2012 Fiscal Year Research-status Report
近年頻発する局地的豪雪の実態解明と準リアルタイム解析システムの構築
Project/Area Number |
24540470
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
本田 明治 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20371742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河島 克久 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 准教授 (40377205)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 豪雪 / 大雪 / 気象 / 寒気 / 降雪 / 日本海 / 気団変質 / 風向風速計 |
Research Abstract |
2005/06年の豪雪以降、日本各地はしばしば局地的な大雪に見舞われている。本研究では、このような近年の冬の降雪特性について、ユーラシア大陸での寒気の形成、日本海上で寒気の変質と雪雲の形成及び組織化、局地的な豪雪をもたらすメカニズムを明らかにするため2つの課題を設定した。課題1「近年の局地的豪雪の実態と、日本海上寒気変質過程の解明」では、ここ数年の大雪事例に着目しその実態と降雪特性をの理解を通じて、豪雪発生のメカニズムを解明する。また、課題2「豪雪事例の準リアルタイム解析システムの構築と試験運用」では、多機関が提供する気象関連データを準リアルタイム収集、データベース化して解析するデータ統合処理システムを構築する。 課題1について、2005/06年~12/13年(今冬)まで8冬について、気象庁合成レーダーデータ(10分値)及び再解析データJRA-25(6時間値)に基づいて、気象特性と降雪(降水)分布特性の関係の詳細を調べると、上空の寒気に加え、風系と海岸線の方向の関係が重要であることがわかってきた。また佐渡島など離島の風下では降雪が著しく減少する事実を定量的に示した。 課題2では、新潟市との協議が終了し、新潟市気象観測網データ(風、降水)のオンラインデータ収集・解析システムを6月に構築、現在準リアルタイムで初期解析を実施し、サイト上に公開するシステムを9月より運用している。また平成23年度末の新潟大学に導入された気象レーダーに合わせて、地上気象観測網を拡充する目的で風向風速計の展開を進めている。24年度末現在、1箇所の設置が完了しており、準リアルタイムでデータ収集を開始している。 研究室の計算機環境については、既存サーバはデータ収集処理解析専用とし、別途数値実験用にカスタマイズした専用PCを購入し、UNIX環境を構築、数値モデルの実 装は完了し、現在は予備実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1について、近年の降雪分布特性については当初2009/10年以降の4冬の解析を予定していたが、2005/06年以降の4冬を含め8冬季分実施できたため、より詳細な降雪分布特性を明らかにすることができた。24年度は主に降雪分布特性と大気循環場の関係を詳細に調べたため、雪雲の形態、海洋の状況と海上の寒気変質過程と降雪分布の関係については、定性的な解析しか進められず、25年度以降に持ち越す形となっている。 課題2でについてはは、新潟市との協議は予定より3ヶ月ほど早く進み、6月にオンラインデータ収集、9月にはデータ処理解析システムの運用を開始できた。ただし新潟県については別の枠組でオンラインデータ収集システムの構築が進められており、25年度以降に相互に連携する体制とする予定である。新潟大学に導入された気象レーダーに合わせた風向風速計の2箇所増設に関しては、24年度は1箇所のみとなったが、25年度早々にはもう1箇所設置できる見込みである。レーダー観測による降雨強度・3成分風向風速の鉛直分布、地上風向風速データのオンラインデータ処理システムは当初24年度内に完成見込みであったが、少し遅れて25年度初頭には運用開始の見込みである。 研究室の計算機環境については数値実験用PCの導入によって、既存サーバの負担が軽減された。数値モデルの実装については当初の気象庁のメソ気象モデルに加え、米国NOAAのメソ気象モデルの実装も進めており、多様な数値実験が可能な体制となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度初頭には必要な研究基盤は整うことになるので、より整備を進めつつ解析をすすめていく。2012/13年冬の大雪事例も含め、統合的に局地的豪雪の実態と日本海上寒気変質過程を明らかにし、豪雪の外的要因を突きとめていく。そのために課題1では、特に気象庁及び米国NOAAの非静力学領域モデル用いて大雪事例再現実験を実施、更に海面水温分布の可変、非断熱過程のオンオフなどによる感度実験を実施し、各事例に降雪動態を決定する因子を特定していく。更に当初予定通りに、半球スケールの大気循環場変動、ユーラシア大陸上の寒気蓄積の動向、地表面環境、日本海の海況などを監視することによって、日本における降雪動態の変化を定量的に予測するシステムを目指す。 課題2に関しては、オンラインデータ収集機能を強化した準リアルタイム収集システム、更にデータベース化して解析するデータ統合処理システムの構築を急ぐす。また当システムに、海面水温データ及び気象解析値(気象コンソーシアム提供)を同時に取り込み、課題1の数値実験をスムーズに実施できる環境を25年中に整備し、大雪事例発現時に準リアルタイムで事例解析が可能なシステムを25/26年冬に運用できるようにする。更なる展開として、38豪雪・56豪雪など過去の豪雪事例の解析を通じて、特徴的な降雪事例の詳細を明らかにし、局地的豪雪発生の予測精度の向上に寄与する「寒気」の指標化、寒気変質過程の定量化、気団変質に伴う「降雪総量」など定量的指標を導入を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(B-A)は約150万円となっているが、このうち約75万円は24年度に設置した1機めの風向風速計取得データの無線通信システム、気象状況監視カメラ、電源工事で執行済、約50万円は25年度初頭設置の2機めの風向風速計の購入で執行済である。2月~3月にかけての請求になったため年度内に支出が完了しなかったものである。従って24年度分の残額は約25万円、25年度分の配分額は80万円なので、計約105万円が25年度予算となる。 25年度の計画として、2機めの風向風速計取得データの無線通信システム約40万円と設置器具類に約10万円を見込んでいる。また数値実験用PCの性能向上・処理容量増強のための増設メモリ及び増設デスクに約10万円、成果発表の旅費約20万円、論文投稿料に約20万円、その他経費に約5万円を見込んでいる。
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Research Products
(7 results)