2013 Fiscal Year Research-status Report
一次元競合系におけるスピンネマチックラッティンジャー相のNMR・μSRによる探索
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24540350
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
後藤 貴行 上智大学, 理工学部, 教授 (90215492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 栄男 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (40327862)
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Keywords | スピンネマチック / 低次元量子スピン磁性体 / NMR |
Research Abstract |
1次元S = 1/2Heisenberg系Rb2Cu2Mo3O12は、2004年にHaseらによってferroの最近接交換相互作用(J1=-138 K)と、それに競合するantiferroの第二近接交換相互作用(J2 = +51 K)を持つ1次元競合系であると報告された。このようなferroとantiferroの交換相互作用が競合する系では、低磁場域でスピン密度波(SDW)相が、飽和磁場付近の高磁場域では多極子Tomonaga-Luttinger液体(TLL)が実現するとHikiharaらによって理論的に示されている。これは例えば、強磁性ボンド上に励起された二つの隣接スピンが、三重項(ディレクタ)のSz=0状態とみなせ、z軸に対して反転対称性を持つことから、ネマチック(液晶)のように振る舞うことに由来している。 通常のTLL液体では、Kをラッティンジャーパラメタとすると、スピン相関が、スピンの縦・横いずれの成分についてもべき指数で空間内を減衰する。一方、nematic TLLでは、横相関が断ち切られ、核スピン縦緩和率への寄与は、縦相関のみであり、Kの磁場依存性を反映して、核スピン緩和率には、磁場に依存した特徴的な温度依存性が現れると期待されている(Sato, PRB79, 060406R)。我々は、これを利用して、Rb/Cs2Cu2Mo3O12のNMR測定を行い、多極子TLLの検出を試みた。 実験は固相反応法で作製した粉末試料を用い、 5~12Tの磁場範囲でNMRスペクトルと縦緩和率の温度依存性を測定した。その結果、Cs、Rbいずれの試料においても1/T1の低温での温度依存性が、低磁場では減少、高磁場では発散傾向となり、Satoらの理論をサポートする結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の三つの理由によって、当初、予想していなかった成果が挙がったと考える。 まず、Satoらの理論を検証するT1の結果が得られ、国際会議(SCES2013)で発表出来たということ。 次に、4K以下の低温において、Cs系では磁気転移が存在することをNMRで初めて示すことが出来たことである。これは、比熱や帯磁率測定では報告されていない新しい結果である。 第三の理由は、Rb系においては1.5Kまでの低温でもマクロな磁気転移は観測されていないが、1/T1の発散のべき指数が6T程度を中点として逆放物線型を呈し、あたかもスピンギャップ磁性体の磁場誘起磁気転移と類似な結果となった。同型の結晶構造を持つ2つの物質で大きな差異があることは興味深く、特に、0磁場での基底状態を詳しく調べるために、最終年度にミュオン実験を行うことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
Rb系における磁場誘起磁気転移の可能性を詳しく調べるため、まず、ゼロ磁場での基底状態を検証することを考え、最終年度に、ミュオン実験も行うことになった。 また、超微細場の精密決定を行うために、粉末配向試料を作製してNMR測定を行い、T1の議論の精密化を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度にμSRの海外実験を複数回行うことになり、そのための費用ねん出が 必要になった。このため、装置(真空ポンプ)のメンテナンスをメンテナンスキットを購入して自前で行うことにより、次年度使用額を生じさせることになった。 μSRの海外実験を、のべ3回行うことになり、次年度使用額と、翌年度請求分とを合算して旅費の支出にあてる予定である。
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