2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540121
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉信 康夫 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (90281063)
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Keywords | 数学基礎論 / 公理的集合論 / 強制法 / 強制公理 / バナッハ・マズア型ゲーム |
Research Abstract |
研究代表者は, 以前の研究で, 現行の集合論を強化する公理の一つとして有力視されている固有強制法公理(PFA)を, それによる強制法で保存する半順序集合のクラスとして, 作戦的閉, および *戦術的閉な半順序集合のクラスを見いだしてきた. また, それぞれのクラスに対するアレフ2レベルのマーティン型公理に対し, それらと同値な組合せ論的構造を特定し, それぞれ CP, SCP- と名付けてその性質を調べてきた. このうち SCP- は可算集合の列の長さω2の列で「包含関係について単調増加連続な長さω1の列」を豊富にふくむものの存在という形で述べられるが, これについて(a)「」部分に「それらの総和が順序数となる」ことをさらに要請, (b)「包含関係」を「終拡大」に置き換える, という二種類の自然な拡張を考えることができ, これらをそれぞれ SCP-f, SCP-e と名付けた. 本年度の研究ではこれらの拡張の性質を調べることを主に行い, 次の成果を得た. (1)SCP-f は SCP- と CP の連言に同値であり, PFA と両立する. (2)SCP-e は SCP-f より真に強く, PFA と両立しない. しかし, PFA の下で SCP-e を自然な仕方で強制すると, PFA の帰結であるω2アロンシャイン木の非存在は保たれ, 従ってスクエア原理は成立しない. このうち, (2)は以前より共同研究を行っているドイツのケーニヒ博士を秋に約3週間招いて行った共同研究の成果である. 研究開始前には代表者はSCP-eはスクエア原理と同値であると予想していたので, この結果は意外であると同時に, *戦術的閉をさらに拡張した半順序集合のクラスや, それが保存する強制公理について新たな自然な概念の抽出の可能性を示唆するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は次の二つに大別されている:(A)強制公理を保存する半順序集合のクラスについての研究.(B)位相空間の諸性質の強制法のもとでの保存についての研究. テーマ(A)については, 研究実施計画に示されていた方向性とはやや異なるものの, 強制公理を保存する半順序集合のクラスに対応するマーティン型公理に対してその自然な変形についての考察から興味深い結果が得られ, スクエア原理とこれらのマーティン型公理の間の強さをもつ無限組合せ的命題やそれに対応するバナッハ・マズア型ゲームや半順序集合のクラスなど新たな研究対象が浮かび上がるなど, 当初の予想を上回る進展をみせている. 一方, テーマ(A)の研究に集中的に時間と費用を投入したため, テーマ(B)については目立った成果は得られていない. このように, テーマごとの進捗には差があるものの, 本研究全体としては概ね順調に進展しているものと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
名古屋近辺の連携研究者, 研究協力者とは, 月に2度程度開かれる名古屋大学集合論セミナーを通して情報の交換,研究討論を行い,研究方針の決定に役立てる. また連携研究者の嘉田氏のいる大阪府立大学や, 同じく連携研究者の渕野, 酒井, 薄葉各氏を擁する神戸大学の間で不定期に催されている関西集合論セミナーにも研究代表者が出席するか名古屋の連携研究者, 研究協力者を派遣して情報交換に努める. 強制公理の保存の研究(テーマ(A))は, 順調な進展がつづいており, さらなる研究の広がりも期待されるので, 重点的に継続する. 当面は, 作戦的閉, *戦術的閉の両クラスを包括する概念である *作戦的閉な半順序集合のクラスに対するマーティン型公理であり SCP- より強い命題である SCP について, SCP-e, SCP-f と同様の拡張によって得られる SCPe, SCPf について, それらの強制公理の保存性を検討し, SCP-e, SCP-f との比較を行う. これらを手がかりにして, SCP- や SCP とスクエア原理の間の強さをもつ組合せ命題や, 対応する半順序集合のクラスのもつ構造を明らかにする. この研究に際しては, 本年度も共同研究を行ったドイツのケーニヒ博士との連絡を密にし, 状況が許せば次年度も日本に招いて共同で研究を行う. 位相空間の性質の保存研究(テーマ(B))については, 引き続き嘉田,友安ら連携研究者との情報交換を積極的に行い,関連分野の最新の知識の蒐集に努める. 特にテーマ(A)については公表すべき成果が蓄積しつつあるので, 次年度の早い段階で海外の査読論文誌への投稿を実施するほか, 秋に数理解析研究所で行われる集合論の研究集会での発表等を通して成果の発表を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の家庭の事情により長期の旅行が難しくなり, 他地に赴いての研究打合せや研究集会などへの参加の回数や期間を当初の予定に比べ抑制せざるを得なくなったため余剰金が生じた. 長期の旅行が難しい状況は今後もしばらく続くことが予想されるので, 連携研究者などに名古屋に訪問してもらう形での研究打合せを増やして十分な情報共有や意見交換の機会を確保する. また状況が許せば本年度共同研究で成果を得たケーニヒ博士など海外の研究者を数週間程度招いて再び共同で研究を行う. 次年度も研究費の大部分を旅費(海外研究者の招聘も含む)として用いる予定である.
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