2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
八森 祥隆 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (50433743)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 整数論 / 岩澤理論 / ポジティブ分岐拡大 / 楕円単数 / 岩澤主予想 |
Research Abstract |
ゼータ関数の特殊値をポジティブ分岐拡大の群作用により解釈する岩澤主予想の一般化について研究した。具体的には、ある種の代数体を基礎体として、その円分的Z_p拡大体上のポジティブ分岐最大アーベルp拡大のガロア群Xの岩澤代数上の加群としての構造と、それに対応すると予想される``p進L関数"について調べている。本研究の目標は次の3つであった。(a) Xの構造を``p進L関数"で記述すること(岩澤主予想の類似)、及び``p進L関数"の性質をより詳しく調べること、(b) μ不変量が0という仮定なしにXの性質を証明すること、(c) 更にXのより精密な構造。 本年度は項目(a)の研究を進めた。虚二次体のアーベル拡大を基礎体とする特別な場合で、楕円単数の理論を用いp進L関数にあたるものを構成できることは示せているので、この構成した"p進L関数"が期待される関数等式を持つことを示すことを目標とした。この関数は二変数のものを一変数に還元することで構成されるため、その還元の様子を観察しこの関数の複素$L$関数の特殊値との関係を調べる必要がある。その目的のために楕円単数の性質を詳細に検討した。この結果、初期の目的を達成するには至っていないが進展があり、現在完成を急いでいる段階である。これについては、研究発表の項に記した口頭発表において、これまでに得られた成果を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では目標(a)の研究は完成されている予定であったが、いまだ完成に至っておらず、達成度は若干遅れているといわざるをえない。現在その完成を急いでいる段階である。また、虚二次体以外のより一般の体の場合にこのポジティブ分岐拡大に対応する"p進L関数"がどのような特徴づけで与えられるべきなのかを見出すことを、さらなる課題としていた。これには有限次アーベル$p$拡大における単数基準の``χ-part''(χは位数p巾の指標)が正確にどのように定義されるべきかということが鍵であり、そのアイデアを海外の研究者との研究討論を通じて得る予定であったが本年度中に実行することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度実行する予定であった海外における研究者との研究討論及び研究発表を、次年度に数度行う予定である。特に J. Coates 氏(ケンブリッジ大学)、R. Greenberg氏(ワシントン大学)、A. Schmidt氏(ハイデルベルク大学) に助言を仰ぎ、研究の進展に資する。これらの研究者の知見が当研究課題にとって必要である。また、国内においても市村文男氏(茨城大学)や高橋浩樹氏(広島大学)との研究討論を行う。研究成果が得られ次第それを順次発表していく。また、岩澤理論全般に関する情報収集のための研究集会への参加や研究者の招聘などを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究目的の項目(a)について完成させると共に成果を発表する。また(b)についても研究を行う。これまでに、A. SchmidtがXの岩澤μ不変量が0であるという仮定の下で、(1) Xの岩澤代数上の加群としての特性多項式はある関数等式を満たすこと、(2) (アーベルとは限らない)最大ポジティブ分岐p拡大のガロア群はDemskin群になること、などを示している。ここではまず(1)のμ不変量の仮定を取りのぞきたい。それには、ポジティブ分岐拡大のガロア群(の双対)を定義するガロアコホモロジーの完全列を、Poitou-Tate dualityを用いて詳細に観察する必要がある。これに、Iwasawa が古典的理論で得た、いわゆるIwasawa pairingの手法を適用すれば、証明に必要なpairingが得られるのではないかと期待されるが、それにはもう少し詳細な検討が必要である。(2)のほうはガロア群の構造が複雑になり難しい(Demskin群にはならない)と思われるが、何らかの進展を得たいと考えている。 これらの話題について、J. Coates 氏(ケンブリッジ大学)、R. Greenberg氏(ワシントン大学)、A. Schmidt氏(ハイデルベルク大学) と研究討論を行う。また、国内においても市村文男氏(茨城大学)や高橋浩樹氏(広島大学)との研究討論を行う。研究成果が得られ次第それを順次発表していく。また、岩澤理論全般に関する情報収集のための研究集会への参加や研究者の招聘を行う。これらの目的のための旅費として研究費を使用する。その他、資料として整数論関係の書籍を必要分購入するために研究費を使用する。
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