2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540437
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
浦上 直人 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (50314795)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生体分子 / 自己組織化 / 分子認識 / モデル化 / 計算物理 |
Research Abstract |
本研究改題では、生体内におけるゲスト分子による秩序構造の形成と変化を解明するため、「ゲスト分子による秩序構造変化」、および「分子認識による秩序構造形成と変化」に関して研究を進めた。 「ゲスト分子による秩序構造変化」に関しては、高分子鎖による油中水滴型ドロップレットの形状変化を分子動力学シミュレーションを行うことで調べた。これまでの研究で、高分子鎖と界面活性剤の間の引力相互作用が、ドロップレットの形状変化を引き起こしていることを明らかにしているが、高分子鎖の濃度変化に対するドロップレットの形状変化の様子が、実験結果と一致しない矛盾点があった。そのため、本年度では、粒子間ポテンシャルを改良することで、球状、棒状、ひも状、枝分れ構造などの形状変化を観察した。これらの結果は、実験結果と非常に良く一致しており、問題点を解消することができた。今後は、様々な物理量を計算し、形状変化メカニズムの詳細を明らかにする予定である。 「分子認識による秩序構造形成・変化」に関しては、分子認識に影響を及ぼす要因の特定するため、これまで私が行って来たシミュレーションからポテンシャルを変更し、システムサイズを大きくした計で、シミュレーションを行った。長い鎖を10本、短い鎖を40本、およびシクロデキストリンを加えた混合系で試験的なシミュレーションを行った。その結果、シクロデキストリンは、長い高分子鎖と選択的に包接化合物を形成することが確認できた。この結果自体は、これまでと同様の結果であるが、システムサイズを大きくしたことにより、包接化合物の形成時における選択性がより詳細に調べられるようになった。今後は、さらに大きなシステムサイズでシミュレーションし、高分子鎖長以外の分子認識機構を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の大きな研究目標は、「ゲスト分子による秩序構造変化」に関しては、高分子鎖による油中水滴型ドロップレットの形状変化の要因の特定であり、実験結果を再現するシミュレーション結果が得られたため、当初の目的を達成したと言える。また、「分子認識による秩序構造形成と変化」に関しては、包接化合物形成時における分子認識機構の要因の特定であり、システムサイズを大きくすることで、サンプル数を増やすことができ、分子認識機構の要因を特定する道筋をつけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ゲスト分子による秩序構造変化 1-1.「高分子鎖による油中水滴型ドロップレットの形状変化―棒状以外への構造転移」に関する研究を引き続き行い、ドロップレットの形状変化メカニズムを明らかにする。平成24年度の研究では、添加する高分子鎖の増加にともない、ドロップレットは、球状、棒状、ネットワーク状へ変化する様子が、シミュレーションによって再現することができた。そのため、これらの形状が形状が形成される物理的メカニズムを明らかにし、高分子鎖のスイッチとしての機能を理解する。 1-2.「ゲスト分子によるベシクルの形状変化」に関するシミュレーションを開始する。この研究は、当初平成26年以降本格的に開始する予定であったが、試験的なシミュレーションを進めた結果、プログラムの改良等により、これまで私が行って来たシミュレーション系よりも大きな大規模計算を行う目途が立ったため、時期を早めて研究を進める。まずは、システムサイズを大きくしたことにより、どのようなベシクルの形状が再現するかを調べる予定である。 2. 分子認識による秩序構造形成・変化シミュレーション 「修飾シクロデキストリンのモデル構築」に関しても、研究を引き続き行い、分子認識機構の要因の特定を行う。その後、修飾CDの分子認識による秩序構造形成を調べるため、平成24年度の研究で得られた結果をもとに、修飾CDモデルを構築する。修飾CDに関する包接化合物形成では、自己包接と相互包接による包接化合物形成が知られており、まずは自己包接、相互包接をシミュレーションで再現することを目指す。そして、構築した修飾CDモデルの妥当性を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では、情報収集を目的として学会への参加を予定していたが、別の学会で目的とする情報が得られたため、その学会への参加を取りやめ、次年度の研究成果発表で使用することとした。また、データ整理として謝金を使用する予定であったが、予想よりデータ量が多くなく、次年度にデータ整理を行うこととした。そのため、次年度使用額が生じた。 次年度では、平成24年度で得られた研究成果に関して、積極的に学会発表を行う予定である。そのため、旅費・その他の費用として、学会発表にともなう旅費、学会参加費に関して計50万円程度見込んでいる。この予算には、学会発表に関しては、実際に課題研究を進めてもらっている大学院生2名の費用も含んでいる。物品費に関しては、研究成果発表を行うため、ノートパソコンを購入する予定である。謝金に関しては、購入した計算機のメンテナンス、およびこれまで得られたシミュレーションデータの整理のため、研究費を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)