2013 Fiscal Year Research-status Report
多変数有理写像の不連続点集合に存在する不変集合の分類
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24540225
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Research Institution | Tokyo Metropolitan College of Industrial Technology |
Principal Investigator |
篠原 知子 東京都立産業技術高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50369956)
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Keywords | 複素力学系 / 不定点 / 有理写像 |
Research Abstract |
多変数複素力学系は,多変数実力学系の問題を複素化し関数論・代数幾何の手法を用いて解決を図ること,多変数複素力学系独自の現象を定式化することを目標に活発に研究されている.平成24年度以前に研究代表者は,複素2次元射影空間上の有理写像Fの不定点Iにおいて,非可算無限個の不変な曲線の族を構成した.この結果を拡張し,複素n次元複素射影空間の有理写像Fでn-2次元の不定点集合Iを持つものに対して,n-1次元の複素曲面を構成した.またこの複素曲面はIを含みFで不変であることを示した.これらの結果を基に,本研究では高次元複素射影空間上の一般的な有理写像Fの不定点集合Iに存在する,様々な種類の不変集合を分類していくことが目標である. 平成25年度は,2次元複素射影空間上の有理写像Fで,不定点Iにおいて複数回blow upしたときにFの不定性が解消されるものについて研究を行った.それまでの研究では,1回のblow up で不定性が解消される場合に,非加算無限個の形式的べき級数を定義し,不変曲線族を構成していた.まず複数回のblow upで不定性が解消される場合にも同様に形式的べき級数が定義できるための十分条件を与えた.有理写像の不定性が解消されるまでの過程には様々なパターンがある.いくつかの有理写像についてパターンを定式化し,形式的べき級数の係数に制限が生じることを示した. 平成26年度以降は,複数回のblow up で不定性が解消されるまでの過程を定式化するモデルを定義し,その性質を用いて不定点に存在する不変曲線族の形状の特徴づけを行う.また複素n次元射影空間上の有理写像についても力学系構造の分類を進める.具体的には不定点集合IとF(I)が交わるが,IがF(I)に含まれない場合などについて,IとF(I)に適切な幾何学的な条件をおくことで,不変集合が存在するための十分条件を定式化していきたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度は,おおむね順調に進展していると考えている. 当初の研究計画では,平成25年度に,複素2次元射影空間上の有理写像Fの不定点において,blow upを行う際に得られる複素数列について,極限を分類し,その性質を調べることで,有理写像の特性を与えることを目標としていた.実際は,有限回のblow upで不定性が解消されるいくつかの有理写像Fについて研究を行い,不定性が解消されるまでの過程のパターンに応じて,複素数列を定義する漸化式に制限が生じることを示すことができた.また不定性が解消されるまでの過程に応じて,不変曲線を定義する形式的べき級数の係数に制限が生じることがわかった. これらの具体例を基に,不定性が解消するまでの過程を表すグラフ構造を定義し,複素数列を定義する漸化式に生じる制限を定式化していく.その結果,複素2次元射影空間上の大多数の有理写像に対して,不定点に存在する不変曲線族を定義する形式的べき級数を与えることができ,不変曲線族の形状に関する特徴付けを理論的に行うことができると予想している. このように当初の平成25年度の研究計画とは別の性質に着目し,不定点における力学系構造の分類を完成するための具体的な指針を得ることができたことから,おおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず,複素2次元射影空間上の有理写像Fで,不定点Iにおいて有限回のblow upで不定性が解消できるものについて,不定点Iに存在する不変曲線族の構成を行う.具体的な方法としては,不定性が解消できるまでのblow upの手順を表すグラフ構造を定義する.このグラフの性質から,複素数列を定義する漸化式への制限を定式化し,不変曲線を定義する形式的べき級数の係数の性質をまとめていく.これらの結果が得られれば2次元複素射影空間上の有理写像Fに関しては,大多数の場合について,不定点Iに存在する不変曲線族を定義するための形式的べき級数を与えることができ,不定点における力学系構造の分類がほぼ完成すると考えている. また複素n次元射影空間上の有理写像Fについても力学系構造の分類を進める.有理写像Fの不定点集合Iの次元がmで,IがF(I)に含まれる場合について,不変集合が存在するための十分条件を与える.そのため,不定点集合Iの次元がn-2の場合に得られた結果(不変集合が存在するために,除外因子EとF(I)が満たす幾何学的な条件)を一般化することで,十分条件の定式化を行っていく.更に,IとF(I)が交わるが,IがF(I)に含まれない場合について,Iに不変集合が存在するための十分条件を定式化していきたい.IとF(I)の交わり方には,様々な場合があると予想される.これらの場合を適切に分類し考察することで,複素2次元射影空間上の有理写像では現れない,高次元特有の複雑な力学系構造を構成できると考えている.
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Research Products
(1 results)