2012 Fiscal Year Research-status Report
人工内耳装用児の音韻意識習得タイプに対応した指導プログラムの開発に関する研究
Project/Area Number |
24531232
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
長南 浩人 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 准教授 (70364130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城間 将江 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (80285981)
濱田 豊彦 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80313279)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 音韻意識 |
Research Abstract |
本研究の目的は、人工内耳装用児の音韻意識の発達を、音のイメージを自発的に主用するタイプ、推論やメタ認知活動を自発的に主用するタイプ、この双方を用いるタイプ、主な方略を有しないタイプに分類し、それに応じた指導プログラムを開発、実践し、 効果の検討を行なうことである。指導プログラムとしては、音声聴取能力の高い者には音韻分析の対象となる音節やそれを含む語の聴取および発音・発語を主な学習活動として音のイメージを活用させるものとする。推論を主として音韻分析能力を獲得する者に対しては、学習対象となる音韻を含む既習語を利用して、音韻とかな文字の関係を帰納的に推論させ音韻分析能力を高める練習が想定された。今年度の研究目的では、音韻意識の獲得過程タイプ分類の妥当性を検討することであった。ただし、上記の習得タイプとそれに基づく指導法は、音節分解遂行時における対象者の自発的な行動によって確認されたものであり、偶発的に得られた結果である。そこで観察された習得タイプの他にも類型は存在するのかといった点の検討が必要であった。そこで、音韻分析課題における心理的要因との関連を音韻処理能力、文字知識量、課題処理方略など音韻分析技能に必要とされる知識と技能およびワーキングメモリという観点から検討したところ、上記以外の習得タイプは観察されなかったが、音声聴取主要タイプと認知能力主要タイプ、双方を使用するタイプのいずれにも選択的注意という心的資源の効果的な利用能力が共通していることが示された。これに対し、主な方略を有しないタイプは、選択的注意能力が低く、この能力が習得タイプに関連しているものと思われた。この結果から、音韻意識の指導プログラムに選択的注意能力の向上を含める必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、人工内耳装用児の音韻意識の発達を、音のイメージを自発的に主用するタイプ、推論やメタ認知活動を自発的に主用するタイプ、この双方を用いるタイプ、主な方略を有しないタイプに分類し、それに応じた指導プログラムを開発、実践し、効果の検討を行なうことである。本研究の習得タイプの分類研究により、選択的注意という習得タイプに関わる心的処理資源の存在が示され、この能力と音韻分析技能との関連は、これまでの研究においても明確には示されてこなかったたため、指導プログラムの変更が求められることとなった。指導プログラムの修正には、選択的注意能力が音韻分析過程のどの段階に、どのような働きを果たしているのかを明らかにする必要があり、このテーマは、音節抽出実験による検討で明らかにできるものと思われる。音節抽出実験の実施により、研究計画調書に記した指導開始が、やや遅れる予定である。ただし、実験的検討は、2ヶ月ほどで終了し、その後、指導プログラムの修正を行うことにより、概ね研究計画に沿った遂行が可能と考えている。選択的注意に関する指導ステップは、いずれの習得タイプにも必要と考えられることから、指導プログラムの修正は、習得タイプ別におこなう必要が無く、実験的検討の結果が得られれば、速やかに行えるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究における今後の研究推進方策は、音韻分析課題の中の音節抽出実験の遂行を可能とする被験者の確保である。音節抽出実験の対象者は、人工内耳を装用した4歳から8歳児を各年齢において15人程度必要である。このため、研究計画調書に記載したA大学附属病院(栃木県)とB大学病院(神奈川県)およびC聴覚特別支援学校(埼玉県)、D、E聴覚特別支援学校(静岡県)、F聴覚特別支援学校(神奈川県)の幼稚部年長クラスと小学部に在籍する幼児児童を対象とする。この実験の被験者は、指導プログラムの対象者になるため、指導開始前に選択的注意の能力測定を行えることは、指導の効果を検討する際のベースラインのひとつを得ることにもなり、研究結果の妥当性を検討する上で有用と思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究は概ね計画に従って進展し、次年度使用額は、当初予定した研究費用と実際使用額との誤差である。翌年度は、予定の研究計画に従って予算を使用し、次年度使用額は主に旅費に充当する。
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