2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540046
|
Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
齋藤 夏雄 広島市立大学, 情報科学研究科, 講師 (70382372)
|
Keywords | 正標数 / 代数多様体 / del Pezzo曲面 / F分裂性 |
Research Abstract |
平成25年度は,正標数の代数多様体を考えるうえで重要な性質の一つであるF分裂性という概念に注目した研究を中心に行った.正標数の体上定義されたFano多様体は,標数が十分大きければF分裂することが知られている.そこでまず2次元の場合を考え,低標数においてF分裂しないdel Pezzo曲面を特徴づけることを目指した.その結果,次数2のdel Pezzo曲面については,標数が2または3のときに限りF分裂しない曲面が存在することを明らかにすることができた.特に標数3のときは,こうした曲面がフェルマー型4次曲線で分岐した射影平面の二重被覆として一意的に特徴づけられることを示し,曲面を射影平面のブローアップで得る際,ブローアップする射影平面上の7点の配置に関しての特徴づけも与えた.さらに,反標準因子の滑らかな一般因子がすべて超特異楕円曲線であることが,次数2のdel Pezzo曲面がF分裂しないことの必要十分条件になっていることも証明した.以上の内容については,現在論文を準備中である.また,次数1のdel Pezzo曲面についても研究に着手し,F分裂しないものが標数2,3,5のときにのみ存在することを示した.さらに,次数が2以上の場合と異なり,反標準因子の一般因子がすべて超特異楕円曲線であっても,F分裂性を持つことがあり得ることも明らかにし,その具体例を構成した.これについては,さらに研究を進める予定である. 一方,低標数における有理二重点の変形空間についても,引き続き研究を行っている.残されたのは標数2の場合であるが,計算がきわめて煩雑なため,未だ完全に方程式を解明するには至っていない. 研究にあたっては,国内外の研究者と議論および情報収集を行うことを目的として,各地で行われた研究集会やセミナーに積極的に参加し,参加者と活発な議論を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,反標準因子の一般因子が超特異であるようなFano多様体の研究を中心に行い,その結果,del Pezzo曲面の場合についていくつかの結果を得ることができた.特にF分裂性との関係に注目し,F分裂性を持たない次数2のdel Pezzo曲面についての特徴づけを与えることができたことは,非常に有意義だったといえる.さらに次数1の場合についても,今後進展することが期待できる. 一方,有理二重点の変形空間については,残された標数2の場合の計算が容易でなく,当初見込んでいた結果を得るにはもう少し時間が必要である.また,準楕円曲面の多重標準因子線形系から定まる写像についての研究については,この1年はあまり進展させることはできなかった. 以上のように,研究内容によって進捗状況に差は出ているものの,全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究を引き継ぎ,F分裂性を持たないFano多様体の研究に取り組む.次数1のdel Pezzo曲面の場合については,反標準因子の線形系の基点をブローアップして得られる有理楕円曲面を調べることで,F分裂性を持たないdel Pezzo曲面の特徴づけを与えることを目指す.さらに,3次元のFano多様体についてもF分裂性を持たないものが存在することが明らかになっており,反標準因子の線形系に属するK3曲面の超特異性との関係を調べたいと考えている. 一方,有理二重点の変形空間についても,残された標数2の場合について等特異変形空間の構造の決定を目指す.単純楕円型特異点など有理二重点以外の特異点についても,変形空間など局所的な構造を解明する研究と,一般ファイバーに特異点があるような多様体を調べる大域的な研究を並行して行う.また,準楕円曲面の多重標準因子線形系が与える写像の研究についても,ベースとなる曲線のフロベニウス射による引き戻しの正規化で得られる線織曲面上の特異点を調べることにより,標数が2のときのある種の準楕円曲面の非存在を証明することを目指す.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度の前年度において,勤務先での業務に従事する必要からいくつかの出張を断念することになり,その結果旅費が当初の見込みを下回ったために未使用分を当該年度に繰り越すことになった.当該年度においては研究費の執行は概ね当初計画の通りだったが,結果として前年度未使用分の額がほぼそのまま未使用となり,次年度に使用することとなった. 研究を進めるためには,最新の研究成果についての情報を収集する必要があるほか,国内外の研究者と会って議論を交わすことが不可欠である.そこで,各地で行われる研究集会やシンポジウム,セミナーなどに参加するための旅費として研究費を使用する.また,これまでに知られている先行研究や最新の研究成果を知るため書籍を数多く買い求めるほか,最新論文のチェックや論文執筆などに活用するために,タブレット型端末を購入する.
|
Research Products
(1 results)