2014 Fiscal Year Research-status Report
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24540146
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
古市 茂 日本大学, 文理学部, 教授 (50299327)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エントロピー / 行列解析 / 不等式 / 情報量 / 作用素平均 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず,対数平均に対するタイトな上界・下界に関するユニタリ不変ノルム不等式を導くことが出来た.これは,論文誌 Journal of Inequalities and ApplicationsからタイトルUnitarily invariant norm inequalities for some meansとして出版された.この内容に関して,学会発表では,2014年3月の日本数学会および2014年12月の日本応用数理学会環瀬戸内応用数理研究部会第18回シンポジウムで,国際会議では,2014年7月のアムステルダムのIWOTA2014で講演した. 次に,算術平均・幾何平均・調和平均の間に成立する不等式の研究成果としては,論文誌Journal of Mathematical InequalitiesからタイトルOperator inequalities among arithmetic mean, geometric mean and harmonic meanとして出版された.この内容に関して,学会では,2014年9月の日本数学会および,2014年6月のクロアチアで開かれた不等式に関する国際会議で講演した.なお,この結果は,既に,興味を持たれた邦人研究者によって一般化が試みられているようである. 最後に,これらとは少し異なる研究結果として一般化エントロピーに関する数学的な基本性質を調べたものがあり,論文誌EntropyからタイトルOn Some Properties of Tsallis Hypoentropies and Hypodivergencesとして出版された.この内容に関して,学会発表は2015年度に行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度中に所属機関で取得したサバティカル制度の恩恵で,論文出版および学会発表の件数は2014年度も想定の通りであった。特に,対数平均のタイトな上界・下界に関するユニタリ不変ノルム不等式の導出や幾つかの作用素平均の間に成立する新しい関係式の導出は良好な結果と思える。さらに,これらの数学的な話題のみならず,2012年からルーマニアの研究者とメールで協議していたhypo-entropyに関する基本的な性質の研究およびそのTsallis拡張の結果もあり満足度は高い。これは,6月にクロアチアで行われた国際会議でそのルーマニアの研究者と初めて会ったことが大きく,その会議中およびその後の7月8月とメールでのやり取りで得られた結果である。さらに,「相対作用素エントロピーの上界と下界について」の結果を国内のセミナー及び学会で発表した。この論文は受理されているが出版はまだされていない。 しかしながら,一方で,本研究課題の申請時の研究課題と少しズレがあるが,これは研究というものは生ものであるため致し方ない所だと思われる。とはいっても,本人の研究分野は限られているため,申請課題と2014年度に得られた結果が大きく乖離しているわけではなく,十分許容範囲と考えている。申請時の課題への私自身の興味だけでなく本分野の研究者の興味も変わりつつあることも考慮しなければならないため,申請時の課題そのものだけを研究遂行するのは現実的ではなかろう。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は本研究課題の最終年度である。可能であれば申請時の研究課題でやり残したものを遂行したいところであるが,2014年度に得られた結果からの進展を第一の研究目標としたいと考えている。特に,いくつかの作用素平均の間に成立する作用素不等式のさらなる改善を行うことを考えている。 これ以外に,最近読んだ論文で,LiebのConcavity問題のsimplest proofというのがあり,このなかで用いられているperspective functionについて学びたいと思っている。これについては,早速ゴールデンウィーク中に,これまで共同研究を行ってきた山口大学の柳教授・栗山教授を訪ねて,研究打ち合わせする予定である。この論文とその周辺の論文を私は読み込んできたので彼らの前で説明を行い,何か進展がないか,問題がないかについて議論する予定である。私が気が付いているのは些細な修正程度で,今現在ではまだ研究の種にすら当たらないものであるため,山口大学に出張する次第である。 その他,非可換エントロピー(量子エントロピー)や作用素平均,Tsallisエントロピーなどに関連した研究の話題について取り組みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(B-A)は,5,236円となった。来年度も継続して本研究を続けることが確定しているため,無理に0円にするより,少額ではあるが来年度に有効に使用するために,無理して0円にはしなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に旅費の一部か学会参加費或いは,書籍代などの消耗品代金に使用する予定である。
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