2012 Fiscal Year Research-status Report
可測力学系と位相力学系との交流理論と非可換力学系の作用素論的基礎研究
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24540195
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
長 宗雄 神奈川大学, 理学部, 教授 (10091620)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Hilbert space / Banach space / Weyl's Theorem / Fredholm Theory / Browder spectrum / symmetrizable operator / multioperator / Taylor spectrum |
Research Abstract |
「可測力学系と位相力学系との交流理論と非可換力学系の作用素論的基礎研究」の研究課題遂行のため、6月21日~6月23日に韓国・Chungbuk National Universityで開催された国際研究集会「KOTAC2012」に荒木不二洋および富山淳が参加し、それぞれ座長を務めた。また、富山淳は8月15日~8月25日にオランダのライデン大学においてM. de Jeu 教授と位相力学系より生成された非可換-代数の構造についての共同研究を行った。そこでの研究により、次の2編の論文を発表し、さらに2編が印刷待ちである。 1. M. de Jeu and J.Tomiyama, On the Banach *-algebra crossed product associated with a topological dynamical system, Journ. of Funct. Anal.,262(2012),4746-4765. 2. M. de Jeu and J. Tomiyama, Maximal abelian subalgebras and projections in two Banach algebras associated with a topological dynamical system, Studia Math., 208(2012), 47-75. 長 宗雄と棚橋浩太郎は8月19~24日に中国・太原理工大学を訪問し、張 玲玲教授と共 同研究を行い、論文を1編まとめた。また、11月5日~7日に京都大学数理解析研究所で開催された研究集会「幾何学及び確率論的手法による作用素の構造解析の研究」において「An example of an m$-isometry」の題名で研究発表を行った。今年度発表した論文は3篇で、詳細は次ページの「11.研究発表」に記載します。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
古典的な調和解析ではL1(G) のほかにその双対群が考えられ、両者の相関の下に理論が展開されている。群作用のC*-クロス積の理論ではL1(G) にあたる部分は単にC*-envelope を考える前の対象として捉えられているだけで、その構造はまったく無視されており、先駆的な文献は皆無である。しかし非可換調和解析の理論の構築には、このl1-クロス積の構造解析が(C*-クロス積とともに)不可欠である。本研究ではコンパクトな空間上の位相力学系から作られたl1-クロス積 l1(∑) の解析を目的としている。主な結果はこの中の閉イデヤルがすべて自己共役になるための完全条件は「力学系が周期点をもたない」というものである。C*-環において、閉イデヤルはすべて自己共役なので、そこではこのような問題はおこらない。C(X) は自然に l1(∑) の部分環になるが一般の力学系では極大可換部分環にはならない。そこで、そのl1(∑) の可換子環C(X)' を考えるとそれは極大可換部分環となり、かつゼロではないl1(∑) の閉イデヤルとは必ずゼロではない共通部分を持つことを示した。これは クロス積のイデヤルの構造が C(X)' のそれに反映していることを示す重要な結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
単位元を持つC*-環においてはその上の特別な汎関数は positive であることは知られているが、その逆、すなわち汎関数がこの性質を持つBanach*-環は自動的にその*-作用とノルムでC*-環になることを示す。また、古典的な調和解析での重要な問題であった Spectral systhesis の問題は最終的にP.Malliavin によって1950年代の終わりに解決されたが、この論文では非可換の調和解析の課題としてSpectral synthesis の問題を定式化し、それが成立するのは力学系がfree (周期点を持たない)なときのみに限ることを示す。また、作用素論では、ヒルベルト空間で定義される *-paranormal 作用素をバナッハ空間上の作用素に拡張することを試みる。n-paranormal 作用素間の相互関係や共通部分についても考察し、これらを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
スペイン・サンタンデールで開催される、Operators on Banach spaces に長 宗雄が参加し、研究発表を行う。6月30日~7月4日に韓国・釜山で開催されるThe Asian Mathematical Conference 2013 に富山 淳が参加し、研究発表を行う。この旅行の費用に充てる。昨年度、イタリア・パレルモ大学の A. Pietro 教授と、スペイン・サンタンデール大学のM. Gonzales 教授に来日いただき、共同研究を行う予定でありましたが、彼らの都合により、来日できなくなり、予定していた約40万円を今年度に繰り越しました。今年度は彼らに来日いただき、この費用を支出する予定です。
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