2013 Fiscal Year Research-status Report
ニュートリノ質量・暗黒物質・バリオン数の起源から探る標準模型を越える理論構造
Project/Area Number |
24540263
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
末松 大二郎 金沢大学, 数物科学系, 教授 (90206384)
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Keywords | 標準模型の拡張 / 暗黒物質 / ニュートリノ / 宇宙のバリオン数の起源 / インフレーション |
Research Abstract |
標準模型では説明することのできない現象、すなわち、ニュートリノ質量とレプトン混合、暗黒物質の存在、宇宙のバリオン数非対称の3つの同時説明を可能とする拡張標準模型として、TeV領域での輻射ニュートリノ質量生成模型を採用し、ニュートリノ質量が逆階層をとる場合について、ニュートリノ質量・レプトンフレーバー混合、暗黒物質残存量、レプジェネシスによる宇宙のバリオン数生成の定量的な解析を行った。さらに、暗黒物質の直接探索による模型の検証可能性の考察を進め、以下の結果を得た。 (i)混合角θ13の値を含め、すべてのニュートリノ振動実験結果を矛盾なく説明するパラメータ領域が模型に存在する。零ニュートリノダブルベータ崩壊は次世代実験で観測可能領域にある。(ii)(i)のパラメータの下で、最も軽い不活性スカラーの中性成分は要求される暗黒物質残存量を説明し暗黒物質の候補となる。(iii)(i)のパラメータの下で、バリオン数生成はTeV領域の右巻きニュートリノによる共鳴レプトジェネシスによりもたらされるが、右巻きニュートリノに要求される質量縮退は従来の共鳴レプトジェネシスに比べて大きく緩和される。(iv)次世代の暗黒物質直接検出実験Xenon1Tにおいて、(ii)の暗黒物質候補は検出可能となる場合が存在する。 これらに加えて、上述の模型において暗黒物質の対消滅から生成される単色光子による暗黒物質の間接検出の可能性についての検討も進めた。また、この模型の1重項スカラー場による拡張を考えることにより、右巻きニュートリノの質量縮退を説明すること、初期宇宙におけるインフレーションを模型の中に取り込む可能性などについて、興味深い結論を得ている。これらの成果は今後論文にまとめていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目標としたニュートリノ質量、暗黒物質、宇宙のバリオン数を関連した形で同時に説明する模型が存在しうることを見出すことができた。さらに、暗黒物質探索に基づく模型の検証可能性についても解析を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在考察している輻射ニュートリノ質量模型、及びその拡張型模型において任意パラメータとして取り扱われているパラメータに関して、高エネルギー領域の理論構造についての考察を進めることによりその起源を明らかにし、制限を付ける可能性を検討していく。この研究は、LHC実験で明らかにされたヒッグス質量や宇宙のインフレーションとの関連においても重要となると予想される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費と旅費等の支出を精算するなか生じた残額が有効な使用を行うには半端な金額となったため、次年度の助成金と合わせ使用することにより、より有効な使用計画が可能となると判断したことによる。 翌年度分に請求してある助成金と合わせ、(1)研究成果の発表のための国際会議や国内学会、研究会出席のための旅費、(2)学外から招聘する講師によるセミナー等を通じた専門的知識の提供に対する謝金、(3)数値計算を中心とした指導大学院生の研究協力への謝金、として使用する予定である。これらを通して研究が最も効率的に推進できるように、研究費の使用については最大限の配慮をおこなう。
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Research Products
(6 results)