2013 Fiscal Year Research-status Report
球面収差補正電顕を用いたナノ鉱物の原子状態精密解析と核種移行挙動の解明
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24540516
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宇都宮 聡 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40452792)
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Keywords | ナノ粒子 / 生体鉱物化 |
Research Abstract |
本年度は全希土類(REE)存在下における微生由来ナノ粒子の生成機構および元素分配を含めた微生物由来ナノ粒子の結晶化学的性質を理解することを目的とした。 酵母2.0 g/Lに対して全REE3+含有溶液(総濃度85 μM, REE=La-Lu、初期pH 3~5)の収着実験を室温で行った。溶液分析は誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)、固相分析は走査型電子顕微鏡(SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて行った。さらに無機的な合成した希土類リン酸塩の鉱物相および結晶形態の比較を行った。また生物細胞表面の模擬物質(CMC, CP)をテンプレートとした無機的な生体鉱物化モデル実験を行い官能基が粒子生成に与える影響を評価した。 全pH領域において酵母細胞表面に全REE含有リン酸塩が生成し、pH 3で粒径100 nm針状のrhabdophane、pH 4-5では粒径数10 nmの球状の非晶質ナノ粒子が同定された。無機的に合成されたREEリン酸塩は球状のrhabdophane構造を保持し、微生物由来ナノ粒子の結晶性および結晶形態は無機的に生成したものとは異なることが分かった。一般的に微生物細胞表面に存在するリン酸ジエステル基はpKa=3.4と低いことから[3]、生成ナノ粒子の結晶性のpH依存性は細胞表面に静電吸着したREE3+が核となり結晶成長することに起因すると考えられる。官能基含有模擬物質を用いた実験においても非晶質リン酸塩ナノ粒子の不均質核生成が確認され、吸着によって結晶化が阻害されることが分かった。pH 4, 5ではプロトン解離した官能基数の増加により結晶生成サイトが増加し、粒径の小さいナノ粒子がpH3の系よりも多く析出したと考えられる。以上より、生体鉱物化反応において微生物細胞表面は、反応場としての役割だけでなく生成粒子の結晶性および粒径を支配していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微生物によるナノ結晶化作用を解明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は原子レベル電子顕微鏡の解像度を上げて単原子マッピングを目指す。平行して実験室レベルの吸着、脱着反応の解明も行い、原子スケールでの反応機構解明を開拓する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
端数の発生があり、それを無理に使わなかったため。 次年度予算に組み込んで効率的に利用する。
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