2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540176
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
伊藤 宏 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (90243005)
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Keywords | 関数解析 / 数理物理 / 関数方程式 |
Research Abstract |
遠方で発散する電場ポテンシャルと有界な磁場ポテンシャルをもつ3次元ディラック作用素のスペクトルおよび非相対論的極限について研究を行った。ポテンシャルには,伸長解析性を仮定する。 ディラック作用素は相対論的量子力学における重要なハミルトニアンであり,数理物理学における重要な研究対象である。この作用素は非相対論的極限(光速を無限大にする)では,非相対論量子力学のハミルトニアンであるシュレーディンガー作用素に何らかの意味で近づくと考えられている。実際,遠方で減衰するポテンシャルの場合には,両者のスペクトル構造は類似しており,非相対論的極限において,ディラック作用素はシュレーディンガー作用素にある意味で近づくことが証明されている。一方,遠方で発散するポテンシャルの場合には,両者のスペクトル構造は全く異なる。以前,伊藤(研究代表者)と山田(連携研究者)は,磁場ポテンシャルがない場合に,2種類の相対論的シュレーディンガー作用素を介在させることで,デイラック作用素のスペクトル構造の決定と非相対論的極限におけるその構造の劇的な変化を説明し,シュレーディンガー作用素のレゾナンスとディラック作用素のレゾナンスの関係を見出した。 この課題研究の1年目である24年度では,行列値ポテンシャルをもつ場合に同様の結果を得ることができたが,相対論的極限においては,磁場を入れることが出来なかった。2年目である25年度では,磁場を入れることに成功し,次のことを示した。(1)スペクトルは埋め込まれた固有値を除き離散的であり,特異連続スペクトルは存在しない。(2)レゾナンスは上半平面にある。(3)光速が十分大きいときには,2種類のパウリ作用素の固有値やレゾナンスの近くに,ディラック作用素のレゾナンスが存在する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的は,遠方で発散するポテンシャルをもつディラック作用素について,(1)レゾナンの存在と非存在領域の決定(2)埋め込まれた固有値の非存在の解析性を用いる証明(3)磁場をもつ場合への拡張,である。 平成24度では,ポテンシャルを行列値関数とすることで,電場と磁場のポテンシャルを両方もつ場合を含む一般的なディラック作用素を解析したが,相対論的極限においては,ポテンシャルの主要部は遠方で発散するスカラーポテンシャルであった。そのため非相対論的極限において磁場の影響を調べることが出来なかった.しかし,平成25年度の研究では,主要部に有界な磁場ポテンシャルを入れることに成功し,次のことを証明できた:(i) スペクトルは離散的に埋め込まれた固有値を除いて絶対連続である。また,レゾナンスは閉上半平面上にしか存在しない。(ii) 光速が十分大きいときには,ある種のパウリ作用素の固有値またはレゾナンスの近傍にディラック作用素のレゾナンスが存在する。 以上のことから,(3)はおおよそ目標を達成されたと考えてよい。(1)については,ある大きな無限領域における存在・非存在については完全に決定された,(2)については,現在研究中である。(1)を複素平面全体で解決することと(2)を解決することについては,研究を進めていくに従い容易ではないことがわかってきたが,今後の研究である程度の進展は図れるのではないかと思われる。 このように,着実に進展しているので,「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は,連携研究者(山田修宣(立命館大学)教授,田村英男(岡山大学)教授,岩塚明(京都工芸繊維大学)教授,野村祐司(愛媛大学)准教授)および今年度の研究協力者である岡野大(愛媛大学,数値解析)准教授と研究連絡を行いながら研究を進めていく。「作用素論セミナー」(京都大学),「解析セミナー」(愛媛大学),「実函数論函数解析学合同シンポジウム」(学習院大学)などを中心に国内外の研究者と研究情報の交換を行いながら研究を進めていく。また,最終年度であるので,セミナーや研究集会などで積極的に得られた結果を発表し,論文にまとめていく。 具体的な研究内容について以下に述べる。(1)レゾナンスの存在・非存在について,平面全体での結果を得ることを目指す。まず,複素数平面上のある2つの錐以外にはレゾナンスは存在しないと予想をしており,その証明を目指す。また,レゾナンスは有限個であるか否かの問題を考察する。(2)埋め込まれた固有値の非存在の証明を行う。そのため,解析性を用いる方法を考察する。(3)平成25年度では,磁場ポテンシャルは有界であったが,その条件を緩めることができるのかを考察する。すなわち,遠方で発散する磁場ポテンシャルがある場合に,スペクトルの性質やレゾナンスについて考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本学で日本数学会が開催されたため,研究連絡や研究発表のための旅費が節約できたこと,また,参加予定であった研究集会に,事情により参加出来なくなったため。 1.最終年度であるので,積極的に学会やセミナーなどで発表や情報収集を行う。特に,「作用素論セミナー」(京都大学),「実函数論函数解析学合同シンポジウム」(学習院大学),「解析セミナー」(愛媛大学),「夏の作用素論シンポジウム」(場所未定)等国内外の研究集会に参加するための旅費に使用する。また,必要なら研究集会の会議費に使用する。さらに,他の研究者との研究連絡のために旅費に使用する。 2.論文作成や発表のためのパソコン周辺機器やソフトを購入する。また,数理物理関係の書籍を購入する。
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Research Products
(3 results)