2012 Fiscal Year Research-status Report
太陽磁場活動の中長期的変動を予測するセルフ・コンシステントなモデルの開発
Project/Area Number |
24540228
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横井 喜充 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (50272513)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 太陽 / 磁場 / 乱流 / ダイナモ / 輸送 / 乱流磁気拡散 / リコネクション |
Research Abstract |
太陽の大規模磁場は乱流起電力を含む誘導方程式に支配される.乱流起電力の表現として,大規模な流体渦・回転運動とカップルする乱流クロス・ヘリシティの効果を研究した.太陽の周期的磁場活動を記述するモデルにクロス・ヘリシティの効果を組み入れ,さらに乱流輸送係数と直結する乱流クロス・ヘリシティの発展方程式もモデルに組み込んだ.その時間発展の数学的および数値的解析により,従来の理論の枠を超えて太陽活動の中・長期的変動を記述するモデルの原型を構成する事に成功した.これらの成果は論文"Cross helicity and related dynamo"にまとめられ,雑誌Geophysical and Astrophysical Fluid Dynamicsから公刊された(2013年3月).この論文は世界的に注目され,公刊後ひと月で既に当雑誌の歴代のMost read articlesの首位にランクされている. さらに,運動方程式を考察し,乱流の効果が現れる,レイノルズ応力,マクスウェル応力,平均場のローレンツ力の表式を求めた.乱流の効果を含む運動方程式は,歪み振動など太陽内部の流体運動について重要な情報を与える.この考え方を発展させ,乱流ダイナモ的な視点から,磁場の繋ぎ替え現象について理論モデルを構築した.これは,天体,宇宙,プラズマなどで基本的な現象である磁気リコネクションに対する乱流効果についての新しいアプローチとして各方面から注目されている. この成果は二つの論文にまとめられ,Physical Review Letter(PRL)とPhysics of Plasmas(PoP)に投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
太陽磁場活動の発展を記述する最も簡潔なモデルを構成し,基本的なふるまいについて解析することができている.そのモデルの詳細なふるまいは数値計算の結果を俟たねばならない.線型化したモデル方程式は固有値問題として解くことが可能である.その分野でよく知られたDieter Schmitt(Max–Planck太陽系研究所)との共同研究が既に始まっており,早晩数値的な結果は得られると思われる. また,従来のモデルとの比較も行なわれている.本件のモデルは,輸送係数の方程式を解くという点が従来のモデルと大きく違う点である.いくつかある輸送係数のうち,太陽磁場活動の変動にとって最も本質的な部分,すなわちクロス・ヘリシティ(速度=磁場相関)を選択し,その発展方程式を解く.実際,クロス・ヘリシティが振動的なふるまいをすることは,予備的な計算でも示されている. 以上の点で,これまでのところ,研究はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
実際の太陽活動の変動を記述するためには,太陽磁場の二重極と四重極のモード間結合を考慮に入れる必要がある.モデルの簡潔さを保ちつつ,そのようなモード結合を組み入れる方法を探る必要がある. また,クロス・ヘリシティの境界条件は,理論的にはまだ充分にわかってはいない.この点を明らかにするためにダイナモの直接数値計算をしているグループと共同し,クロス・ヘリシティの空間分布についての情報を得なくてはならない. その他,理論的構成の要となるダイナモ・モデルの検証は重要な点である.数値および実験の両面から検証を進める.数値的には,Kolmogorov流,円筒状シア流れ,磁気回転不安定流れといった三つの流れ場での数値実験が考えられる.実験的には,クロス・ヘリシティの測定には現時点ではプローブが不可欠である.液体金属およびプラズマのダイナモ実験で乱流起電力とさまざまな乱流統計量を観測する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の多くは,他研究者・研究グループとの研究交流のために使用する. クロス・ヘリシティの教会条件については,Glasgaw大学のRadostin Smitevのグループ,Paris Ecole Normalle SuperieurのEmanuel Dormyのグループとの共同研究で数値的にクロス・ヘリシティの空間分布についての情報を共有する. ダイナモ・モデルの検証は,GrenobleのGuillaume Baralac,CattaneoのAlfio Bonanno,PrincetonのJim Stoneと頻繁に連絡を取りつつ,それぞれの幾何形状で検証の数値計算を進める.実験的検証ではWisconsin-MadisonのCary Forestのグループの液体金属およびプラズマ・ダイナモ実験が重要なので彼らと引き続き共同で研究する.
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