2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540514
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山下 茂 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 准教授 (30260665)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マグマ / 流体 / 高温高圧実験 |
Research Abstract |
初年度は一連の予備実験を行い、実験技術上の問題点の洗い出しを行った。まず、外熱式ダイヤモンドアンビルセル高温高圧発生装置を用いて、玄武岩マグマアナログ物質(二ケイ酸ナトリウム)の化学種間平衡の高温高圧その場分光観察を行った。本実験への展開を考慮して余計な圧力媒体を使わず、セル試料室に封入したマグマ物質が加熱に伴うサーマルストレスで所要の圧力を発生させられるかを検証した(=マグマ物質が試料と圧力媒体を兼ねる、圧力は試料に埋め込んだ炭素13ダイヤモンド分光圧力マーカーで測定)。その結果、800℃、2GPaまでの条件では、高温高圧その場分光観察を問題なく行えることが確かめられた。他方、分光スペクトルのS/N向上が必要であること、セル筐体から外部への熱輻射を効果的に取り除く必要があることが問題点として認識された。前者の問題は光の入射・射出方向の試料厚みが分光測定の空間分解能に対して十分に大きくないことに起因しており、試料を封入するガスケットの厚みを2倍程度に増やす工夫を行った。後者は分光装置の顕微光学系にダメージを与え、1000℃以上の高温発生をねらう本実験で深刻な問題になることが懸念された。この問題には、セル筐体をヒートシンク+水冷で冷却する工夫をして対応した。これら問題点の洗い出しを行う一方で、本実験に用いる出発試料の探索とキャラクタリゼーションを行った。具体的には、従来の急冷回収型高温高圧発生装置を用い、新燃岳2011年噴火の軽石をもたらしたマグマの相平衡関係と化学種間平衡をマグマ溜まり相当の条件(最高1000℃、150MPa、酸化還元状態制御)で決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の主要な内容であった予備実験、実験技術上の問題点の洗い出し、のそれら問題点への対応はひととおり完了し、この研究を本実験へ展開させる準備は整った。他方、研究代表者のエフォート割当の見積もりが甘く、実際にモアッサナイトアンビルセル装置を用いた実験に進むことができなかったことが反省される。ただし、十分の余裕をみて当初の研究計画を策定してあったので、研究計画の大筋を変更する必要は感じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に沿って本実験へ展開させる。平成25年度では、外熱式ダイヤモンドアンビルセル装置を改造してモアッサナイトアンビルセル装置を製作し安定に稼働させる。このとき、初年度で問題点として洗い出された試料厚み不足、セル筐体から外部への熱輻射への対策に留意する。装置が安定に稼働したら、純水を試料に用いる予備実験を行い、特に1000℃以上の高温領域でモアッサナイトアンビルを安定化させる酸化還元状態制御(試料室に配置した固体バッファーによる)の有効性を検証する。同時に、これまで800℃の温度条件までしか較正が行われていなかった炭素13ダイヤモンド分光圧力マーカーについて、純水のアイソコア圧力をリファレンスとして較正範囲を1000℃以上まで拡張する。平成26年度には、平成25年度の予備実験で試料として用いた純水を天然マグマ物質に置き換えて本実験を行う。同じ組成の天然マグマ物質について予備実験(従来型急冷回収法)であらかじめ決めておいた相平衡・化学種間平衡を参照しながら本実験を行い、従来型急冷回収法に対する高温高圧その場分光観察の優位性を評価する(急冷凍結できない物性を洗い出す)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費のうち物品費は実験関係の消耗品、具体的にはモアッサナイトアンビル装置のセルパーツ消耗品、アンビル、ガスケット材料、還元雰囲気ガスの購入に使用する。また、分光装置の顕微光学系がダメージを受ける可能性があるので、その場合に備えて顕微光学系パーツ(超長作動対物レンズ、カセングレイン集光ミラー)の予備品も購入する。上の項目で記したように、初年度はモアッサナイトアンビルセル装置を用いた実験に進むことができなかった。これに伴い実験関係消耗品の一部の購入を次年度に繰り延べている。
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