2012 Fiscal Year Research-status Report
発達障害児への災害時支援に関する研究-東日本大震災の被災体験調査をふまえて-
Project/Area Number |
24531275
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 |
Principal Investigator |
梅田 真理 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 教育情報部, 総括研究員 (50529138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 徹 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (80113885)
鳥居 深雪 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (90449976)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 発達障害 / 東日本大震災 / ストレスマネジメント |
Research Abstract |
研究実施状況:本年度は,①東日本大震災後に発行された防災教育や障害児支援に関する資料の収集,②親の会,NPO,教育委員会への聞き取り調査,③教員への聞き取り調査,④研究協力者会議の開催,に取り組んだ。 ①については,教育委員会で出された防災教育ハンドブック,小学校,特別支援学校等でまとめられた「災害時の記録」,自閉症協会等の被災者支援に関する報告書,宮城県教職員組合でまとめた教員の手記等を収集した。②については,「NPO みやぎ発達障害サポートネット」代表理事,「SAC(スペシャルアスリートクラブ)」保護者会,仙台市教育委員会特別支援教育課長から聞き取り調査を行った。NPOで行った支援や,家族から聞き取った震災直後の子どもたちの様子,SACの保護者会が行った震災時やその後の状況についてのアンケート調査の結果について,また,震災時の情報保障の課題について聞き取ることができた。また,市教委からは,市としての対応や学校再開へ向けての取り組み,再開後の支援の状況などについて聞き取ることができた。③については,個人的に了解の得られた教員から,主に震災1年後の特別支援学級在籍児童生徒の様子について変化があった点について聞き取ることができた。④については,平成24年7月1日に第1回の研究協力者会議を都内で開催した。すでに協力者それぞれとは内容等について情報共有していたが,改めてこの場で分担も含めた研究計画やアンケート調査の内容等について確認した。 研究成果:本年度は,現在の発達障害児や学校が置かれている状況の確認が中心となった。発達障害児のみでなく,児童生徒の置かれている状況や仙台市内の学校施設の状況(内陸部でも被災のため使用不可能な校舎が数カ所あり)も確認した。多くの学校では,震災後,できるだけ早く日常を取り戻すことに向け,教育活動を展開していたことが改めて確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地調査において,被災地の学校現場では「日常の教育活動を取り戻す」ことに主眼が置かれており,その意義を十分理解していても「過去を振り返る」ことになる調査については管理職を始めとして,拒否反応に近いものが存在することも分かった。したがって,聞き取り調査のおいては,調査対象者の現在に至るまでの思いや考えを聞き取ることから始め,慎重に面接を行った。このため,調査の進捗状況が遅れた。また,NPOを始めとする保護者会においても,アンケート調査はかなりの数の依頼があり,それらが必ずしも被災者の意思を汲んだものではない場合もあったことなどがあり,十分に調査の意義を理解してもらうために多くの時間を要したため,こちらも進捗が遅れた。 これらの状況を踏まえ,今後の調査については,震災直後を振り返ることに重点を置くのではなく,その後の教育活動をどのように展開してきたか,その中で発達障害児への支援の柱をどこに据えたか,また,その効果や課題を中心とした方がよいと考え,若干の計画変更が必要であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は学校管理職への学校再開に向けた取り組みや日常の教育活動を取り戻すまでの取り組みについての聞き取り調査と,学校再開後の発達障害児への支援についての特別支援教育コーディネーターを中心とした聞き取り調査を行い,本研究の目的の一つである「発達障害児の小中学校における災害後の教育活動のあり方」について検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,市内小学校を中心とした聞き取り調査に重点を置きたいため,調査のための旅費を中心に考えたい。協力者の鳥居氏についても調査に参加する方向で日程等を調整している。 また,協力者会議を年間2回,都内または仙台市において実施予定。会議室料,そのための旅費も計画している。 また,各学校から聞き取った内容,収集した資料については,必要に応じて費用をかけて整理・記録(データ化)を行う予定である。
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