2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540328
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
石田 浩 日本大学, 文理学部, 教授 (60184537)
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / 表面ディラック状態 / 第一原理計算 / エムベディッドGreen関数法 / 強相関ヘテロ構造 |
Research Abstract |
本研究の目的はトポロジカル絶縁体の電子構造を理論計算により明らかにすることである。その際、トポロジカル絶縁体を特徴づける表面金属状態を正確に記述するために、表面系の計算では一般的なスラブ近似を用いずに、エムベッディッドGreen関数(EGF)法を用いて半無限系の電子構造を計算する。 EGF法による半無限系の電子構造計算は、(1)バルク結晶の電子構造計算、(2)複素エネルギーバンド構造(Bloch状態+エバネッセント状態)からエムベッディングポテンシャルを計算、(3)表面領域のハミルトニアンにエムベッディングポテンシャル項を付け加えて半無限系の電子構造を計算する、の3ステップから成る。平成24年度のステップ(1)、(2)に引き続いて、平成25年度はステップ(3)の計算プログラムにスピン軌道相互作用項を加える作業を完了した。 完成したEGF法のプログラムを用いて、Au、Ag、Bi、Sbの半無限(111)結晶表面の電子構造を計算し、表面局在バンドのRashba効果を調べた。これと平行して、トポロジカル絶縁体表面の電子構造計算を開始した。系としては、第2世代トポロジカル絶縁体の代表であるBi2Se3を計算した。この際、EGF計算プロプラムには、全エネルギー計算に基づく構造最適化機能が無いので、スラブ近似と3次元結晶の計算プログラムVASPを用いて、表面原子構造と表面局在状態のフェルミエネルギーの位置を決めた。このVASPの計算結果をEGF法計算の入力データに用いて、半無限Bi2Se3表面の電子構造を自己無無撞着に計算した。半無限系を扱うことによって、Bi2Se3の表面エッジ状態について、表面局在状態と共鳴状態の区別など、スラブ近似では得られない詳細な情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究実施計画に基づき、スピン軌道相互作用項を取り入れたエムベッディッドGreen関数計算(EGF)法による半無限結晶表面の電子構造計算プログラムを完成して、これを用いて、3次元トポロジカル絶縁体の代表であるBi2Se3半無限結晶表面の電子構造を計算することができたため。また、研究実施計画作成時には想定していなかったが、Au、Bi、Sb等の非磁性体表面の表面局在バンドのスピン分極(Rashba効果)を、同計算プログラムを用いて、詳細に調べることができたため。これらはトポロジカル絶縁体ではないが、強いスピン軌道相互作用によって表面局在状態がスピン分極し、スピントロニクスへの応用が期待できるという点がトポロジカル絶縁体と共通である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に引き続いて、エムベッディッドGreen関数計算(EGF)法に基づく計算プログラムを用いて、3次元トポロジカル絶縁体の半無限表面の電子構造を第一原理から計算する。この際、表面原子の緩和や、吸着原子・分子が表面局在エッジ状態に与える影響を調べたい。 強電子相関の効果に関しては、第一原理計算による解析は現状では困難である。申請者は以前に、ユーリッヒ研究センターのLiebsh 博士と共同で、強結合ハミルトニアンの範囲のEGF法を用いて、強相関半無限系の電子構造を動的平均場理論の範囲で計算する手法を開発した。Bernevig-Highes-Zhangモデルなど、スピン軌道相互作用の項を取り入れた強結合モデルハミルトニアンを用いて、強相関トポロジカル絶縁体の電子構造計算を実施したい。このため、平成26年夏期にもユーリッヒ研究センターに出張して、海外研究協力者のWortmann博士、Liebsch博士と本研究テーマに関する議論・打合せを行いたい。そのための旅費を申請する。物品費、その他の費用は、平成25年度同様に、FORTRANコンパイラー等ソフトウェアの購入及びメインテナンス費に当てる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の直接経費はノート型パソコンおよびドイツ・ユーリッヒ研究センターへの出張費用として用いた。少ない残額で文房具などの消耗品を購入するよりも、平成26年度分と合わせて使用する方がより有効であると考えたため。 平成26年度の交付額と合わせて旅費、物品費として使用する。
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Research Products
(1 results)