2014 Fiscal Year Research-status Report
障害のある子どものきょうだいとその家族のQOL支援プログラムの開発
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24531241
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
阿部 美穂子 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (70515907)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | きょうだい支援 / ムーブメント教育 / QOL / 障害児の家族支援 / 子育て支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.きょうだいの育ちにおける支援ニーズの分析:以下の3つの研究を行い、きょうだいの育ちと親の子育て支援ニーズを整理した。一つ目に、昨年度より継続してきた全国重症心身障害(児)兄弟姉妹支援等事業報告書におけるきょうだいの作文分析を完了し、障害の重い子どものきょうだいが成長の過程で獲得する同胞感の変容の様相を明らかにした。次にT県内の18歳以上のきょうだい14名にインタビュー調査を行い、進路選択にかかる同胞の影響を分析した。3つ目に、T県内の特別支援学校に在籍する子どものきょうだいに対する335人分のアンケート調査及び12組のきょうだいとその親に対する面接調査の結果から、きょうだいが同胞に対して抱く感情と親へのサポート期待感との関連性を分析した。以上から、きょうだい支援にあたり、きょうだいの自己選択・自己決定を保障できる親子関係性つくりと、きょうだいの段階的な同胞に対する障害理解と関係構築をサポートする、継続的な支援の必要性が明らかとなった。 2.支援プログラム開発の実践と効果検討:昨年度実施した重度重複障害のある子どものきょうだいとその家族のための支援プログラムの効果測定を実施し、その分析を行った。その結果、きょうだいの同胞に関連する否定的感情については、増加・減少の両方のケースが見られ、事例分析から、きょうだいが自分や家族を客観的に見直し、自らの立場の肯定面、否定面の双方に気づくことができた結果と考えられた。また、親側が認識する親子関係が安定化したことが示された。 3.地域におけるきょうだいとその家族の支援モデル事業の構築:これまで得られた研究成果に基づき、T県の障害児親の会組織と障害のある子どもや家族の活動をサポートするNPO法人、及び大学がタイアップして行う、きょうだいとその家族のための支援活動“ジョイジョイクラブ”を組織化し、開発プログラムの継続的実践体制を整備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は大きく2つであった。すなわち①障害のある子どものきょうだいの育ちと親の子育てにかかる支援ニーズを明らかにすることと、②それに基づく家族支援プログラムを開発し、地域における家族支援モデル事業を立ち上げ、その効果を実践的に検討することである。これにより、障害のある子どもを持つ家族をエンパワメントする方法を具体的に発信し、そのQOL向上を目指す支援体制の充実に資することをねらっている。 まず、①の目的に関しては、きょうだいの作文分析、きょうだい本人と親に対する質問紙調査、面接調査のデータを分析し、知見を得ることができた。 次に、②の目的に関しては、きょうだいと同胞、親がともに参加できる支援プログラムを開発し、実際に、きょうだい支援教室を開催して、対象者を募り、開発したプログラムを実践することによりその効果を確認することができた。 さらに、①と②の成果を踏まえ、地域の障害のある子どもとその家族を支援している組織とタイアップして、きょうだい支援教室”ジョイジョイクラブ”を組織化し、開発した支援プログラムを地域において継続実践する体制をスタートさせることができた。 以上のことから、当初の目的がほぼ達成されてきているといえる。残るところは、これらの研究で得られたデータをさらに整理、分析し、知見をまとめて、開発した支援プログラムを広く国内、国外に発信するとともに、本研究で構築した地域におけるきょうだいとその家族への支援体制を充実させ、継続した支援実践を軌道に乗せることである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において残されている課題は、上記でも述べたように、研究で得られたデータをさらに分析して、知見をまとめ、開発した支援プログラムを広く国内、国外に発信することと、本研究でスタートさせた地域におけるきょうだいとその家族への支援体制の充実整備である。そこで、本来26年度までの3か年としていた研究期間を1年間延長し、これらの残された課題に取り組むものとした。 まず、第1の課題については、研究の成果をまとめて、国内の特別支援教育及び家族支援研究に関連する学会の研究誌、及び、大学紀要にて発表する(一部はすでに投稿、採択済)。さらに、国内学会でシンポジウムを開催し、研究成果を発表する。併せて、OQLに関する国際学会である、International Society for Quality-of-Life Studiesにてポスター発表を行う。 次に、第2の課題については、地域におけるきょうだいとその家族への支援教室である”ジョイジョイクラブ”について、継続的にカンファレンスを行い、各支援組織と連携をとりながら、支援プログラムの改善と体制強化を図る。 そして、平成27年度は研究の最終年となるので、これまでの研究のまとめを行い、本研究で取り組んだ地域以外の地域でのきょうだいとその家族の支援拡大につなげるため、今後、研究成果をさらに発展させるための方策を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度までに実施した、障害のある子どものきょうだいとその家族の支援体制つくりの成果を国内学会のシンポジウムで関係者とともに発表し、さらに、特に本研究のテーマと関連が深い、障害児・者とその家族のQOLを取り上げている国際学会で発表するための準備を進めてきた。しかし、実践の終了が3月となり、データの最終的なとりまとめが年度内に十分できない状況が生じた。そのため、本年度内での発表ができなかった。 さらに、地域の障害のある子どもとその家族を支援している組織とタイアップして、きょうだい支援教室”ジョイジョイクラブ”を組織化し、開発した支援プログラムを地域において継続実践する体制をスタートさせたところであるが、その体制を安定的に機能させるまでには更なる時間を要する。よって、今後、継続的にカンファレンスを行い、各支援組織と連携をとりながら、支援プログラムの改善と体制強化を図る必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、以下の用途に用いる。まず1点目として、データ入力と分析を平成27年度にかけて実施し、その後国内学会でのシンポジウム、及び国際学会での研究発表を行うための経費である。さらに2点目として、支援プログラムの改善と地域における支援体制強化のためのカンファレンスにかかる資料作成費と旅費等である。
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Research Products
(5 results)