2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540028
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
八森 祥隆 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (50433743)
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Keywords | 整数論 / 岩澤理論 / ポジティブ分岐拡大 / 楕円単数 / 岩澤主予想 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、研究課題であるポジティブ分岐拡大の岩澤理論について研究を行った。研究の目標は (a) 円分Z_p 拡大体上の最大p外不分岐p上ポジティブ分岐アーベルp拡大のガロア群Xの構造を``p進L関数"で記述すること(岩澤主予想の類似)、及び``p進L関数"の性質をより詳しく調べること、(b) μ不変量が0という仮定なしにXの性質を証明すること、(c) 更にXのより精密な構造、の3つであった。 このうち(a) については、虚二次体のアーベル拡大を基礎体とする特別な場合の、楕円単数からつくられる"p進L関数"を用いた主予想の証明と、"p進L関数"の関数等式について、現在までに得られている結果を発表準備中である。研究発表の項に記した口頭発表においても成果を報告した。この結果は K. Rubinの虚二次体上の岩澤主予想の証明に強く依存しており、これについては未証明の場合が残されている。本課題に関連することでもあるので、K. RubinのEuler System の議論を吟味し、未証明の場合にどこがうまくいかないか検討した。 また(b)についても研究を行った。Xの岩澤代数上の加群としての特性多項式はある関数等式を満たすことをμ不変量が0であるという仮定なしに示すことを目的に、ポジティブ分岐拡大のガロア群(の双対)を定義するガロアコホモロジーの完全列を Poitou-Tate dualityを用いて観察した。これにより、証明に必要と思われた自己双対Pairingを得ることはできなかったが、いわゆるIwasawa pairingの手法の類似を追うことにより、関数等式の一部を得ることができることを確認した。 これらの研究遂行のため、研究集会のための海外出張や研究討論のための研究者招聘などにより、岩澤理論に関する情報収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(b)の研究が不十分な段階であり、達成度は若干遅れているといわざるをえない。目標はXの岩澤代数上の加群としての特性多項式の満たす関数等式をXのμ不変量が0であるという仮定なしに示すことであった。このために、ポジティブ分岐拡大のガロア群(の双対)を定義するガロアコホモロジーの完全列を、Poitou-Tate duality(もしくは類体論)を用いて観察した。証明に必要と思われた自己双対Pairingを得ることはできなかったが、いわゆるIwasawa pairingの手法の真似により、関数等式の一部を得ることができることを確認した。しかし完全な結果を得るには別のアイデアが必要であり、現在模索中である。具体的には、S をXの双対群とすると、 0→S→GH→LH というような完全列(GHはglobalなガロアコホモロジー、LHはlocalなガロアコホモロジー)が存在するが、GH→LHの余核がSと関連するある群によって記述される。これを用いて、Xに対称性があることを示そうと考えている。今年度はこれへの応用を期した模索として、ホモロジー代数を基本から確認しつつPotou-Tate dualityの再構成を試みるなどした。
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Strategy for Future Research Activity |
(b) について、達成度の項で述べた完全な結果を得るためには、LHから(GH→LH)の余核への写像をより具体的なものとして詳しく調べる必要があるように思う。このため、この分野に精通しているR.Sharifi 氏(アリゾナ大学)との研究討論のための海外出張を行うことを計画しているところである。また、他の岩澤理論の研究者たちの招聘及び岩澤理論全般に関する情報収集のための研究集会への参加についても、より積極的に行い、停滞している部分の打開を図る。 また、(c)についても研究する。$X$の特性多項式には関数等式があるが、これは基礎体がCM体の場合には、$X$がプラスパートとマイナスパートの直和となることから、よく知られた鏡映原理により得られるものであった。基礎体がCM体でない場合にはこのような単純な直和の形では表されないと思われるのだが、関数等式はあるので、それが何らかの形で$X$の構造に反映していると期待される。このことについて、$X$の岩澤代数上の加群としての構造を詳しく見ることで調べたい。また、円分$Z_p$拡大の中間体上の最大ポジティブ分岐アーベル$p$拡大のガロア群の(移送写像に関する)順極限の双対の構造も知る必要がある。特に$X$の間の関係や、順極限をとるときの核("単項化")について調べたい。これに関してJ. Coates 氏(ケンブリッジ大学)や R. Greenberg氏(ワシントン大学)、市村文男氏(茨城大学)や高橋浩樹氏(広島大学)と、研究討論を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に研究の遅れに伴って生じた研究費を、今年度研究の遅れを取り戻すために使用する予定を立てていたものの、研究の遅れを予定していたところまで取り戻すには至らず、したがって、再び研究費の剰余が生じる事態となった。次年度は本研究の最終年度であるため、所期の結果を得るべく努力する。 (b)についての完全な結果へのアイデアを得るために様々な模索のひとつとして、R. Sharifi 氏(アリゾナ大学)との研究討論のため、海外出張を行うことを計画している。さらに他の岩澤理論の研究者たちの招聘及び岩澤理論全般に関する情報収集も行う。 また、(c)に関しては、$X$や順極限の双対の構造、これら2つの関係、順極限の"単項化"についてJ. Coates 氏(ケンブリッジ大学)や R. Greenberg氏(ワシントン大学)、市村文男氏(茨城大学)や高橋浩樹氏(広島大学)と、研究討論を行いたい。これらの目的のために旅費として研究費を使用する。その他、資料として必要な整数論関係の書籍を複数購入し、役立てる予定である。
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