2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540255
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 宏次 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (10313173)
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Keywords | 有限温度密度QCD / 高エネルギー重イオン衝突 / 符号問題 / 非平衡場の理論 / 動的臨界現象 |
Research Abstract |
(A)原子核衝突初期のダイナミクス:原子核衝突初期のダイナミクスを探るために、いわゆるsmall-xグルーオン散乱からの重いクォーク対生成(J/psi, Dなど)を、陽子ー原子核衝突反応について数値評価し、RHICおよびLHCデータと比較・予言した。J/psi抑制の予言値は実験データに一致しなかったので、その物理的な要因を現在検討中である。また、原子核衝突初期のゲージ場ダイナミクスの数値計算を実行するためのGPGPUワークステーションを構築し、先行研究の追試計算を開始した。 (B)有効作用汎関数を用いた非平衡揺らぎの時間発展:臨界点の存在に起因する非平衡揺らぎ成長のダイナミクスを2PI有効理論を用いて解析する。大きな進展はなかったが、国内外の研究者と議論を続けている。 (B’)有限密度QCDの符号問題:課題(B)に関連して、経路積分を用いた統計平均評価に符号問題が現れる場合の解決方法を探っている。一つは配位空間を実から複素空間に変形拡張するものであり、実スカラー場について、小さな格子サイズでの有効性を数値計算で実証した。もう一つは、配位空間を複素空間に拡張してランジュバン方程式を用いるものであり、カイラル行列模型を対象にして、数値解の検討と手法の改善を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題(B)に関連する研究として課題(B’)に取り組む中で、(B)に割く研究時間が想定以上に少なくなっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
(A)数値計算環境は整っているので、先行研究追試の本格化に早急に取りかかる。SU(2)ゲージ場の不安定性機構について、様々なゲージ場配位の初期条件に対する時間発展の応答を調べることによって、物理的な機構を明らかにすることが目標である。また、初期のダイナミクスには、ゲージ場と高エネルギー散乱粒子との相互作用の影響も重要になると考えている。 (B)有効作用汎関数を用いた臨界揺らぎのスペクトル、および非平衡揺らぎの時間発展については、研究期間の延長も視野に入れつつ、当初の計画に沿って研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
費用の都合から、メーカー製品を諦めて計算機本体を自分で組み立てることにより、サーバー構築費用を抑制したから。 必要性があれば、計算用グラフィックボードの増設を予定。
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