結び目と絡み目のコンコルダンス不変量の幾何学

2014 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 24540074
• Research Institution: Nagoya University
• Principal Investigator: 川村 友美 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (40348462)
• Project Period (FY): 2012-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 結び目と絡み目 / ラスムッセン不変量 / オジュバットとサボーの結び目不変量 / 絡み目のスライスオイラー数 / ベネカン不等式 / プレッツェル結び目 / 絡み目のコボルディズム

Outline of Annual Research Achievements

前年度までの研究に引き続き，実3次元球面内または実3次元空間内の結び目と絡み目の不変量のうち，4次元トポロジーが深く関わるコンコルダンス不変量と呼ばれるものに注目し，結び目解消数やスライスオイラー数といった古典的な不変量と，結び目フレアーホモロジー理論やコバノフホモロジー理論といった比較的新しい理論との関係について分析した．とくに，コバノフホモロジー理論で定義されたラスムッセン不変量，および結び目フレアーホモロジー理論で定義されたオジュバットとサボーの不変量について，前年度までに得られた結果，すなわちベネカン不等式に類似した不変量評価式とそれを利用したプレッツェル結び目の条件つきの決定公式に関連した研究を継続した．
例えば，Kim と Yeon による別の独立した類似研究は，プレッツェル結び目のコンコルダンス不変量決定という点で共通しているが，扱う族が異なっているほか，基準となる結び目が本研究では正結び目であるのに対し,類似研究では別の概念である交代結び目であった．双方の結果について共通点と相違点について丁寧に分析を行ない，それらの応用と発展の可能性を模索した．また不変量評価式については Abe と Tagami による厳密な考察と応用となる成果が本年度までに得られ，その検証作業を通じてさらなる探求を試みた．ただし不本意ながらいずれも，本年度中は発表に値するような新たな研究成果を得るには至らなかった．
以上の研究を遂行するにあたり，情報収集および意見交換のために，研究集会参加や研究者招聘などにより，他の関連研究者たちとの研究打ち合わせを実施した．

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

前年度に引き続き本年度も，絡み目のラスムッセン不変量およびオジュバットとサボーの結び目不変量について，ある条件を満たす結び目と絡み目についての決定公式または評価式の分析が中心となり，交付申請書作成時に予定していた絡み目ホモロジー理論全般や特異点論やゲージ理論などとの関連についての検証は滞った．さらにどちらについても本年度中には新たな成果を得るには至らなかった．

Strategy for Future Research Activity

次年度以降もコンコルダンス不変量の決定公式または評価式を最優先課題として研究を継続する．並行して絡み目ホモロジー理論全般や特異点論やゲージ理論や接触幾何などとの関連についての研究も，遅れてはいるが継続して遂行する．
現時点での目標達成度が高くないことに関しては，解決すべき数学的問題の存在が要因であるため，特別な対策はとらず大幅な方針変更は行なわない．
すなわち今後も大枠はほぼ当初予定通り，単独研究として遂行し，研究資料収集および研究打ち合わせを精力的に実施し，それにより研究の妥当性を検証しながら本研究を継続する．成果が得られればその都度口頭またはプレプリントなどにて発表し，国内外から客観的な講評を請うことでさらに発展させていく．

Causes of Carryover

本年度6月に研究代表者の妊娠が判明して以降，旅費を伴う研究打ち合わせおよび研究集会参加の予定は，研究代表者の体調が不安定なために確定させることが難しくなり，大幅に取りやめた．また前年度から延期していた計算機とその周辺機器の管理を含む研究環境整備のための消耗品購入も，新しいOSの発表時期が次年度になると予想され，研究中断前の研究環境見直し実施は時期尚早と判断し，本年度中は再度保留した．さらに本年度1月以降は研究代表者が産前産後休暇を取得したため研究活動も休止となった．そのために次年度使用額が発生した．

Expenditure Plan for Carryover Budget

研究代表者の育児休業終了後の10月より研究を再開する．研究環境整備のための消耗品購入が次年度使用額分の主たる使用計画となる．その他の請求分は予定通り，結び目と絡み目のコンコルダンス不変量の幾何学に関連する研究遂行のために，研究資料収集およびその管理のための経費，研究打ち合わせのための研究者招聘用旅費，研究成果の論文作成の環境整備のための経費として使用する．

Remarks

Tomomi Kawamura 著, An estimate of the Rasmussen invariant for links and the determination for certain links が Topology and Its Applications に受理された．