2012 Fiscal Year Research-status Report
自閉症スペクトラムにおける前頭葉機能の本態解明と実態に即した支援の効果の研究
Project/Area Number |
24531261
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
成田 奈緒子 文教大学, 教育学部, 教授 (40306189)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 軽度発達障害 / 自閉症スペクトラム / 高次脳機能 / ワーキングメモリ |
Research Abstract |
本研究では、自閉症スペクトラム(ASD)児者の高次脳機能について、低下と捉えるのではなく、神経ネットワークの異所性変化、もしくはdefault mode networking(DMN)システムの差異がその本態であると考えた。ASD児者における外部入力刺激に応じたDMNの抑制機構が、申請者の作成した既存の実験系においてはどのように関わっているかについて検証できるタスクを新規に作成してNIRSにより解析し検証する実験系を本年度は作成した。 まず、タスクを作成した。DMNを惹起するための教示「目を閉じて自由に考え事をしてください」とベースライン惹起のための教示「あいうえおを繰り返し口に出して言ってください」を間隔を置かずに続けて行うことにより、それぞれのタスクの遂行時の前頭葉脳血流内酸素化ヘモグロビン濃度をNIRSで測定した。 健康なボランティア被験者11名(21~26歳、男性3名、女性8名:平均年齢21.6歳)とASD者5 名(13歳~25歳、すべて男性)を対象とし、タスク遂行中持続的に16チャンネルNIRS(Spectratech OEG-16)を装着してoxy-,deoxy-,total- Hb濃度を測定した。 その結果、oxy-Hb濃度の平均値において、ボランティア被験者ではDMNからベースラインに切り替わる際のoxy-Hb濃度の速やかな上昇が見られ、逆にベースラインからDMNに切り替わる際のoxy-Hb濃度の反応性の減少が見られたが、ASD者においてはこの傾向が観察されず、不規則なoxy-Hb濃度変化がタスク遂行中に認められた。今後はこの結果をさらに詳細に解析していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、これまで申請者が段階的に蓄積をした基礎的・臨床的研究成果を基にして、自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder, 以下ASDと略す)児者における前頭葉高次機能が、より効率的に発現するための刺激入力の工夫を実験的・実践的両側面から検証することを目的とする。実験的には、刺激入力のない状態で大脳皮質に起こるdefault mode networking(DMN)に着目した脳機能実験によって、ASD児者が健常群と異なる前頭葉血流変化の原因を明らかにする。また、実践的にはこれまで得られた結果を基に音や光、情動などの刺激、睡眠覚醒を含めた生活リズムなどASD児者の脳機能に影響する要因を減少できる環境整備を教育現場などで実際に一定期間実践し、前後に種々のパラメーターで検証し、最終的には成果を広く社会に提言、還元することを目的としている。今年度はDMNから基底状態への脳機能の切り替えにおいて、ASD者が健常者と比較して脳血流内酸素化ヘモグロビン濃度の速やかな切り替えが遅延することを観察した。今後、この解析やこれまでのデータを基に、実践的にASD児者への刺激入力を行うべく、準備を進めている。また、これまでの研究成果は、今年度も学術論文や著書、講演会や雑誌等メディアでも広く発信しており、研究の目的とした内容については、概ね順調に遂行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、これまでの成果から得られた理論を基に、小学校など申請者の関連フィールドにおいて、前頭葉機能を賦活する刺激を授業の中に取り入れた実践を行っていく予定である。 具体的には某小学校の特別支援学校に在籍する児童を対象に、授業の一環として手足のリズム運動を応用した空間人ととワーキングメモリを刺激するワークを取り入れ、これを約半年間にわたって行う。 その前後、及び中間期において、脳機能のパラメーターとしてTMT課題、空間認知課題を作成して児童に行い、正答率・誤答率の推移を計測することにより、効果を判定する予定である。また、昨年度行ったDMNとベースラインでの脳機能の切り替え能をデータをもとにさらに詳細に分析する予定である。さらなる高度なNIRSのデータ処理についてはこれまでにも協力を得ている日大工学部での詳細なNIRS測定やデータ解析などの必要が生じることも予測される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の通り、今年度はフィールドに赴いての被験者からのデータ採取が必要となる予定である。クラス単位でのデータ採取には、アルバイト人員の動員が必要となるため、交通費や謝金が発生する予定である。 また、様々な資料作成や機器の維持のための消耗品費、データ入力・保存のためのPCと関連機器、そしてNIRS等関連機器と関連図書などの購入が必要になる予定である。 また、昨年度のNIRSのデータをさらに詳細に分析するためのアルバイトが必要となるため、謝金が発生する予定である。 さらに、昨年に引き続き、各種学会での発表、論文執筆、雑誌等メディアを通したデータの公表も行う予定である。このために交通費・学会会費などの支出が必要となる予定である。
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Research Products
(11 results)