2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540121
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉信 康夫 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (90281063)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 数学基礎論 / 公理的集合論 / 強制法 / 強制公理 / バナッハ・マズア型ゲーム |
Research Abstract |
研究代表者は,過去の研究で,固有強制公理(PFA)をそれによる強制法で保存するような半順序のクラスの探索を行ってきた. これまでに見つけたそのような半順序のクラスとしては次の二つが代表的である:(a)作戦的閉: 長さ(ω1+1)のバナッハ・マズア型ゲームにおいて後手が各手番でそれまでの棋譜のブール下限値と今何手目かの情報のみに依存する必勝法をもつ.(b)*戦術的閉: 先手が各手番で半順序の元ではなく可算部分集合を選ぶバナッハ・マズア型ゲームの変種を考え, このゲームで後手が各手番において先手がそれまでに選んだ集合全部の和にのみ依存する必勝法をもつ. これら二つのクラスについては一方が他方を包含するか否かが不明であった. これに関し,本年度の研究で次のことが明らかになった. (1) PFAとは異なる有名な強制公理であるω1閉な半順序に対する強マーティン公理(ここでは公理Sと表す)の下では, いかなる*戦術的閉な半順序による強制法によっても, ω2上の関数でCPと呼ばれる性質をもつものを付加できない. 一方, 作戦的閉な半順序による強制法でCP性をもつ関数を付加することは可能である. (2)同じく公理Sの下では, いかなる作戦的閉な半順序による強制法によっても, 弱SCP列と呼ばれるω2の部分集合列を付加できない. 一方, *戦術的閉な半順序による強制法で弱SCP列を付加することは可能である. 従って(a), (b)は(少なくとも十分強い強制公理の下では)互いを包含しないことがわかった. なお(1)では酒井(連携研究者)による弱いスクエア原理とチャン予想の無矛盾性の証明にヒントを得ている一方,(2)ではヴェリコビッチにより導入されたω2の部分集合に関するゲームが証明の鍵になっており,公理Sの帰結群に二つの全く異なる組合せ論的構造が関与していることが示唆される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は次の二つに大別されている:(A)強制公理を保存する半順序集合のクラスについての研究.(B)位相空間の諸性質の強制法のもとでの保存についての研究. テーマ(A)については本年度研究実施計画での目標を完全に達成することができた. またその中では,ヴェリシコビッチゲームの変形版やその多重利用など新たな議論の手法も開発でき, さらに強制公理の帰結中に現れる二種類の組合せ的構造などの新たな視点も見いだされ, この分野が当初の予想以上に深く豊かな構造をもっていることがわかった. このようにテーマ(A)については当初の予想を上回る成果が得られたと考える. 一方, テーマ(B)については, 研究実施計画で予想していた程度の事実は概ね確認できたものの, 新たな目立った成果はこれまでのところ得られていない. このようにテーマごとの進捗の程度にはやや差があるものの, 本研究全体としては概ね順調に進展しているものと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで通り,名古屋大学集合論セミナーを週一度程度開催して,情報の交換,研究討論,研究方針の決定などを行うが,遠方や海外の連携研究者,研究協力者らとの研究打合せの機会を増やして,より広い知識と視点の確保に努める. 強制公理の保存の研究(テーマ(A))については,今年度の研究で大きく進展し,新たな課題も見つかっているので,当面はこの方向に沿った研究を重点的に継続する.特に,強い強制公理の下で,作戦的閉な半順序によって弱いスクエア原理を付加することの可能性について検討する.また,今年度の研究途上で開発した手法が,ω2木の強制概念としての性質と基数計算との関連を調べるのに有効な可能性があるとの着想を得たので,これについても検討したい. 位相空間の性質の保存研究(テーマ(B))については,これまでのところ目新しい知見が得られてないので,嘉田,友安ら連携研究者との情報交換をより積極的に行い,関連分野の最新の知識の蒐集に努めたうえで,当初実施計画の順序に強くこだわらず,あらゆる側面から問題を検討する. 成果発表は海外の査読論文誌への投稿によるほか,秋に松江での開催が予定されている位相空間論の国際シンポジウムなどでの発表をめざす.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は当初カナダで開催される研究集会に参加し,研究発表や研究討論を行う計画であったが,自己都合により取りやめざるを得なくなったため余剰金が生じた. 次年度は,特にテーマ(B)についてより綿密な情報収集の必要が生じていると考えられるので,特にこのテーマの研究に関わる連携研究者との往来を強化し,情報交換や研究討論の機会の充実を図る.また,状況が許せば,海外の研究協力者を数週間程度招いてテーマ(A)について共同で研究を行いたい.もちろん,当初から計画していたように,代表者や連携研究者,研究協力者の情報蒐集のための研究集会への参加や,代表者による研究集会での成果発表も積極的に行う.次年度の研究費は,大部分をこれらの移動のための旅費として用いる予定である.
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