対象のワークショップも行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,群馬県周辺の森林事情についての調査を念頭においていたが,森林運用が盛んな東北3県をまず視察できたことは意義があった。前項概要の通り,間伐材,低質材の他,主伐材の有効利用も視野に入れる必要性についての知見を得たことは大きい。木材の有効利用の考え方や地域産出材を効果的に利用している具体に触れたことで,木材の生かし方や簡易ながら多様な造形の可能性も得ることができたためである。今後は,入手および加工が容易な樹種・木材を調べ,有効利用を志向しながら彫刻制作並びに造形素材試作に向けていくことが,研究の実現に向けて必要である。また,1年次研究で彫刻の制作と発表ができたことも,次年度以降の実制作並びにシンポジウムなどの活動に向けての足がかりになりつつある。木材加工に必要な道具類も少しずつ整ってきている。 以上のような状況であることから,「おおむね順調」であると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に準じて2年次の研究に入る。即ち,群馬県及び各県の森林資源運用と保全についての視察を進めること,造形用素材開発を具体的に進めることである。 まず各県の視察については,木材の有効利用についての活動調査に併せ,森林での体験を通した環境教育の具体例も調査することとする。また,海外の森林事情や木材の有効利用・保全についての視察も可能かどうか検討する。 造形用素材開発については,入手可能な木材を用いた彫刻制作を通し,その方法について検討する。その際,研究課題名に記されている「間伐材・低質材」のとらえの中に,「主伐材の有効利用」の視点も加えていく。さらに,木材加工業者と連携しながら,個人や学校で加工が可能な簡易な技術を用いながら造形素材が作成できないか試作を通して検討していくと共に,幼保・小学校,特別支援学校などと連携し,実際の授業で使用を試みる段階にもっていきたい。 3年次には,開発した造形用素材の発表および授業での実際の使用をめざすと共に,木材の有効利用を視野に入れた彫刻制作並びにシンポジウムなどの地域に開放された形での発表,提案を実現させていく。また,研究成果を学会,HPなどで発表する方向である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1年次には適当な材木が計画通りに入手出来なかったことから,それに対応する分の研究費(約29万円)が使用できず繰越の形になったので,次年度に有効に使用する。その上で,2年次も,材木・用具の購入を行う。材木としては,間伐材,低質材に加え,有効利用の試行をするため針葉樹主伐材,低位利用広葉樹も加える。用具としては,造形素材加工に必要なものを揃えていく。また,視察のための旅費関係,木材加工補助者らへの謝金などに使用する。3年次の彫刻シンポジウム実施,研究成果発表に向けて,研究費を計画的に使用していく。
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