2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540267
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松原 隆彦 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00282715)
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Keywords | 宇宙論 / 宇宙の大規模構造 / 統合摂動論 / パワースペクトル / バイスペクトル / ハロー・モデル / バイアス / 非ガウス性 |
Research Abstract |
当該年度は、統合摂動論の枠組みをもとにして、具体的なパワースペクトルを1ループ近似によって一般的に求める計算を行った。また、統合摂動論の応用をいくつかの問題に対して行い、その有用性を具体的に示した。 まず、数値シミュレーションによって構成したハローのカタログを用いて、相関関数の解析をもとにしてこれまでにバイアスの性質を調べた。とくに質量分布とハロー分布の相互相関に対する振る舞いを数値的に解析し、それを統合摂動論による解析的な予言と比較した。これにより統合摂動論の有効性が新しい観点から明らかになった。 また、初期ゆらぎに非ガウス性がある場合、天体のパワースペクトルにスケール依存するバイアスが現れることが知られている。初期ゆらぎにベクトル場が寄与する場合の初期非ガウス性について、この効果を統合摂動論の手法によって調べた。初期のベクトル場の存在は、局所型の非ガウス性と呼ばれるタイプの初期ゆらぎに近いことが示された。 さらに、ハロー・モデルに基づいた統合摂動論の応用により、バイアスされた天体の3点統計量であるバイスペクトルの性質を調べた。陶郷摂動論によって、以前に調べられていた手法よりも近似の度合いが少ない、より正確な解析式を導くことができた。また、摂動論の展開について、初期非ガウス性については単なるループ展開がうまく働かないことを明らかにし、正しい展開法を示した。こうして高次の寄与がどのように評価されるべきであるかを明らかにした。初期非ガウス性のいくつかのタイプの違いを明らかにした。 以上のように、統合摂動論は宇宙の大規模構造などの観測量に対する理論予言において、他にはない一般性と汎用性を併せ持つ手法であることを、具体的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
統合摂動論の一般性は、当初の予想を超えて広いことが明らかになり、様々な応用可能性が見つかってきた。本年度は初期ゆらぎの影響として、初期非ガウス性や初期ベクトル場の影響や、天体のバイアスを特徴付ける新しい統計指標などを、統合摂動論によって調べた。この結果、既存の方法で採用していた近似を取り外すことができるなど、その一般性と汎用性が大きく明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
統合摂動論によって予言されるパワースペクトルについて、最も一般的な形の解析式を導き、広く研究者に使えるようにわかりやすく論文にまとめる。これに基づいて、数値的な予言を行うための一般的なコードを作成し、これまでに調べられていない観測量についての具体的な予言を進めていく。大規模構造の高次スペクトルや、重力レンズ効果に関する観測量などにおけるバイアスの効果を詳細に調べる。また、数値シミュレーションとの比較などを通じて、統合摂動論に用いるためのバイアスのモデル化にも取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進展により、大きな数値計算をする前段階の研究を集中的に行ったため、当初数値計算を行うために予定していた小規模ワークステーションの導入を次年度に延期した。この予算を次年度の予算と合わせて用いることにより、もう少し大きな規模の計算システムとして統合環境を構築することとした。 数値解析を行うための計算システムを構築する。次年度使用額が生じたため、当初の計画よりも性能をアップしたシステムを構築することができる。とくに大きなディスク・システムにより、大量のデータを手元に用意して、数値計算の処理を高速かつ効率的に行う。計算機CPUのコア数を増やすことにより、計算時間を短縮することができる。また、大容量メモリにより、効率的な計算が手元で可能になる。既存のシステムと統合することにより、具体的な数値計算によって理論予言の計算効率を上げ、研究成果のさらなるレベルアップを目指す。
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