2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540415
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
長島 和茂 明治大学, 理工学部, 准教授 (70339571)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 結晶成長 / 形態形成 / ストームグラス |
Research Abstract |
ストームグラスは、ガラス管中の5成分溶液中にカンファー結晶が析出したものであり、日々変化する結晶の見た目の特徴により天気予報にかつて利用されていた。他の結晶の結晶成長学的な研究においても、温度変動下の結晶挙動の理解は十分では無いため、本研究はこのような複雑な温度条件下における結晶挙動や形態形成の理解を目的にストームグラスの研究を行った。天気が当たるかどうかは目的外であることを断っておく。 本年度は、単純な系としてカンファー・エタノールの2成分系と、水を追加した3成分系での温度変動実験(20℃~30℃、10時間周期)を行い、5成分系での結果との対比により結晶の形状や析出した高さの変動の特徴を議論することを目的とした。溶液のカンファー組成は、最高温度でも結晶が完全に溶解(消滅)しない条件とした。 この結果、2成分の場合よりも3成分や5成分の方が、結晶の析出した高さは高く、結晶集団は見た目の判断ではふわりと積もっていた。結晶の高さ変動の時間変化の解析結果より、3、5成分では2成分に比べ結晶の高さが高いのみならず、高さ変動の振幅も大きいことが示された。また、2成分系では極めて微細な結晶が析出しているのに対して、3、5成分系では樹枝状に成長しているという形状の違いが示された。さらに、結晶の平衡温度と溶液濃度の関係を測定し、与えた温度変動条件における結晶の析出量を試算した。この結果、同じ温度で比較すると、2成分系よりも3、5成分系の方が析出量の試算値は小さく、空間充填率が小さいことが示された。 以上より、3、5成分系では樹枝状に成長することが充填率の小さいふわりとした見た目を生じることや、充填率が小さいために温度変動に敏感に結晶の高さが変動することが明らかとなった。5成分系における結晶の見た目の変化の大きさは、当時の人々が気象条件と関連付けてストームグラスを観察した一因と推論できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的では、成分数の少ない2成分溶液のみをサンプルとする予定でいたが、その予定を上回り、同じ実験条件下において3成分・5成分溶液中での実験も併せて行った。これにより、サンプルの成分数が析出した結晶の高さ変動に及ぼす影響を結晶粒の形や空間充填率の観点からの議論を実現しており、概ね研究は順調に進展している。研究実績の実施概要に記載の成果は、研究の1段階として重要であり、まとまった内容であるため、国際会議での発表を予定しており国際ジャーナルへの投稿も準備中である。 また、次年度の目的の一つに、結晶の浮遊や液液分離に関する議論を予定しているため、本予算により購入した密度比重計によりサンプル溶液の密度のカンファー濃度依存性の測定を終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
必要な設備備品は整ったため、計画に従って実験を遂行し、その成果を国内外の学会において発表するとともに、学術論文としても公表していく。 具体的には、温度変動下におけるストームグラス中の多結晶集団の成長・溶解過程における見た目の特徴(析出した高さや形)を理解するために、以下の実験を行う。 析出した結晶の高さの理解には、結晶形状やサイズの理解が重要である。特に、樹枝状に成長する場合と核形成した結晶が降り積もる場合では、結晶の高さに大きな違いを生じる。このため、結晶の核形成条件をサンプル組成(2成分、3成分、5成分)ごとに測定するとともに、ストームグラス中で起こる上方核形成(既に結晶が試験管内に発生している状況下の上方溶液中での核形成)の発生条件と原因を明らかにする。 さらには、樹枝状結晶が成長溶解する場合においても、主枝の太さや横枝の間隔が結晶の高さ変動の理解にとって重要な要素と考える。このため、結晶集団の解析のみならず、その中の単結晶の形やサイズの詳細な解析を実施する。また、樹枝状結晶のサイズの精密な測定のために、溶液中に単結晶を生成させて温度変動を与えた実験も当初の計画に追加して行う必要性があると考えている。以上により、結晶の高さ変動と空間充填率と結晶形状との関係性の解明を目指す。 さらには、ストームグラスの特徴として、結晶が溶液中に浮遊するケースがあげられる。このため、溶液特性(液液分離、比重)の測定を詳細に行うとともに、温度変動下における結晶浮遊の条件との比較検討から、ストームグラスの謎により深く迫る予定である。 以上の成果を基にして、従来、結晶成長学という研究分野全般においても十分な議論がなされていない温度変動下の結晶挙動の理解を深めるとともに、その成果をストームグラス以外の結晶の研究へと応用することを模索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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